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にゃんこが好きな話

今朝、我が家の庭木のあわいに、茶色いにゃんこが現れた。
虎柄の、そこそこ体格の良い雌にゃんこ。
端然と座り込み、僕がじろじろ見回しても気にする風は無い。
凡そ五分後、ぐいと足を突っ張って立ち上がると、
すいすいと木々の合間を縫って泳ぐように立ち去った。

この地域は比較的にゃんこが少ないように感じる。
以前住んでいた地域では毎日のように野良ちゃんがうろついており、
地域猫として近隣住民に可愛がられていた。
ここでは引っ越して一か月、ようやく二、三匹を見かける程度で、
我が家で見たのは初めてであった。
それで、僕は嬉しくなって
「にゃんこだ!」と朝からはしゃいだ。

ところで、僕はここ一週間ほど、にゃんこが来ないかと随分期待していた。
僕は断然猫派なのだ。
それで、以前の地域で我が家に来たにゃんこを思い出し、
懐かしく感じると共に申し訳なさを思っていた。

そのにゃんこも雌で、まだ生まれて二月と経たない子猫だった。
ガリガリだったが毛艶は良く、黒と白の斑で牛みたいだと、
「みるく」と呼んで可愛がった。
みるくはとても人懐こく、首輪は無いが飼い猫だったのではと思うほど
すぐ僕に懐いたが、
その時だった、僕が猛烈な猫アレルギーと判明したのは。
全身に発疹が出て、顔を近づければ咳と鼻水が止まらず、
やや呼吸困難にも陥りかけた。
ショックだったが、元来猫アレルギーの叔父が
猫と住んでアレルギーが治ったと言うので、
それを信じ、自宅でもマスク着用でみるくと触れ合った。

ご飯も良く食べるようになり、トイレも殆ど覚えてくれた頃だった、
その頃からみるくは兎に角遊びたがり、
狭い我が家では可哀そうと外へ遊びに出すこともしばしばあった。
それで、ある日忽然と、みるくは消えてしまったのである。

僕はほうぼう探し回り、
近隣中のポストと言うポストへ迷い猫のチラシを入れ回ったが、
残念ながらみるくは発見出来ず、
今となってはほろ苦い想い出となってしまった。

「あの時、外へ遊びに出さなければ。」
と悔恨の念を抱くこともあったが、
なるべくしてなったのだ、と今ではそう思うようにしている。
もしかすると、本当に飼い猫で、元の飼い主の下へ戻ったのかも知れない。
或いは、みるくは賢明な子猫だから、
僕の猫アレルギーを憐れんで自ら離れたのかも知れない。
にゃんこは聡い。
僕たちの知らないところで様々なことを見聞きし、感じ、考えている。

そんなこんなで、追懐に浸る僕の下へ再びにゃんこが現れたのだが、
僕はもうにゃんこを飼えない。
それなのに、にゃんこが来ないかと期待するなんて、
自己矛盾にほとほと嫌気が差すが、
それでも不図立ち寄ってくれるにゃんこを見ると、
僕はつくづくにゃんこにご縁があると思わざるを得ない。
動物占いもライオンだし(関係無いか)。

いつか猫アレルギー治して
絶対にゃんこ飼うぞ!!

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