アラフォー上海留学日記【132日目】

7/7 日

今日は都知事選である。頼むよ、都民のみんな。私は在外選挙人名簿への登録が間に合わず、一票を投じることができないのだ。私のぶんまでよろしくな。

昨日チケットを買っておいたデビッド・ホックニー展へ。会場である上海艺仓美术馆は浦东の川沿いにあり、どの駅からも遠くてアクセスが悪い。この炎天下で自転車に乗るのか…とげんなり。この立地の悪さは新木場の現代美術館に似ている。そういえば東京でホックニー展をやっていたのは現美だったっけ。
塘桥站から自転車で川沿いに出ると、そこからはサイクリングコースであった。黄浦江を眺めながらのサイクリング、暑くなかったらとても楽しいはずである。暑くなければ。

上海の現美では過去に伊藤淳二展をやっていたようである。建物もモダンでしゃれている。さすが現美。

今回の展示では3つのきぶんを味わうことができるはず、と入口付近の紹介文に書いてあった。いわく、玩味与忧郁,亲密与疏远,破碎与宁静(遊び心と憂鬱、親密さと疎遠さ、粉砕と静寂)。
ポスターになっていたプールの絵は、ホックニーがサンタモニカに越したときに書いたもののようである。南カリフォルニアの乾いた風を想像しつつ、上海の人が今いちばん求めているものをポスターに持ってきたのだなと想像した。

ギンガムチェックのテーブルクロスに置かれたタバコがいい味出してる。コラージュ作品もよいが、エッチングやリソグラフのほうが好みだ。質感の違いを描くのがうまい。質感の違いは世界線の違い。違う世界線が1枚の絵のなかに交錯することにワクワクする。熱心にホックニー作品を模写しているボーイがいてほっこりした。

窓の外の世界に接続できるような花の絵もよかった。デジタルで描いているのが新鮮。今回の展示では、窓とか椅子とか花瓶とかをモチーフにした作品が多い。彼が生活のなかで目にしたものたちの情感が伝わってくる。

いちばんよかったのはこれ。同じ模様を追っていくと、すべて同じ世界を角度を変えて描いているということがわかる。見えないところにこんな続きが広がっていたのかと、視野が広がるようなきぶんになって楽しい。絵のなかで絵を描いているというメタっぽい視点もよい。自分の今いる場所を、メタな視点から眺めているような感覚にふと陥った。

いやーよかったよかった、大満足。暑いなかはるばる来たかいがあったというものだ。鑑賞そっちのけで「美術作品と私」の写真を撮りまくる女性がたくさんいたのには辟易したが。これは中国あるある。
疲れたので館内の飲食スペースで休憩。窓からは黄浦江を臨み、しゃれた飲食物を楽しみながらゆったりと過ごすことができる。ただ、西日がきつすぎる。今の時季の窓辺は地獄。

Tと待ち合わせている陕西南路へ移動。時間に余裕があったため、駅直結の商業施設内をうろうろする。小米って車も出してたんだ。家電メーカーかと思ってた。

見たことのない日本ふうメーカーのお菓子がおもしろい。ふかだいちびんのココナッツカリカリ。ほか、スタイリッシュな蚊を殺す道具、マルタイラーメンなどを見ながら時間をつぶす。

19時、外に出てTと合流した。夜だというのにサウナのような蒸し暑さ。じーじーとセミの声がやかましく、湿気とともに体にまとわりついてくる。よさそうな店などをチェックしつつ、长乐路に向かうべく歩いているだけで汗が噴き出す。

携帯していた飲みものが切れたので、公路商店に寄ってビールを一杯。路面店なのでそこまで涼しくはないが、多少でも涼をとれればそれでいい。店先に出してもらった小さな椅子に座ってタバコを吸っていたTが、タトゥーゴリゴリの店員さんに外で吸ってと注意されていて笑う。ここ、ほぼ外なんだけど。明確な線引きがあるみたいだ。

ビールを飲み終えて歩き出すと、また汗がとめどなく噴き出してきた。早く飲食店に入らないともう限界…というところで目当ての貴州料理屋に到着。しかし、6組待っているとのことで泣く泣く諦めた。貴州の鶏料理、めちゃくちゃ期待していたのだが、無念。
おでん屋に移動し、サッポロビールをごくごく飲んでようやく生き返った。しゃれたいい店じゃないの。ちなみに隣のおしゃれ寿司屋もこのおでん屋の系列店らしく、「OKです!」という謎ディスプレイのもとに、ヤングが集まっていた。

気の利いたつまみが多くて心躍る。おでん盛り合わせやサバの塩焼き、あさりのバター蒸しなどに舌鼓を打ち、そういえば都知事選の結果を見ないととスマホをチェックし絶望。まあ、悲しいことにこの絶望には慣れているんだけど。私が都民になってから20年以上、勝ち戦をしたことがない。石原、猪瀬、舛添、小池、思い出すだけで嫌気がさしてくる。やけ酒モードに突入。ハイボールをがんがんあおる。薄口グラスで出してくれたことに感動。
卒論何書いた?とか上海に1ミリも関係ない話などをぐだぐだしながら、もう一杯、もう一杯と杯を進めているうちにまわりはすっかり閉店モード。焼きおにぎりがあるんですよ、締めにどうですか…というすばらしい提案に乗っかり、焼きおにぎりでフィニッシュ。サイコーだ。ちょっと高いけど。1人450元。

気づけば12時を回っている。タクシーで帰ったが、あまり記憶がない。タクシーの運転手さんとなんか陽気に話したような記憶はある。Tは明日も朝から仕事だそうである。かわいそうに。

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