見出し画像

東京工業大学 山田光太郎教授~現代数学レクチャーシリーズインタビュー~

現代数学レクチャーシリーズについて

現代数学は社会の至るところに応用され、私たちの生活になくてはならないものになっています。最先端の科学技術やAIを扱う専門家の人々から、数学を学び直したいという人に至るまで、幅広い人たちが、高度な数学を学ぶ機会を必要としています。
株式会社すうがくぶんかは、東京工業大学理学院のご協力をえて、2017年より現代数学を学ぶ機会を多様な形で発信しています。
この度、東京工業大学理学院 山田光太郎先生現代数学レクチャーシリーズについてインタビューをさせていただきました。

東京工業大学理学院 山田光太郎先生 インタビュー

2023.03.14

すうがくぶんか瀬下:本日は現代数学レクチャーシリーズについてお話いただけるということで、お時間をいただきありがとうございます。

山田先生:ありがとうございます。

東京工業大学 山田光太郎先生


すうがくぶんか瀬下:現代数学レクチャーシリーズのインタビューを開始させていただきます。現代数学レクチャーシリーズは2019年に山田先生が理学院長をされている時に始まりましたが、なぜ始まったか、開催に至るまでの経緯をお話しいただければと思います。

山田先生:加藤文元先生* からご提案いただきました。アウトリーチで何かやらなければならないなと私自身も考えていたところ、高校生にコンタクトするのは非常にやりやすいのですが、最近ますます増えている数学が好きだ、あるいは数学を勉強したいという社会人・大人の方にリーチするのは難しくて、そういう機会があるといいなということもありまして、社会に対して数学がどう発言できるかということの一つの試みとして始めてみようというつもりで、加藤先生のご提案にのりました。こういうことをやるべきだ、やるべきでないという議論もあったんですけれども、できる人がやる、それをあまり否定しないでもらいたいなというような文化を作ろうと思ってはじ|めさせていただきました。

*加藤文元先生:2019年当時、東京工業大学理学院数学系教授。2023年現在、東京工業大学名誉教授。学校法人角川ドワンゴ学園理事。株式会社SCIENTA・NOVA代表取締役。

すうがくぶんか内場:社会人に講義するとか普及するということは、この現代数学レクチャーシリーズより前にはあったんでしょうか。

山田先生:私が着任して12年くらいなんだけど、その間はあまり大々的にはやっていなかったような気がします。山田は東工大に着任する2009年まで10年ほど九州大学にいましたが、そこで毎年現代数学の公開講座をやっていて、常連さんが何人もそれなりに年配の人が高校生から70代の方まで来られていて、とても需要はあるんだな、福岡市でそれくらい需要があるんだから東京ではもっとあるだろうと感じていたんですけど、なかなか言い出せないなと思ってきた時にすうがくぶんかさんからお話がありました。

すうがくぶんか内場:なるほどありがとうございます。

すうがくぶんか瀬下:初回の現代数学レクチャーシリーズの話ですが

山田先生:2019年ですね。

すうがくぶんか瀬下:2019年の9月は、コロナが問題になる前だと思うので、会場としてレクチャーシアターを借りて開催しましたが、かなり多くの方に来ていただきました。

株式会社すうがくぶんか 代表取締役 瀬下大輔

山田先生:200人くらいでしたっけ

すうがくぶんか瀬下:そうですね。予約も一瞬で埋まっちゃうような感じでしたが、その様子をご覧になられて、山田先生の方で盛り上がっていたと思ったことはありますか。

山田先生:それくらい集まるし盛り上がるだろうなとは思っていました。数学ではなくて、例えば物理学とか一般向けのイベントというのをやったことがありますが、それなりに多くの方が、それも高校生・大学生でもないような多くの方が来られて興味深く聞いていただいたので、多分そうなるだろうなと思っていましたが、こちらの期待よりもさらに盛り上がったのかなと思います。その時講師は4人の先生方が非常に準備された講義をしてくださって、皆さん楽しめたんじゃないかなと思っております。

すうがくぶんか内場:そうですね、最後の質問の時も加藤先生が時間ギリギリまで話し合っている状況もあったので、良かったなと思います。

山田先生:ちょっと反省というのは、質問の時間をもう少し取れるように最初からスケジューリングしていた方がいいのかなと。あまり取りすぎると場がもたなくなっちゃうこともあるけれど、ヒートアップするには時間がかかるので。そこにちょっと反省があります。

すうがくぶんか内場:学内で、実際に現代数学レクチャーシリーズで200名くらい集まった話から、現代数学レクチャーシリーズを開催する意義について何か変化はありましたか。

株式会社すうがくぶんか 取締役社長 内場崇之

山田先生:一生懸命宣伝しているんだけど、なかなかまだ認知されていないところがあるかもしれません。

すうがくぶんか内場:そうなんですね。認知するのにこうした方がいいなど何かありますか。

山田先生:また山田が派手なことやってるな、みたいに思われないようにしないといけないんだけど

すうがくぶんか内場:難しいところですね…

山田先生:リカレント教育のような形で大事なんだけれども、社会人の人たちに楽しんでもらって、そこから先をどうするかっていうのはあまりモデルがないような気がするんですよね。我々はそういう入り口を提供するような形で現代数学レクチャーシリーズをやっていければなと思っています。

すうがくぶんか内場:そうですね。

すうがくぶんか瀬下:その後オンラインという形でやらせていただいたときもかなり反響は大きかったと思うので、かなり潜在的な需要は喚起できたんじゃないかと思います。

すうがくぶんか内場:山田先生の授業についてお伺いしたいのですが、大学の数学は、結構抽象論だなと思って、2年間くらいは少なくとも抽象論が続いていたのですが、山田先生の授業を聞くとかなり具体的なんですよね。

すうがくぶんか瀬下:山田先生にやっていただいた現代数学レクチャーの講義は

山田先生:お下品なやつですね。

すうがくぶんか瀬下:ものすごい計算量でしたね。

山田先生:今度はもう少し減らします。

すうがくぶんか瀬下:すごく楽しかったですね、ああいう具体例の計算をあまり数学の人たちはしないので。

山田先生:今度は振り子の振幅を大きくするとどれくらい周期が伸びるかとか、そういうのから擬球面に持っていくって話どうですか。

すうがくぶんか内場:ぜひやりましょう!

すうがくぶんか瀬下:インタビューから逸れますが、前回の山田先生の現代数学レクチャーシリーズの講義は録画に残ってないんですよ。聞きたい人がいると思います。

山田先生:あれの類似の話はいくつかネタがあるので、言ってくだされば。

すうがくぶんか瀬下:ありがとうございます。今後、現代数学レクチャーシリーズを続けていくに際して、社会に対してのメッセージやどういうことを発信していきたいかなど開催していく意義をどう思っていらっしゃるか、山田先生よりメッセージをいただければと思います。

山田先生:数学は今役に立つ、本当に役に立つんですよね。役に立つし、勉強しなきゃいけない、機械学習・AIが発達してきて、人類共通に線形代数くらい知らないといけない時代になっているわけじゃないですか。そういうところはさておき、じゃないんですけど、そこの入り口として、もっと身近に感じて楽しんでもらえるのがいいのかなと思っています。私たちはそういう入り口が提供できたら、あとその頑張って勉強する部分は、すうがくぶんかさんにお願いして(笑)そういう看板みたいなものを、提供できたらいいなと思っています。数学最先端と、数学を使う部分ってまだずいぶん離れているけど、最先端にきている人たちを見てもらって、こうやって数学ができてくるんだなというのを眺めてもらう。野球を見に行くのと同じで、数学も見に来てもらえたらいいなと思っています。

すうがくぶんか瀬下:ありがとうございます。

山田先生:お子さんが大学受験をして数学科に行きたい、あるいは理学部に行きたい。というときにそんな役に立たない、つぶしが効かないのはやめろよって言わない親御さんがもうちょっと増えてくれるといいなと。数学食えるよ、物理も食えるよとね。

すうがくぶんか内場:僕の同級生で理学部の物理に行った人が何人かいて、物理の先生になった人もいますけどクオンツになったりして、物理で培った数学の力を活かしているという人がいます。

山田先生:色々なところで活躍できると思いますよ。数学の先生しかなれないんじゃないのとかという風なネガティブな言い方をしないでほしいなと思っていて、余計な話をすると、どうせ大学で4年間勉強したことなんてさ、一生役に立つわけないじゃない。10年で賞味期限切れするわけよ。だけどそこで自分が楽しい大好きだなと思ったことを一生懸命やったら、人生の糧になるんだからと思っている。そういうことをやりなさいよ、飛び込んでいいよと言ってくれるような親御さんが増えてほしいなと思っています。

すうがくぶんか瀬下:内場先生も開催していく意義や、やっていきたいことをお願いします。

すうがくぶんか内場:例えば弊社で数学を真面目に勉強しているような社会人の方々も、ただ勉強しているだけだと苦しい時が多いと思うんですね。数学って仕事しながら勉強するとなってくるとなかなか継続するのも大変だし、難しいところも多いと思うんです。そんな時に、現代数学レクチャーシリーズでプロの方々がやっているような数学、ないしはその姿を見てもらうことで、モチベーションの維持に繋がったり、または今は数学が好きでない人たちにとっても、プロの数学の人たちがやっているのを見て頂きたいです。なんでもいいと思います、かっこいいと思うのでもいいと思うし、こういうことを分かってみたいと思う希望でもいいと思うんですけれども、そこから裾野が広がっていくと、とてもこういうイベントをやっている意義があるなと思うので、そういう思いでこのイベントを続けていきたいと思います。実際そういうところから先ほど山田先生がおっしゃっていたように、親御さんの中でも数学や物理を子どもがやり続けるのって別に悪いことじゃないかなって思ってくれるような方が増えると思って、そういうところを目指してこの現代数学レクチャーシリーズを続けていきたいと思います。

すうがくぶんか瀬下:最後ですが、受講生の人やこれから現代数学レクチャーシリーズを受けてくださる人にメッセージをいただいてもよろしいでしょうか。

山田先生:エンジョイ!

すうがくぶんか瀬下:内場先生もメッセージをお願いします。

すうがくぶんか内場:一流の数学者の数学の講義を聞ける機会はなかなかないことなので、ぜひ皆さん遠慮なく、自分じゃわからないかなって思う方々が実際多いと思うし、僕は今そう感じているんですけど、わからなくてもいいと思うんですよね、まず乗っかってみる。実は最初に山田先生の授業を見に行くときだいぶ緊張しました。わかるかな大丈夫かなと思って行ったんですけど、でも実際行ってみるとめちゃくちゃ楽しかったんですね。なので皆さんもぜひわかるわからないより、まずは挑戦してみてもらえると僕は嬉しいです。

山田先生:ぜひ内場社長と一緒に楽しんでいただくと。

すうがくぶんか内場:はい、僕と一緒に楽しんでもらえると

すうがくぶんか瀬下:あと一点だけ。今年から無料になりますが、それは今後も無料ということですか。

すうがくぶんか内場:はい、そうですね。

すうがくぶんか瀬下:より広く一般の方に向けて。

すうがくぶんか内場:はい、どうしても精神的なハードルというのが高い、という部分があると思うので、ぜひ無料なんだから行ってみるかというそういう気軽な気持ちで参加してもらえることを望んでいます。

すうがくぶんか瀬下:先生方、ありがとうございました。

【お知らせ】

2023年は「現代数学レクチャーシリーズ 2023 9月 双曲幾何祭り」と題して9月10日(日)に開催します。
詳細はこちらからご確認いただけます。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?