アラフォー上海留学日記【76日目】

5/12 日

昼頃起床し、食堂になにか食べに行くが、食べたいものがない。酸っぱい汁なし麺、たとえば热干面とかが食べたかったのだが。わざわざウイグル料理のフロアまで行ってみたのに、やはりピンとくるものがなく、結局おかずを2品打包して備蓄してあった冷麺を食べた。冷麺、大正義。備蓄が残り1つになってしまったので、また韓国スーパーに買いに行かねば。

いつぞや買ったものの、気になるところしか読んでいなかった屋台のZINEをじっくり読み始める。上海で見かけた51の屋台について、その構造や屋台の主人に聞いた話などをまとめたもの。上海では屋台販売が禁止されているらしく、どう警察の目を逃れるかについて主人たちは苦心しているようだ。
知らない単語を調べつつ、ああなるほどそういうことか!と理解できた瞬間のよろこびを噛みしめながら、興味ある内容を読み進めるのはとても楽しい。興味ある内容じゃないとここまでして読もうとしないから、やはり現地で気になる本やZINEを買うのは重要。

そのなかに、鬼市についての記述があった。鬼市というのは深夜1時~4時くらいに真っ暗闇のなかで開催されている市のこと。懐中電灯やスマホのあかりを頼りに屋台に並べられた品物を見定め、価格交渉をして購入するというのが醍醐味だそうだ。

諸星大二郎先生の諸怪志異シリーズにも「鬼市」という作品があったっけ。妖怪を見ることができる阿鬼が、五行先生といっしょに墓場で開かれる鬼市をめぐるシーンが楽しかったな。
調べてみたところ、上海では毎週金曜の早朝5時から杨浦公园跳蚤市场で、毎週木曜の夜12時から岚灵花鸟市场の門近くの路上で鬼市が開催されているらしい。岚灵花鸟市场の鬼市は深夜2時ころに盛況を迎え、朝5時になると市場のなかにある骨董市場に場所を変えるとのこと。
岚灵花鸟市场は、上海に来たばかりのころに多肉植物を買ったところだ。まあ、わりと近いといえば近いので、タクシーで行ってみるか。懐中電灯はないから、灯り用にスマホをもう一台持っていこう。

読書を続けていると、あっという間に夕飯の時間。このあいだ食べた具だくさんのドデカ生春巻きみたいなものをまた外卖し、ビールを買ってきて夕飯にした。このドデカ生春巻きみたいなものは、陕西名物・凉皮(リャンピー)の一種。
皮の部分が凉皮と呼ばれるもので、てろてろつるつるした食感がとてもおいしい。香港の肠粉に似ている。これをきしめん状に切って麺のようにして食べるのが一般的だが、こうやって具材を包んで食べてもよい。日本でもっと流行ってほしい。リャンピーという名前もなんだかキャッチ―だし、受けると思うんだけど。

WeChatで日本アジア通信社の「静说日本」というアカウントの投稿が流れてきた。タイトルは「日本人的许多想法为何与中国人不一样(日本人の考え方の多くはなにゆえ中国人と違うのか)」。へえ、と思って読んでみると、GWに岩手県の「鬼の館」という文化博物館に行った筆者が、鬼に対する日本人のとらえ方を紹介しているものだった。今日はなぜか鬼に縁がある。
かいつまんで内容をメモしておく。

(前略)日本の政治と文化、軍事は長らく関西が中心だった。そのため、遠く離れた東北では軍事とかけはなれた和睦の生活を送っていた。もちろん小さな衝突はあったが、強者は弱者を殺したあと、遺体を供養し弔うことで内心の安寧と解脱を求めた。これが日本社会の「和」の文化を生んだ。
仏教が伝来すると、それはさらに一種の哲学となった。人が死んだあとはみな菩薩になり、みんなの平安を守ってくれる存在となる。つまり、鬼や神は平安をもたらし、疾病などをはらってくれるものという文化がじょじょに根づいた。だから多くの日本人は鬼は怖いものではなく、みんなの守り神という意識がある。
墓地の近くに住む日本人も少なくない。怖いどころか、鬼や神のご加護があると考えているからだ。「大塚」「小塚」など、お墓という単語を自分の姓にした人もいるくらいだ。
日本人の鬼や神に対する意識が中国人と大きく違うのは、死者に対する意識が違うからだ。日本人は、死んだらどんな大罪も赦され菩薩になると考える。我々中国人は、死んでも悪いやつは悪いやつとして永遠に赦すことはない。(中略)鬼文化を理解することで、日本人の不思議な考え方の起源を知ることができるだろう。

途中から、死者に対するとらえ方=鬼に対するとらえ方にすりかわっていることにロジックが変だと違和感を覚えたが、中国語で鬼は幽霊のこと、つまり死者とニアリーイコールだ。読者は中国人なので、そこらへんはもう説明不要ということで、「死者」の部分に「鬼」を代入しているのだと思われる。
いろいろ思い込みが激しい文章だったが、日本人が中国文化を語るときもだいたいこんなものだし、まあそういうものなのだろう。ちょっと見聞きしただけでその地の文化を語れるはずはないのだから。





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