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SW品質まとめ⑤品質は、モノを作る前にすでに決まっている

ソフトウェア開発に関わらず、他業種であっても「何か(製品)を作成する」プロジェクトである以上、次のことは必ず行われます。

これを「プロセス志向」といいます。

図1

各工程の開発作業において慎重を期すのであれば「何が必要で、何が不必要なのか」を明確に定義し、ユーザーおよびチームメンバーとコンセンサスが取れている必要があります。これが用意できなければ(つまり、すべき準備を怠っていれば)トラブルを"確実に避ける手段"は皆無となるでしょう。

また、慎重を期す際には「作業(プロセス)」と、その「インプット」および「アウトプット」を明確にしておくことが重要になってきます。

もちろん、ただ明確にすればいいというものではなく、明確に紐づき、第三者が確認するうえで支障なく確認できなければなりません。ゆえに、これら中間成果物間のE-R(Entity-Relation)が定められていることは、品質保証上で大きな意味を持ってくるのです。

すべてのプロセスに紐づくインプット/アウトプットも連動している

プロセス志向においては、すべてのプロセス(作業、タスクと言い換えてもいい)が常にインプットとアウトプットを持っており、次のプロセスへと連動するようになっていると考えます。同様にソフトウェア品質においても、それぞれの品質が複雑に絡み合って依存・影響しあっています。

 「利用時の品質」は外部品質に依存する
 「外部品質」は内部品質に依存する
 「内部品質」はプロセス品質に依存する

これはつまり、上位品質は下位品質以上にすることはできないということを指します。要するに、『プロセス品質が低ければ、その品質に影響して内部品質も低くなる』ということです。そこで先のプロセス間の連携に立ち戻ってみると、これは各フェーズ(工程)においても同じことが言えるわけです。

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顧客が要求事項を100%提示したとしましょう。

これに対して、たとえば要件定義フェーズの仕様書に記載する内容が100%満たせなかった(95%の)場合、その仕様書をもとに行われる設計以降のフェーズでは5%欠損した情報を基にするため、どうあがいても95%以上の要求を満たすことはできなくなります。

当然、要求分析や要件定義の時点で、顧客の要求が100%に満たなければ、最初から顧客が望むソフトウェアの提供は果たせなくなるのは自明の理です。

各フェーズを1つのプロセスとして見た場合、そのフェーズで作られたアウトプットは、次のフェーズのインプットとして取り扱われます。これは、子供の頃によくやった『伝言ゲーム』と同じ仕組みです。表現方法や切り口、見方などを変えてはいるが、どのフェーズのどの成果物も「顧客の要求を満たすため」に作成しているにもかかわらず、情報の”劣化””欠損”によって、担当者間や時間軸間で認識の齟齬が起きてしまい、当初求めていた仕様とは異なるモノ、異なるコトが出来上がってしまうわけです。

決定論的故障の多くは、ほぼこのパターンで起きていると言っても過言ではありません。ゆえにソフトウェア開発において、安定した高品質製品を提供し続けたいのであれば

 タイミング :プロジェクト発足時点
 注意すべき :プロセス品質

において、徹底的に吟味する必要があるのです。そしてプロセス品質を高めるための最も有効な方法こそが”プロジェクトマネジメント”となるのである。前述の日経SYSTEMSが調査したソフトウェア開発プロジェクトの失敗要因がそれを物語っています(従来のウォーターフォール開発モデルが中心の頃の話でしょうけど)。

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さらに、PMBOK(Project Management body of Knowledge)の定めるプロジェクトマネジメントにおいては、10の管理対象(知識エリア)の1つに”品質マネジメント”と言うものがあります。

品質は、品質だけ切り離して考えるのではなく、全体のマネジメントの一部として有機的に連携しなくてはならないというものです。その意味でも、QAチームなどが介入する場合は、外部品質のみではなく、マネジメントと関係性の深いプロセス品質や内部品質とどのように連携していくかと言う観点から検討しなくては、プロジェクトが破綻しかねません。

少しプロジェクトマネジメントに触れておくと、マネジメント(経営、運営)などと大層なことを言っていますが、要約すると次のことを徹底するだけのことです。

 1. まず(ルール・基準等を)決める
 2. 決めた通りに活動する
 3. 評価する
 4. 是正し、次に活かす

要するに「PDCAのサイクルを徹底すること」+「サイクル時にデータを蓄積し、再利用すること」が徹底できれば、あとは放っておいても品質は否応なく向上するのです。世の中の製造業における一般的なQC活動は、この本質に則り、手法を具体化しているに過ぎません。



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