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「エープリルフールってあるでしょ」 「四月馬鹿、嘘ついてイイ日ね」 ファストフードの店内で向かい合う学生カップル。男子が自慢気に話しかける。 「世界的に浸透しててさ、各地で様々な嘘が飛び交うんだよね」 「へぇ〜そうなんだ」 女の子はズズズとドリンク飲み干して、紙のカップを揺する。氷の乾いた音がする。 「なのにさ、明確な由来とか起源とかが判っていないらしいんだ…」 「そうなの?え、だってバレンタインデーもクリスマスも、はじまりが判っているじゃない?」 「もちろん、諸説あるんだ
「それほど好きじゃないかな…」 「それほど?」 「いや、嫌いじゃないけど…」 曖昧な人の会話。曖昧な返答。 人の生活は0か100かで割り切れるものではないが、かなりの確率でフワッとした曖昧な言葉で出来ている。 「前は好きだと言ったじゃないか!」 公園でカップルがケンカをしている。ケンカ? 「言ったけど、う〜ん、それほど…好きじゃないかも」 女は悪びれず。 「好きじゃないって…」 男はうろたえている。 「好きは好きなのよ。う〜ん、ポテチくらいに好き」 「ポテチ?」 「そう!
いくらどんなに取り繕ったところで、中身が伴わなければ仕方ない。逆に中身がどんなに素晴らしくても、キレイに着飾らなければ気づいてもらえないこともある。 「お見合い…ですか?」 彼女はずり落ちそうなメガネを直して聞き直した。 「いえね、知り合いの方の御子息なのよ…もうね、本当に素敵な人でね…」 おばさんは付き合いでしょうがないとでも言いたげに応えた。 「はぁ…」 今どきはマッチングアプリもあれば、出会い系もある。 「そんなに気合いを入れずに、ホント、普段着でいいの!ね、だから…
「俺がそんなことするように見えるか〜?」 そんなことを言う男が一番怪しい。 「見える。とことん見える。疑いなく見える!」 「そんな〜」 下心や盗みを働くとか、人との関係において、やっちゃいけない様々な裏切り。 「絶対に君を幸せにする!だから、俺と…」 「ゴメンナサイ!」 告白をあっさり断られる。 「なんでよ〜」 「きっとアナタは浮気をする。借金をする。甲斐性なしになる!」 「待ってよ…俺がそんなことするように…」 「見えます。間違いなく見えます!女にだらしない!お金にだ
下町にあるその建物は、レンガ色の茶色い外壁で囲まれていた。 「グリーン…ハイツ…外観は緑ではないんですね…」 不動産屋で間取りと駅からの距離だけ確認していたサトシは、その建物名とのギャップに違和感を覚えた。 「こちらのオーナーさんが、住居は樹の幹みたいなモノで、住まわれる皆さんがイキイキとキレイな緑色の葉になるとの思いから、この名称にされたようですよ」 「へえ〜」 3階建て、ワンフロア3世帯の小振りな昔ながらのアパート。 「1階部分は共同玄関と管理人室があって、ファミリー