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じいじ、牢屋に入れられるよ。

夕方、柊ちゃんを保育園にお迎えに行って、大井町に到着してからの帰り道だった。ふたりで天気予報の話をしていて、僕が調子に乗って「たつまきの予報もあるよね」と聞いたら、柊ちゃんの天気予報は晴れと曇りと雨しかないらしく「たつまきとか言ったら、牢屋に入れられるよ」と言われた。たつまきが気に入らない理由はわからないし、僕には理解しようのない世界なので、黙っていた。

もう、50年ほど前の話。僕の小学生の1年か2年か3年のときに、社会科見学で警察署の留置場を見て、コンクリートの部屋ではじっこにトイレがぽつんとあるのを見て、悪いことはしないようにと思った。とても怖かったんだ。どうして、子どもにあんな場所を見せたのだろう。嫌な大人たちだ。話が横道に外れた。2021年6月24日に戻そう。

それから1日、牢屋の話が出てくることになる。「じいじ、牢屋に入ったら柊くんら会えないんだよ。ママにもガクちゃんにもにも会えないんだよ」と攻めてくる。「じいじ、それにハンバーグカレーも食べられないよ」。

その日の夕食は、新木場駅のスタンディングのカレーショップ。柊ちゃんとしては、大人向けのハンバーグカレーをほぼほぼひとりで食べたのが自慢で、お腹を見せて何度も、どれくらいのお腹と聞いてくる。「小3のお兄さんくらいのお腹だね」と言うと、うれしそうだ。ハンバーグカレーを食べた後に、柊ちゃんの依頼により、ポスターのカレーの名前をすべて読み上げる。気に入ったみたいだ。でもロースカツカレーとカツカレーの違いがわからないらしく、そこは何度か聞かれた。

じいじ邸に到着して、最近いちばんのお気に入りの恐竜キングの動画を見てて、エンディングになったら、テレビのディスプレイのなかの原始人と一緒に踊り始めた。動きが大きくて、激しくて、途中で「この踊り、疲れんだよねー」とぼやいていた。踊りが終わったら、僕のとこにやってくる。柊ちゃんから汗の匂い。夏の匂いがする。

ふたりでお風呂に入って、アニアの水に浮くシリーズのメガロドンやシャチ、ジンベイザメと遊んだ。シャワーの水で、湯船のなかを泳がせる遊び。それだけで、楽しくなるから子どもっていいな。お風呂を出て、バスタオルで体を拭いていたら、突然「じいじ、牢屋にはお風呂がないんだからね」と。まだ、牢屋の話は続いていたんだとびっくりだった。



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