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美人はいつだってマイルールで生きている

それは、ユウカが神戸に行ったときに起こった。

「時間があるなら観光でもしてきたら?」とアキに言われて、神戸の三宮から中華街をそぞろ歩いているとき、若い男に声をかけられた。

「お姉さん、ごめんなさい。中華街ってどう行けばいいんですか?」
「え?すぐそこじゃないんですか。ホラ、看板も出てるし。私も観光なんで、そんなに詳しくないんですけど」

「お姉さん、観光なんだ。どこから来たの?」

「あ、あの東京ですけど…」

「やっぱり、どこかあか抜けてると思った!」

その後も若い男はいろいろと話しかけてきて、それがナンパであることに気づくまでそれほど時間はかからなかった。

夜に芦屋に戻ったあと、ユウカはアキにそのことを話した。

「へぇ、ユウカやるじゃん。で、その後、どうしたの?」

「いや、そんなナンパについていくなんてことしませんよ!」

「そう、残念ね。あんまりタイプじゃなかったの?」

アキは紅茶を飲みながら、ユウカに尋ねた。ユウカはアキの意外な問いかけに少し戸惑った。

「見た目は悪くなかったですけど、そもそも道端でナンパするような男なんてどうなんですか?」

「出会いの場所なんてどうでもいいんじゃない?」

「いや、私が言ってるのはそういうことじゃなくて……」

「……ふーん」

ユウカは大きく同意されると思って話したのに、いまいちな反応しか返ってこないことに不安を感じた。東京にいた頃のユウカなら、相手の反応なんて気にもしなかったが、ここは自分が知ってる場所じゃない。しかも目の前にいるのは、自分と全然違う環境で生きてきたアキだ。

「あれ、変ですか?」

「……ふぅ。そうね。出会いの場所がどうでもいい、なんて思うのは、私が水商売のお店を長いことやってたからかもね。お店で出会う男女もいるわけだしね」

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