ウミガメのスープにおける「良い質問」とは?


Q. ウミガメのスープが好きなおじいさんが、夜な夜なすることは?

A. 徘徊、家(はいかいいえ)


Q. そのおじいさんがひとしきり徘徊したあとにポツリと一言、何と言う?

A. 家好かんのう…(YESかNO)



ウミガメのスープを解く際、どんな質問をしたらいいかわからないとお思いのそこのあなた。…そう、あなたです。その、数年前に買った服を今でも着て「物持ちがいいんですね」ってたまに言われては「いやぁ服に興味ないだけですよ〜」とヘラヘラしているだけのあなたです。

結論を言いましょう。気にすんな、そんなこと。

ウミガメのスープは何を質問しても自由!どんな質問が核心に迫るかわからない!だから恐れずどんどん質問しよう!


「とは言ってもさ、うまい質問ってあるじゃん?」とお思いの、そこのあなた。…そう、サイゼリヤでドリンクバー頼まずに水を取りに行くとき毎回(これファンタにしてもバレなくない…?)と思いつつ真面目に水を持って帰るあなたです。


この記事は、そんなゲボ蔵のために書きました。


水平思考ゲームとも呼ばれるこのゲームに対して、あえてロジカルに「ウミガメのスープにおける『良い質問』とはなにか」を考えてみようと思います(理由:暇だから)。どうだい?興味あるかい?なぁ?何か言えよチクショウ!



公開情報と非公開情報

例題1
男はアイドルの手を握り、大金を手に入れた。
答え:男は手相占い師。アイドルが1年以内に結婚するという占いが当たり人気者となった。

まず大前提として、ウミガメのスープには「公開情報」と「非公開情報」の概念があります。

  • 公開情報:問題文に書いてある、又は書いてあることから容易に推測できる情報

  • 非公開情報:問題文には書かれていない情報の内、問題文からの推測が困難な情報

通常、ウミガメはこの「非公開情報」をYES・NOの質問で探り当てて答えを導く、つまり答え=非公開情報を入手することが目的となります。

例題1では、非公開情報は男の職業(手相占い師)です。ここが補完できれば、あとは「アイドル」「大金」といった公開情報と結びつけてストーリーが推測できます。

垂直思考と水平思考

ではどのようにして非公開情報にたどり着くのか。これについては2種類の方法が考えられます。

  • 垂直思考:公開情報から推測されることを手がかりにして状況を特定していく

  • 水平思考:公開情報とは関係のなさそうなことが本当に関係ないかを明らかにしていく

実はウミガメのスープにおいて、多くのプレイヤーが行っているのは水平思考ではなく垂直思考、つまりロジカルシンキングです。

例題1を解く際の最短経路は、問題文の「男」に注目し、「男」の周辺情報の中から「男の職業」に注目し、世の中に存在する職業のカテゴリから手相占い師を導くという流れです。「男」→「男の職業」→「男の職業=サービス業」→「男の職業=手を日常的に握るサービス業」→「男の職業=手相占い師」と推測していくことは、抽象→具体のロジカルシンキングにほかなりません(数学で言えば、どんどん小さい部分集合に注目していくことに等しい)。

一方、水平思考(ラテラルシンキング)は、問題文に書かれていることに「引っ張られずに」関係なさそうなことを質問していくことを指します。

代表的な水平思考による質問は「犯罪関係ある?」です。

例題2
女は娘のめにぬいぐるみを買ったが、くる日そのぬいぐるみを買った店に返した。
答え:女は娘を何者かに殺された。女は娘がよく通っていたおもちゃ屋の主人が犯人だ考え、復讐のため、ぬいぐみに爆弾を入れて店のたなにそっと戻した。

一見すると文章のどこにも犯罪に関する記述がないので、ロジカルシンキング(公開情報を手がかりにする)では「犯罪が関係すること」にはなかなかたどり着けません。そこで問題文に引っ張られずに自由な発想で質問してみる、水平思考が必要になるのです。

水平思考とは問題文に依存しないわけですから、極論「どんな問題が来ても関係なくする質問」が水平思考とも言えます。「犯罪関係ある?」がウミガメのベタ質問として通用しているのはそういう理由です。他にも「現代の話?」や「日本の話?」「ゲーム関係ある?」なども水平思考によるベタ質問ですね。ただ「問題文に依存しない」質問は無限に想定できますから、やはりメインは問題文を足がかりにする垂直思考を使わざるを得ません。

垂直思考+水平思考

もっとも、垂直思考メインとは言え、垂直思考の枠組みの中で水平思考を用いるということもあります(むしろそれがウミガメのスープの醍醐味です)。

例題2では「娘」という文言があり、ここから「娘」の設定について考えていく。これ自体は垂直思考です。ところが、プレイヤーは「娘」に関する周辺情報の全てを検討するのではなく、無意識にいくつかのことを前提とします。その1つに「娘の生死(娘は生きている)」があります。その前提に依存せず、ロジカルシンキングの推測に水平思考を取り入れることで、はじめて「娘が死んでいる」可能性に思い当たることができます。

出題者としても、問題を作る際には「文言から無意識に連想される前提」を裏切ることでウミガメを成立させようとすることが多くあります。よって、この「垂直思考の中で水平思考を使う」ことは有効に働く場合が多いと考えられます。

良い質問とは?


ではこの辺で結論を出しましょう。

ウミガメのスープにおいて有効に働くと考えられる質問の方向性についてです。

【前提】

問題には公開情報と非公開情報があり、公開情報を手がかりに非公開情報を導く垂直思考(ロジカルシンキング)が基本となる。

【質問①】

公開情報に対して、その情報に付随すると考えられる情報の絞り込みを行う質問。その際、「AはBか?」という決め打ちの質問よりも、「Aは重要か?」という聞き方が望ましい。重要であるかどうかはすなわち、Aが答えの中に含まれる(非公開情報に該当する)かどうかの質問だからである。

【質問②】

重要である、とされた周辺情報について詳細を絞りこむ質問。その際、「動物」が重要な非公開情報であるとされた場合、「キリンか?」など一点がけするよりも「哺乳類か?」とジャンルを狭めていくような質問や、「キリン、ゾウ、ウシの中にいるか?」といった質問の工数を減らす問い方が望ましい。

【質問③】

公開情報についてそれに付随する周辺情報の中で、プレイヤーが無意識に前提とする情報の洗い直しをする質問(垂直思考の中での水平思考)。「男は子ども?」や「女は生きている?」などがこれに当たる。

【質問④】

公開情報に依存しない、まったくの水平思考による質問。「犯罪関係ある?」「現代の東京でも通用する?」など、問題の舞台設定(メタ)に関する質問がこれに当たる。これはどんな問題に対しても共通の質問が妥当する。


これらを意識すると、少なくとも思いつきによる行き当たりばったりな質問が散発する、といった事態は回避できるでしょう。

ただ、繰り返しになりますが、「思いつきによる行き当たりばったりな質問」が悪手であると言えないのがウミガメのスープの真骨頂です。あくまでロジカルに考えると上のように整理できるというだけで、それすらも逸脱するような、無軌道な質問が突破口を拓くことは十二分にあり得ます。

私が今ここで偉そうに述べたことは、いわばスープの早食いスキルについてです。それで早く飲めるとも限らない上に、パターンにはめて解こうとすることでウミガメの魅力を損ねる恐れすらあります。「んー?」と頭を悩ませている時間も、ウミガメの面白さを増幅させる貴重な体験です。

まず問題と向き合い、驚き戸惑い、悩み、そして突き抜けた瞬間に脳を走る快感に溺れましょう。それさえできれば、質問の良し悪しなど関係ない、立派なウミガメプレイヤーなのです。

そして、ここに書いたことがすべて陳腐化してしまうような、素晴らしいウミガメのスープに出会えることを期待しましょう。

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