アラフォー上海留学日記【47日目】

4/13 土

念願の超ロングスリープをかまして、元気はつらつ。夜中、トイレに起きたときにベッドの右側=壁側のほうから降りようとしていたのがおもしろかった。東京の家だとベッドの右側から降りるので、その習性が出たんだろう。自分の家だと勘違いするほどにリラックスしていたということか、はたまた東京の家が恋しいのか。

雨がやむのを待ち、甕出し紹興酒が買えるととある記事で紹介されていた豫園のまわりに行ってみる。71系統のトラムで近くまで行けるはずが、上海博物馆が終点だったので、やむなくそこから散歩。人民广场に近づくにつれ、地方からのバスツアー客が増えてくる。旗をもったガイドさんがいて、客は同じキャップまたは上着を着用して。そのひとつに、なぜか香川県の特産品などをデザインしたラッピングバスがあった。

前に来たことのある上海书城のあたりを通り、豫園のほうへ南下。途中、すごく飾り気のないクラフトビールの店や、おいしそうなちまきの店があった。もうすぐ端午节だしな、ちまきを買いにこなくっちゃ。


延安东路を超えると、街並みが一気に再開発モードに突入した。小区は閉鎖され、人民城市人民建,人民城市为人民というスローガンとともに、ただただ取り壊しを待っている。

さらに豫園のほうに近づくと、取り壊しが完了しているがらんどうのエリアがあった。ぽかんと口をあけた上海の空は、湿っぽくガスがかっていた。時間がとまったかのように、2019年に使用できなくなったはずのofoの自転車が。

そこから豫園はすぐ。土産物屋はツアー客や食べ歩き客であふれ、めちゃくちゃにぎやかだ。むやみやたらとデカい串が中国っぽい。はずれのほうに歩いていくと、DJおじさんの串焼き屋があった。大音量で音楽を流し、それにあわせて鉄板をスクラッチしたり、観客(私)をあおったりして、かなりご陽気。自分で超级网红とうたっているところもいい。近くの店で、苗字のキーホルダーを見つけた。残念ながら、私の苗字である须はなかったけど、こういうのがある浮かれた雰囲気が浅草っぽくていいな。

紹興酒を探しに光启路へ向かう。が、完全に取り壊しエリアで何もない。清真の店のまわりだけ人が集まっており、うらさびしい雰囲気。犬に近づいて吠えられた。おどかしてすまん。

私が読んだ記事には狮子街にも甕出し紹興酒の店があると書いてあったので、そちらに移動するも、光启路より何もない。取り壊しも進み、工事の人以外誰もいない状態。大きなマンションかショッピングモールになるんだろう。豫園のにぎわいとのギャップが大きすぎてくらくらする。

時代の変遷に得も言われぬ思いを感じつつ、水城路にある九州料理屋に移動し、大卫と合流。メニューに馬刺しがあったので、これなんの肉が知ってるかと教えるとかなり驚いたようすだった。いとこが馬好きなので、彼にこの写真を送ったら殺されるだろうと笑っていたが、食べてみたいという。島美人と馬刺し、あとサラダとカキフライなどを注文。オイスターは日本語でなんというのかと聞くので、カキだよと答えたら爆笑された。ロシア語でカキってトイレに行きたい、みたいな意味らしい。食事中に言ってはダメだと釘を刺された。

彼はいま26歳で、30歳までに成功しなきゃいけない、親からのプレッシャーもどんどん大きくなっているとこぼしていた。昨日Gさんに聞いた中国の若い子の事情とも、韓国の承泫に聞いた事情とも重なり、20代後半の子たちがこんなに苦しまなきゃいけない情勢に愕然とする。私が20代後半のころは、会社をやめて少ないギャラでもわりとのほほんと生活していたが、いまの時代では考えられないことなんだろう。若い子たちが報われる社会になってほしいと切に思う。

大卫が店を出るときにディスプレイにあった氷を模したプラスチックをひとつくすね、これを幸運を呼ぶアイテムにしよう、と言っていて異文化を感じる。なんなんだそれ。店を出ると、野良猫たちがテラス席の食べものをあさっていた。

近くを少し散歩し、タクシーで学校へ戻る。タクシーはテスラだった。運転手さんに自動運転はできるのかと聞くと、中国では禁止されているとの答え。そりゃそうだよな、上海の道路事情で自動運転なんて怖すぎる。

コンビニでストロングゼロみたいな飲みものを買い、今日は2つ目の秘密の場所へ連れて行ってくれるそうである。ドアの鍵が開いているかどうかは運しだいだと、さっきくすねてきた氷の置物を取り出し、息をふっと吹きかけ願掛けをする。なるほど、このための幸運を呼ぶアイテムか。まじで異文化。残念ながらドアが閉まっていて入れず、ラッキーアイテムの効力なかったね、まあまた次回に、と笑った。

歩いている途中でパアン!と大きな音がしたので、銃の音ではないね、という話からロシアではどうやって銃や麻薬を買うのかを質問してみた。やはりテレグラムを使うそう。ビットコインなどで入金したのち、隠し場所の写真と住所が送られてくるとか。かなり簡単に買えるらしい。一般人が銃を持ってどうするのか聞くと、ロシアの男は強ければ強いほどかっこいいと思っているので、自分を強く見せるために使うとの答え。話を聞いていると、とにかくロシア人男性は体を鍛えていないと人にあらず、女子供を守れない男は男にあらず、というのが常識らしい。たいへんだな、マチズモ社会。

ふだん授業を受けている校舎の3階に大きな教室があるからと、そちらに移動するが、そこも入れなかった。2階の、先生たちの待合室みたいなところが開いていたのでそこのソファでストロングゼロみたいな飲みものを飲む。
おすすめの音楽などをかけ合っているうちに、かなり距離が近づいてきた。物理的に。あっこれはあかんかもしれない、というところで、いまから重要な質問をするけど、日本の方法がいいかロシアの方法がいいかと問われた。こわごわ日本の方法で、と答えると、中国語で月がきれいですねと言われ、たいそうおどろいた。どこで覚えたんだ、それ。日本人を口説くためのマニュアルとかが出回ってるのか? ロシア人であなたにこんなことを言った人はこれまでいないでしょと言う。そりゃ、いるはずはない。
すけべな展開になりそうなところをやんわり阻止し、タバコを吸いに行こうと外に出て、少しおしゃべりしてから解散した。いやはや、まさかこんなことになるとは思ってもいなかった。日本人フリークなのか、ロマンス詐欺的なやつなのか、ただ単にやれれば良いという感じなのかはよくわからない。びっくりしすぎて、すっかり酔いもさめてしまった。プラスチックの氷はコートのポケットに入ったままだ。





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