アラフォー上海留学日記【51日目】

4/17 水

また雨だ。なかなかベッドから出られず遅刻したうえに、部屋にスマホを忘れた。雨が降ると活動がにぶる法則。

今日の授業は2科目合わせて90分の短縮版で、そのあとは隣のクラスと一緒におやつ大会。各自持ち寄ったおやつを食べて、中国語で食レポをするという。トッポギをつくって鍋で持ってきた子、フルーツをひと口大に切って持ってきた子、自国のお菓子を手作りしてきた子などもいて、こういうことに手間ひまをかけてくれるいい子たちなんだなあとじーんときた。

留学生の子たち、素直ないい子が多いんだよ。子供みたいな中国語で会話するしかないから、というのも影響しているのかもしれない。たどたどしいシンプルな言葉を使っていると、めんどくさいやつになりようがないのだ。

韓国の承泫が、私の持って行ったたけのこの里ときのこの山に反応してくれてうれしい。日本に行ったら必ず買うそうで、彼女はたけのこのほうが好きとのこと。私も断然たけのこ派なので、戦争にならなくてよかった。
南アの布希に、あれおいしかったから名前教えて、と言われたが、中文でどう表記するのかわからず、笋的老家…かな…?と適当に答えた。お店で陳列されていたときの中文を確認したら、竹笋形巧克力饼干(たけのこ型のチョコレートビスケット)と書いてあった。

昨日おかしを買う前に、日本の海菜と商品がかぶらないように事前に連絡をしていたのだが、海菜がそのことをじつに日本人らしいと思ったと言っていて、なるほどと思う。日本人の一部は事前連絡が当たり前と思っているフシがあるので、そういう習慣がない国の人にも、事前に言ってよ~と同じ行動を求めてしまうこともあるだろう。相手にとってはわずらわしいだけ。たぶんこういう小さな習慣の違いが、異国の人と仕事をする際にどんどん積み重なり不満がたまるんだろうと想像し、たいへんだなあ…と遠い目になった。

隣のクラスのモンゴルの子とロシアの子を含めた5人グループであれこれ話していたら年齢の話になって、どう振る舞うのがベストかちょっと考えた。モンゴルの子は16歳、ほかの子たちも海菜をのぞいてほぼ20代前半。気を遣わせてはいけないので、41歳だよ~海菜が君たちのお姉さんなら、私は君たちのママだよ! 子供たちよ~と言ってみたが、正解だっただろうか。へんに自虐すると気を遣わせてしまうから、ここのさじかげんが難しい。
20代女子が集まると、彼氏いる? 好きな人いる? 中国人男性と付き合える?などの話が自然と始まるのがおもしろい。凯丽が、前の期は同じクラスにカップルがいたよ、と言うと、え~誰とだれ!?と盛り上がる。留学生どうしくっついたり離れたりして、気まずくならないんだろうか。ふと、大学のサークルを思い出す。

休憩時間にクラスメイトのおじさんにライターを借り少し話をしたら、トルコ人だということがわかった。授業中に話している内容から最初はアメリカ人だと思い、次にイギリス人だと思い、その次はWeChatのアイコンに小さく国旗が載っていたのでオーストラリアかニュージーランド人かと思っていたのだがぜんぜん違った。今45歳で来月46歳なんだ、と言う。私は41歳なので、だいたい同じだねと謎の連帯感が生まれた。今日はなぜか歳の話ばかりしているような。

食堂でお昼ごはんを食べる。おかしを食べたせいもあり食欲がわかないが、ここのところろくに食べてないので無理をしてでも食わねば。と思ったが、ぜんぜん食べきれなかった。やばい、食堂の味に飽きてきているかもしれない。体が受け付けてない気がする。早くリカバリーしないと。自分は現地の食を延々と食べ続けられる人間だと思っていたが、そうではなかったのかもしれないと気づき、ちょっとショックだ。知らない自分がいた。しばらく日本食や韓国料理に変えてみて、様子を見ることにする。

昼寝をしたり仕事のメールを返したりしていたら、あっという間に日が沈んでいた。今日はどうしても蕎麦屋で飲みたい。大众点评で水城路近くに蕎麦道日本料理という店を見つけ、脇目も触れずバスで向かった。
お店のドアを開けるといらっしゃいませ~とあいさつされて面食らう。メニューも完全に日本語。店員さんは中国の方がメインだが、店長さんが日本人で、中国語が必要なときもあれば日本語で対応してくれるときもある。ビールに串もの、かぼすサワーにイカ焼き、チューハイと杯を重ね、最後に蕎麦を思うぞんぶんすすって(ふだん、中国では麺をすすれない)、蕎麦湯を飲んで、「いつもの飲み方」が不安定さにゆらいでいた足元をガッチリ固め直してくれた気がした。私の軸足はここにある。

すさまじい解放感に包まれ、なるべく日本人と日本語で交流しない、なるべく日本料理屋には行かない、と勝手に自分に枷をはめていたことに気づく。睡眠、栄養のある食、清潔な環境があればたいていのことはリカバリーできると思っていたが、生活上たいせつにしている「いつもの習慣」もそこに加えたい。
日本人の店長さんとタバコを吸いながら雑談したのち、軽い足取りで帰舎。体の声を軽視せずに行動してみてほんとうによかった。


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