アラフォー上海留学日記【103日目】

6/8 土

三連休の始まり。イラストレーターのUさんが四川北路でフリマをやっているというので、そこにお邪魔した。駅前の今潮8弄ではお酒の店やスイカの輪投げの店などが出ており、なかなかのにぎわい。端午节の香囊(香料を入れた虫よけの袋)も売ってた。
上海では、連休になると街中にこういう出店がたくさん出ているように思う。東京だと休みの日にやたらとマルシェが開催されているが、それに近いイメージ。

フリマは上海モダニズムに関する展示の奥で開催されていた。アクセサリーや靴などのファッション系から、レトロ雑貨やレコードなど種類はさまざま。

Uさんを探すと、ちょうど撤収作業中のDJブースにいた。DJのTさんは、夜に伊犁路でやるイベントのために早々に撤収しないといけないそうである。漢詩ラッパーとかも出るのでよかったら来てくださいと言われ、その人知ってる!とピンときた。SNSで見かけた中华音乐派对というイベントなのでは。阿佐ヶ谷のmogumogu(北京から来た人がやっているライブハウス)関連の投稿で見た記憶がある。そうそう、それです!とTさん&Uさん。聞くところによると、漢詩ラッパー、イベント当日ギリギリにようやく漢詩を完成させたそうである。めっちゃ見たい。でも今日は予定があるから残念。

UさんといっしょにいたAさんを紹介してもらう。Aさんは院生で、絶賛博論の準備中だという。坐月子(産後1ヵ月間、母体をひたすら休ませるための中国文化。お母さんは外出はもちろん家事とかもしちゃダメ、とにかく家で安静にする)の研究をしているそうで、フィールドワークがほぼ終わったので、まとめる作業に入っているのだそうだ。論文の提出〆切は来年とのこと。たいへんだ。
Aさんがフリマで買った日記帖を見せてもらった。昔の中国では、日記の1ページ目にメッセージを書いて友達などに贈る文化があったそうである。この日記帖には、「四年が一日のよう、クラスメイトのために熱心に貢献してくれてありがとう」みたいなメッセージが書いてある。1982年。私と同い年ではないか。

以前city walkでお世話になった董さんのブースには、董さんのコレクションが並んでいた。ハトレースの会員証みたいなものが気になったが、150元とちょっと高めなので迷う。
Uさんのブースでは、上海の各エリアを東京の地名にたとえた地図がついたZINEを購入した。私も知らない都市に行くとついつい東京でたとえたくなる癖がある。このエリアは新宿っぽいな、この路線は東西線に似ている、この道路は甲州街道だ、とか。

次の目的地は江苏路の老卵俱乐部 SpecTersというライブハウスのフリマ。夜にゴスっぽいパーティをやるらしく、フリマの出展者もゴス系の人が多い。「最恨長髪男」というTシャツを売っている女の子がいたと思えば、「最愛長髪男」と書かれたTシャツを売っている男の子がいる。長髪男をめぐっていったいなにが起きているんだ。

めちゃくちゃかわいいクッションカバーを発見。150元だったかな。売っていたのは欧米系のお姉さんで、ぜんぶ自分でデザインしていると言っていた。やっぱり私も含めて外国人が惹かれる中国っぽいモチーフってこんな感じなんだろう。

古北へ移動。途中でマーモットを散歩している人がいた。周りに集まった人たちが、野生動物じゃないの? どこで買ったの?と質問攻め。
近くの韓国スーパーに寄ってドレッシングを買う。中国にはドレッシングという概念がないので、こういうところで買うしかないのだ。

すっかりゴルフ焼けしたTと合流し、ビール屋で軽く飲む。金玉液という字面が目に飛び込んできて笑ってしまった(3泉黄金玉液)。ちょっと飲んでみようかと思ったら249元で目玉飛び出た。ランビックビールという伝統的ベルギービールらしい。培養した酵母を使用せず、空気中に浮遊している野生酵母や微生物を利用して自然発酵させたビールだそうである。
結局、帝都海盐というやつを買ってみた。酸っぱくて軽い、レモンビールみたいな飲み口。39元。タワー状に飾られた韓国焼酎の高級ラインが気になったが、これから北朝鮮レストランに行くのでとりあえずやめておく。

北朝鮮レストランへ移動。約6年ぶりにきたが、お店の雰囲気はまったく変わっていない。豪華なシャンデリアや内装に昭和の熱海感がある。
店員さんの髪型はポンパドゥールに1本三つ編み、お花のヘアクリップというスタイルで統一されている。私たちの卓を担当してくれた子は平壌出身。上海に来て4年、平壌が恋しいです…と言っていた。ここで働いている子たちはええとこの子たちだもんなあ、なんで私が中国くんだりでこんなことやらなきゃいけないのって嘆く気持ちは想像できる。来年には帰国できるらしいので、それまで頑張って。
屈託なく、平壌に行ったことはありますか?と聞かれてちょっと面食らう。こんなにカジュアルに聞かれるほど、中国からだと行き来しやすいということか。

メインで何を頼むかを決めかね、店員さんにおすすめを聞く。予想どおり、カニ、マツタケ、焼肉を推された。カニは時価、マツタケは498元(約1万円)。外貨を稼ぐためとはいえ、高すぎる。なお、北朝鮮の大同江啤酒は1本75元(約1500円)。
ほかに気になったのがタイ式凤爪(鶏のモミジ)とすっぽん。こんなのもあるんだ。結局海鮮を頼んだ。その場で熱するスタイルに、やっぱり熱海のホテルの雰囲気を感じた。

そうこうしているうちにドラム、ベース、シンセの子たちが定位置につき、ショーが始まった。ヴァイオリンのWe Will Rock Youで幕を開けたショーは、お琴ミーツタップダンス、陽気な伝統舞踊など、とにかくエンタメ盛り込みました!という構成。冒頭で客に花束(造花)を配って客席を巻き込み、アリランで女性客に花冠(造花)をかぶせて回り、子供や誕生日の客、若い客は容赦なく壇上に上げる。私も以前、お姉さんに手を引かれて壇上に連れていかれ、ハート形の花輪をくぐってお遊戯みたいなダンスを踊るはめになったことがある。
6年前は、店内撮影NGにもかかわらず中国人客が写真を撮りまくっており、撮影禁止という名目はあってないようなものであったが、今回は写真を撮っている人はあまりいなかった。禁煙の店内でタバコを吸って皿を灰皿替わりにしているおじさんとかもおらず、客の質が上がっていることを感じる。

メニューにビール以外のお酒が載っていなかったので、米酒や烧酒はありますかと聞くと、しばし待たされて店員さんが奥のほうから小瓶を持ってきた。マツタケのお酒です!とにっこり。ちーっちゃな小瓶で250元(約5000円)。そんな値段は払えないので、腹をくくってひたすらビール。ビールでおなかいっぱいになってしまい、冷麺にたどり着けなかった。閉店に向けて容赦なく電気が消されていくので、冷麺を頼む心の余裕がなかったということもある。

まだ22時前。延安西路と伊犁路が合流するあたりにある日本料理が集まるエリア(通称オバマ広場)に移動し、大阪王将が1時までやってるというので、そこに入った。
つまみが充実しており、ロシアンルーレット餃子や、盲牌できたらメガハイボール無料などの遊び心も。ひたすらレモンサワーを飲む。

ぼちぼち飲んだので、2人でこれだけいくんだったら焼酎のボトルを入れてもよかったかもしれないと思った。
帰りがけ、Tが「中国工商银行 VIP大客户」と書かれたエコバッグをくれた。买一送一(1枚買ったらもう1枚ついてくる)だったそうだが、そもそもなぜこれを買おうと思ったのか。交通銀行にしか口座を持っておらず、その残高ももはや1万円を切っている私だが、これを持っていれば中国工商银行のVIP。やったぜ。


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