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ITとは

いままで幾たびか説明してきたように、簡潔に言えば、ITとはInformation Technology(情報技術)のことです。より分かりやすく意訳するのであれば、

 情報を取り扱う技術

全般を指しているということになります。よって、その一端である情報システムの開発は、確かにIT産業の一翼を担っていると言っても過言ではないものではあるでしょう。では、「情報を取り扱う」とは具体的にどういうことなのでしょう。

情報を取り扱う技術が何故そんなに必要なのか

「システム」と呼ばれるものは比較的近代になってから出てきました。語源はギリシャ語の「syn(共に)」「histanai(置く)」の合成語「systēma」に由来します。

つまり、"全体"があって、その"全体"を構成する"部分(要素)"が存在し、その

 「要素の寄せ集めによって1つの全体ができあがる」

と言う理論に基づいて確立されたものです。つまり、システム開発とは、全体を構成する要素をチームメンバーが責任を以って作成し、それらの部分要素を組み上げて1つの"全体"を作り上げることが仕事となります。ですから、別にPCやサーバーを使ったものだけがシステムと言うわけではありません。

たとえば、車載開発の世界では「車」を構成する全体のことをシステムと呼びます。

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上図は車載開発における開発体系「Automotive SPICE(Software Process Improvement and Capability dEtermination)」の一部です。このように、上段はハードおよびソフトを含む、車全体のコンセプト定義からアーキテクチャの設計までをシステムと呼んでいます。ちなみに、"SWE"はSoftWare Engineering(ソフトウェア工学)の略です。

このように、世の中の大半のものは一つひとつそれぞれの部品、機能が組み合わさって、大きな「システム」を構築しているのです。

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なんか、錬金術みたいな話ですね。たしかにITは平成の、あるいは令和の錬金術かもしれません。


ですが、システムにとってはそうであっても、これは本当に『IT』の本質なのでしょうか?

いいえ、違うと思います。

ITとは、先にも述べたように「情報を取り扱う技術」であることを説明しました。たしかにデータベースなどの情報資産を取り扱う、あるいは画面からの入力情報を格納する、取り扱う必要がある情報資産を正しい形で出力する、etc.…と言うのは情報を取り扱う技術かもしれません。そう言ったことに思いを馳せるのも立派な仕事の1つでしょう。

しかし、今挙げた例に違和感を感じませんか?

それは、ユーザー…すなわち利用者の取り扱う情報にのみ着目していて、視野狭窄してしまっている点です。その証拠に、データベースにせよ画面にせよ、それだけが立派にできても、システムをすべて構築することはできませんよね?

私たちは、ITサービス産業と言う業界にいるのですから、当然「お客さまが取り扱う情報とはなにか」というのもその1つの分野としてしっかりと取り扱えるようにするべきだとは思います。けれども、この"IT"にはそれだけの意味しか含まれていないわけではありません。

ほかの業界の名前には一切「情報」という言葉が出てこないのは、まさのこの業界だけが「情報」すべての分野に対して、責任ある取り扱いができる産業であることを意味しているからだと思うのです。

つまり、ありとあらゆる業界から情報を取り扱うエキスパートをアウトソージングした結果、今のITサービス産業が存在するようになれたのだと考えられませんでしょうか。もしそうだとするならば、元々はお客さまの会社の一部署的なイメージを持った時、

 「どんなことを望んでいるのか」
 「利益につながっているのか」

と言ったことも同時に考えないと、成立しないのではないでしょうか。要するに、各業界から切り取ってまとめ上げられた業界であるからこそ、私たちが駆使するITは、常に顧客のニーズが無ければ存在できないと言うことを意味するのだと思います。さらに深く潜れば

 「どんな情報を取り扱えば、サービスや製品を提供できるのか」
 「自らの業務において、どんな情報を取り扱えばいいのか」

と言った点にも思いを馳せなければならないと思うのです。

そして、そうあることを前提にしてシステム(ソフトウェア)開発に取り組むからこそ、私たち情報を取り扱う技術のエキスパートが集うITサービス産業、IT業界が必要とされているのです。

そうであるなら、どんなに技術力があったとしても、「ただ作るだけ」「ただ言われたことを実施するだけ」と言う姿勢では、ITサービス業には成りきれていないことを意味します。


情報を取り扱う技術とは?

そもそも、「情報を取り扱う技術」とは一体なんなのでしょう?

確かに先の例にも挙げたようにデータベースなどの情報資産を取り扱う、あるいは画面からの入力情報を格納する、取り扱う必要がある情報資産を正しい形で出力する、etc.…と言うのは情報を取り扱う技術の一端ではあります。「システムを開発する」…と言う業務の中のごく一部では確かに必要な技術でしょう。しかし、私たちの仕事はそれだけなのでしょうか?

とりわけITと言うと「=システム(ソフトウェア)開発」をするのが仕事だと思いがちですが、Informationには、もっと原始的で、もっと身近な情報もあるはずです。

たとえば「報・連・相」がその1つです。コミュニケーションの1つとして挙げられていますが、そもそもコミュニケーションこそICT(Information and Communication Technology)の最も原初にある情報伝達手段の1つの形です。

 「プログラミングはできるんだけど、コミュニケーションは苦手で…」

この業界にも、例に漏れずこうした人が多く存在します。苦手なのは確かでしょう。不得意を超えて嫌いな人もいるかもしれません。しかし、それを免罪符(言い訳)にしていては、いつまで経っても私たちはこの業界の情報を取り扱う技術のスペシャリストたり得ることはできません。

 ・様々な情報・情報資産
 ・それらを伝達する様々なコミュニケーション手段
 ・そしてそれらを取り扱う様々な技術

これらを駆使してより社会に貢献する業種、産業である以上、ありとあらゆる情報のありとあらゆるコミュニケーション手段を無碍にしてはなりません。

基本的で、より原点に近い情報管理方法やコミュニケーション手段であっても、それらをどのように扱えばいいでしょう。アウトソースされた私たちは時にシステムを構築し、時にパッケージ商品を駆使し、時にシステム化することなく現行の業務をよりスマートな方法へ変更するようアプローチします。様々な社会をつなぐ存在になるために情報を取り扱う様々な技術を習得し、活用していくのです。

このことからもおわかりの通り、「情報を取り扱う技術」には"会話による言葉の取り扱い方"から,"メールや文章による情報の管理の仕方や事実の伝え方"など、様々な情報の取り扱いについて、スペシャリストであることが求められているのです。

生まれながらにそれらが出来るわけではありません。

これらの技術は好き嫌いと言った主観的な感情抜きに、後天的に身につけることができる技術群の1つであることに疑いありません。プログラミングやドキュメンテーションの技術と何ら変わりがないのです。自身の性格や欲望、主観などを混同させてしまうがために、それが独りよがりとなって、修得を困難にさせてしまっているのです。

「技術は、しょせん『道具(ツール)』」と割り切って身につけ、必要に応じてそれらを駆使するだけでいいはずなのです。これもまた『IT』と言う言葉を正しく理解し、適用すればこそ努力することができるようになると言うことを覚えておきましょう。

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