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もうちょっと遊びたい

じいじ丸のパソコンには、柊ちゃんの残り香みたいなものが残っている。一緒にパソコンでアニアの恐竜を調べていると、すぐに指を広げてピンチアウトしようとするが、旧式なのでそんな動きには反応しない。そんなわけで、パソコンをスリープすると真っ暗な画面に、指の跡がたくさん残っている。それは、夏休みに3日間、遊びにきた柊ちゃんの残したものだ。

そのなかの2日目の話。柊ちゃんと、セミ取りに行って、公園で遊んだ。じいじ丸がセミを一匹捕まえてみせると、怖いらしく。「もう帰ろう」とやる気がしぼんでいったみたい。それから公園で、すべり台で遊んでいる。ターザンロープみたいな遊具に誘うと「あれはお兄ちゃん用だよ」と。以前は、チャレンジしていたんだけど。なにかと、最近はひびりがちな柊ちゃん。行く末が少し心配になる。でも、成長しているからかもしれない。いい方に考えよう。それから、アイスクリームとたまごパンを食べて、お家に帰った。

「お昼寝の時間だよー」と柊ちゃんに言うと「もうちょっと遊びたい」といつものセリフ。しょうがないなので、椅子を組み合わせた滑り台ごっこを続ける。そして、「あの長い針が10のところにいくまでね」と言うと、元気よく「わかった‼︎」と返ってくる。そして、その時間が過ぎると「パウパトロールをひとつ観てからー」。じいじ丸は甘々なので「ひとつのお話だけね」と言うと、またまた元気が良くて「わかった‼︎」と返ってくる。

じいじ丸は一緒に観ていたが、すぐにうとうとする。そして、目が覚めると、同じ話のはじまりになっている。「柊、ひとつのお話だけでしょ」と言うと、先送りして話がわからなくなって戻っているらしい。なんとなく悪いことはわかっているらしく、そのお話が終わるとパソコンをパタンと閉めてベッドにやってきた。

「じいじ、絵本を読んでほしい」と甘いささやき。これは最終手段だ。じいじ丸はゲームより、動画より、絵本の読み聞かせが教育上よいと信じているのを、うすうす知っていて「絵本なら読んでくれると」と思っているのだろう。でも、そのときはじいじ丸も眠くて(今年の夏はよく眠たくなる)、おしりたんていのお話するからと言って、ふたりして横になる。すぐにじいじ丸はうとうとしてしまう。「じいじ、止まっているよー」と柊ちゃんの指摘、その指摘を何度か受けているうちに、ふたりして眠ってしまう。

その日の夜には、花火。柊ちゃんは「美しい」と言って遠くから見ている。火が怖いらしい。「じいじ丸と一緒に持てばいいよ」と言うと、じいじ丸の腕をそっと触る。それから、手で持てるようになり、最後は両手持ちして、回していた。横にいるじいじ丸が、とても危険な状態だった。両手で花火を持てたのはとてもうれしかったみたい。「ねえねえ、じいじ、両手で持ててすごい?」と何度も聞いていたし。

せっかくの夏休みに、海水浴にも、プールにも、動物園にも行けなかったけど、柊ちゃんとしては満足だったみたいなので、良かったかな。

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