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スーダンの若者の現実

スーダンの若者に成功とはなにかを尋ねると口を揃えてスーダンを脱出することだと答えが返ってくる。サウジやドバイなどの中東エリアではスーダンの公用語であるアラビア語が通じるし、従順な性格のスーダン人はワーカーとして人気がある。人口約4000万人のうち100万人ほどが海外で生活をしているとされる。

スーダンの若者が自国で夢を描けないのは、雇用の受け皿のなさに起因する。スーダンのトップ大学を卒業したのにフラフラしている友人もその一人である。毎年排出されるエリート層を受け入れるだけの頭脳労働はスーダンにはない。彼らは低賃金で働くぐらいなら働かないほうがいいと断言する。そんな彼らは日中何をしているかというと、民間の英語の学校に通っている。スーダンから脱出をする際に、英語の資格を持っていると役に立つのだという。学力と家庭の経済力は比例しており、大学卒業後も学校に通わせる余裕がある。親は子どもを国内で低賃金で働かせるよりも先行投資して、海外に送り込み外貨の送金を夢見ている。

一度、英語学校を覗かせてもらったのだが、若者で溢れかえった教室の光景に、この国のエリート層の現実を垣間見た気がした。

残念ながら、条件が悪い仕事でも働きたい人がいる限り改善されることはない。19歳のアハマド君に会ったのは、就学支援の活動で貧困家庭を訪問して回っている時だった。彼は建築現場で肉体労働をしている。週6日泊まり込みで働いて月に得られるお金は2500円ほどにしかならない。炎天下の肉体労働、低賃金という悪い条件から抜け出せないのには理由がある。彼が14歳のころ父親が亡くなった。4人兄弟の長男である彼に重い責任がのしかかり、家計を支えるために学校をドロップアウトした。大学卒業者が嫌って避けるような仕事でも、卒業証明書のない彼は履歴書だけで蹴られてしまい、最も条件の悪い仕事に従事せざるを得なくなってしまった。

私は、失礼を承知で「この先どうしたいの」という質問をしてみた。彼は家族に聞こえないような小さな声で「学校に戻りたい」と答えた。

何か道がないか探っていると、お母さんは昔路上のお茶屋さんシッタシャーイの仕事をしてたことがわかった。彼女が仕事を辞めてしまったのは、警察に仕事道具を没収されてしまったためで、道具さえ準備できればすぐに働きたいと言ってくれた。
私も金銭や物を援助する方法に限界を感じていたためもあり、シッタシャーイ開店を進めることにした。

次回、シッタシャーイ開店と見つかった課題

皆様からの温かいサポートは、日本に憧れを持ち、日本に留学する夢をもつスーダン人の若者が日本語を学ぶ活動に使わせていただきます。