小さい頃から真面目で臆病で控えめな性格だったと思う。幼稚園にいるときもどちらかといえばしたがう側で、いつも言いなりで周りに合わせていた記憶がある。小学校に上がると周りの人間も増え、様々な性格の人間を目の当たりにし、しだいにその環境に適応して自分の性格も変わっていってしまったのだろう。幼稚園で唯一、怖いとか余計な感情を持たずに付き合えた友達と久しぶりに遊んだときに、「怖くなった」と言われたときのなんとも言えない申し訳無さや悲しさは小学生ながら響くものがあったのを今でも覚えている。それでも私はその小学校で生き抜かなければいけないから、友達を作り、好かれるような行動をとったんだと思う。そこそこ上手くやってたし、問題も起こさずクラスでも人気で成績も優秀で模範的な生徒だった。でも卒業を控えたある日、何かが弾けてしまった。何がきっかけだったのかはわからない。昼下がりの校庭で同級生に言われた一言だったのか、意気揚々と教壇で話をする先生をみてなのか、はたまた理由なんてないのか。ただ冬だったことだけは覚えている。私の好きな季節だ。薄暗くどんより雲がかかり空気が冷たい日だった。インフルエンザに注意しなきゃなとのんきに思っていた矢先だったかもしれない。すべてを奪われてしまった私は、むしろ自由だった。すべてが真っ白に見えてもうもとの世界には戻れないと思った。地獄ってのは案外こんなもんなのかもなと思った。春になって黄色く光る世界に引き戻されると私がいた世界はまるではじめから無かったかのように消えた。生まれ変わった僕は真面目で臆病で控えめな性格に戻っていた。今はもう周りに染まって変わってしまったけれど、今でも好きな季節はと聞かれたら冬と答える。