【おしらせ】月刊『北方ジャーナル』2023年5月号発売中。
〇2009年に始まったスガの連載「よいどれブンガク夜話」第160回は
〈島木健作「昭和二十年日記」2――自分はやめぬのである〉であります。
札幌出身であり、昭和十年代の人気作家であった島木健作が病いを養いながら、最晩年となる昭和二十(1945)年、頻頻と空襲警報の鳴る戦時下の日々に戦局を気にかけつつ、読書と執筆に明け暮れる日々を綴っていた日記について書いております。
四月七日の日記には《ソ連が日ソ中立条約を継続する意志のないことを、モロトフより佐藤大使を通じて告げて来た》とあり、《これにより明年四月をもって条約は切れるわけである。今すぐこれによってどうなるということはあるまいが、緊張を強いられざるをえない》と述べてるんですけど、島木さん、「どうなるということ」がまもなく大ありなんですよ、と教えてあげたくなりますね。
また、「自分はやめぬのである」というのは、同日七日の日記に、この昭和20年の『新潮』『文藝春秋』などの二月号が出てはいるのに届いていないことから、《やむにやまれぬものは書きつづけるという時代である。しかし少し前の時代の人間にとってものを書く、志をのべるということはみな、そういうことなのであった。戦争のもたらした最大の功績の一つはジャーナリズムの崩壊ということであるかも知れない。ジャーナリズムが崩壊して作家であることをやめるものはやめよ。自分はやめぬのである》と記している、この戦時下でも執筆をやめぬぞとの自己確認の「自分はやめぬのである」なのであります。
〇同じく『北方ジャーナル』2023年5月号には同誌に長期連載しております蘇我すが子さんのエッセイ「古本屋女房の❝古本的日常❞」の第112回目「美味しいだろうけど物騒だ」が掲載されております。
グルメが嵩じて自ら厨房に立つようになり料理の才能に目覚め、官憲からの逃亡中に人気料理店のシェフとして評判となっていたり、自分の料理の腕とイタリアの味を自慢したい気持ちがおさえられなかったのか、覆面ユーチューバーとして料理動画を上げてしまい、画面に移り込んだタトゥーで正体がばれてしまって……といったマフィアの方々などのお話です。
〇『北方ジャーナル』5月号は道内の大手書店、セイコーマートに置かれています。Amazonでも購入できます。
表紙絵は鈴木翁二氏です。