アラフォー上海留学日記【44日目】

4/10 水

起きたら喉が痛いうえに、くしゃみと鼻水がとまらない。典型的な風邪の引きはじめの症状だ。健康には気を付けていたのに、上海のすさまじい三寒四温っぷりにやられてしまった。今日の上海は「温」だといいな。

昨日、寝る前に高円寺のソンベンが上海のライブハウス情報を送ってくれて、上海唱片店と老卵俱乐部という店がよいと知った。上海のミュージシャンが高円寺に来まくっていて、東京にいながら最新情報が入ってくるのだと言う。来週行く予定のneobarの告知で見かけた脏手指というバンドも、今日から東京でライブなんだとか。高円寺、すごい。ちなみに、脏手指はneobarを根城にしており、ドラマーがめちゃくちゃな飲兵衛でおもしろいから絶対友達になったほうがいいという情報も得た。変な情報すぎてウケる。

今日の授業はテストの概要と簡単な復習。リスニング&スピーキングのテストは、別の教室でPCを使って行うそうだ。ヘッドセットをつけて、音声を吹き込む仕様。こういうのめちゃくちゃ苦手だ。先生が、まわりの人が話し終わってシーンとしているなかでしゃべり続けるのは緊張するけど、気にしないでいいんだからね!と励ましてくれた。リスニング自体はスピードが遅いから難しくないはず、と前期に経験済みの海菜に教えてもらい、ちょっと安心する。

休み時間に先日SNSで見かけたシャンシャンの動画を承泫に見せて、2人であああ…と中国語にできない感情を共有した。成都のパンダ保護センターに訪れた日本人客の日本語を聞いたシャンシャンが、日本を思い出したかのようにその客のほうにゆっくり歩いてきた様子を見て、得も言われぬ感情がわいてくる。こういうとき、なんて表現すればいいんだろう。承泫は难过(悲しい)と言っていた。

タバコ休憩で大卫に会い、週末に日本食を食べに行くことになった。日本食なら私が店を探すよと言ってしまったが、手札はゼロ。新宿ゴールデン街でもフォーリナーから、おすすめの日本食教えてとよく聞かれるが、異国の人が求めている日本食と私が好きな日本食の乖離があるから、店選びはけっこう難しい。そう聞かれたら油そばを推すようにしていると、ひとつの解で一点突破している友人がいて、彼女の方法は潔くて賢いと思う。

昼ごはんを食べたあともやっぱり体調がすぐれず、JINさんに今夜の予定をリスケしてもらう。ちょっと行くのめんどくさいなと思っていたので、口実ができてほっとした自分もいる。食事の場所がよいホテルのレストランだったことも気を重くする原因だったので、リスケ後は場所選びもあらためてもらおう。せっかく上海人に連れて行ってもらうなら、気どったところよりもローカルで雑な場所のほうが絶対にいい。

発話の練習にはシャドーイングというが、カフェや図書館でできないのが難点。とりあえず部屋から出たいので、カフェで作文しようと切り替えて隣の駅まで歩く。テラス席でタバコが吸え、かつ犬OKなカフェでお茶を飲みながら作文を書いていると、あっという間に冷えてきた。風邪ぎみなのになにやってんだと我に返る。犬がたくさん通りがかってよろこんでいる場合ではない。さっさと退散。なにしに来たのかわからない。

どこにも寄らず自転車でそそくさと帰舎。体が冷え切っている。こんなときには湯船が恋しい。コンビニ飯を食べて、今日の活動は終わり。

停滞感がどこからくるのか考えたが、毎日新しいことをやらねばならず、それを乗り越えるたびに小さな達成感をおぼえていた日々が終わり、生活がこなれてきたのも一因なのだと思う。小さな達成感がなくなると、それを語学の達成感で埋めようとし、なかなか埋まらないことに焦ってしまうんだろう。

韓国語を勉強している友人が、「今までは無邪気に小さな一歩を喜んでいたけど、出来ることが増えたから見える景色が変わって、もっと遠くに行きたい! 行けるのに!って焦ってしまう気持ちはめっちゃわかる」と慰めてくれた。
英語とロシア語ができる友人は「不自由な言語でも頑張って意見を言うことに慣れれば、語学力が落ちてからも意外となんとかなる」という体験をシェアしてくれた。人の数だけ語学の道あり、語学の道は1日にしてならず。


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