アラフォー上海留学日記【157日目】

8/1 木

スマホを忘れて授業に行くというとんまなミスをしてしまった。授業前半で、中国の伝統的な文様について先生がたっぷり90分解説してくれたのに、調べたいことを調べられず歯噛みする。
伝統的な18の文様とは、云雷纹、祥云纹、环带纹、忍冬纹、凤鸟纹、如意纹、饕餮纹、方胜纹、唐草纹、曲水纹、垂鳞纹、万字纹、缠枝纹、云头纹、八宝纹、寿字纹のこと。
饕餮(tāo tiè)纹の説明で、これは中国古代の怪物で~と先生が見せてくれた画像に思わず身を乗り出した。諸星大二郎先生の超超超名作『孔子暗黒伝』に出てきた饕餮(とうてつ)ではないか!! 饕餮、こんなところで再会できるなんて! うわあ、再読したくなってきた。

あと気になったのは祥云纹と云头纹。これ好き。帰国後、陶芸するときにこの模様活かしてうつわを作ってみたい。

”龙生九子”という龍の産んだ9つの子供がモチーフになっていることも多いと聞き、九井諒子先生の『竜のかわいい七つの子』を思い出すなど。あれ読もう読もうと思って未読のままだった。なんか今日は漫画と縁があるな。

皇帝の衣装についての話で、「水能载舟,亦能覆舟」というおもしろいフレーズが出た。水とは国民、舟は皇帝。国民は皇帝を乗せることもできるし、ひっくりかえすこともできるという古代中国の考え方を表したものだそうだ。現代からは想像できない民主主義っぷり。

今日のテーマは服装が表す文化についてなので、先生はいつも数式のプリントされたTシャツ着てますよね、と聞いてみると、半分ジョークで着ているんですと言いつつ、僕は複雑系科学を信じているので…と急にカオス理論の説明を始められて面食らった。エントロピーとかわけわかんねえ。

授業後半は、学内にある上海纺织服饰博物馆へ。存在は知っていたけど入館したのははじめて。出土品から布地を再現したもの、衣服そのもの、各地の民族衣装などが展示されている。以下、おもしろかったものだけメモ。

戦国時代の舞人动物纹绵。舞う人、鳳凰、麒麟の図案のなかで注目したいのはやはり舞う人である。巫术(巫術)を行っている巫女さん。

白地山岳双禽树文绵。モンゴルのノインウラ遺跡で出土したもの。山岳の間に花、その上に対になった鳥、横にはきのこ。”山岳、対になった鳥、木の模様”は神話伝説および蜀の人たちの太陽信仰を表しているそうだ。

魏晋南北朝時代には漢民族と西北民族の文化が融合。下の写真は”五星出东方利中国”织绵。独角兽(ユニコーン)がいるね!? 青、緑、赤、黄、白の五色は金、木、水、火、土の五星と一致。赵充国が西羌を攻める前に、東の空に五星が集まったら出征せよ、さすれば勝てる的な占い結果が出たそうで、動物たちのあいだに「五星出东方利中国」と書いてあるのもおもしろい(※右から読む)。

北朝の彩绣方格兽纹锦。象の出現に交易範囲の広がりを感じる。虎のオレンジとモスグリーンの組み合わせがおしゃれ。

隋の花树对鹿锦。なんと洗練された色味(レプリカだけど)。時代を重ねるにつれ、図案の複雑さが増してきた。

宋元時代には繊維業が南で高速発展。色彩は淡く優雅で柔和になり、金銀の糸を使った模様も。下のやつなんかは日本の着物の帯の柄を彷彿とさせるデザインだ。

明清時代は手工芸の最盛期。匠の技はさらに精緻に、文様は華やかに表現力を増した。吉祥柄が流行ったり、農民のあいだにも綿製品が普及したり。漢族の伝統文化も復興し、貴族の服はますます華美になっていったとな。
いい顔シリーズ(上・皂地缠枝莲花童子锦/下・百子图)が味わい深い。

色味がおしゃれすぎるシリーズ(上・黄地缠枝宝莲妆花缎/下・黄地落花流水锦)。この色の組み合わせを参考にしたら、なんでもかわいくなると思う。

龍の周りに必ず飛んでる蝙蝠ちゃんシリーズ。いちばん下の写真は龍じゃないけど、なんだろう。

展示のなかでいちばんかわいかった謎生物。あとは民族衣装などを流し見て終了。衣服や陶器に描かれた文様だけ集めた図録がほしい。

おまけ。赤ちゃんのよだれかけとロンパース。19世紀後半~20世紀前半のもの。赤いほうには小宝宝、ピンク色のほうには百歳と刺繍されている。

14時過ぎに上海博物館に参観予約を入れていたけど、今日はもう博物館はおなかいっぱい。明日に変更し、お昼ごはんを食べることにする。

いろいろ済ませて夜は鬼市へ。21時くらいから品物を並べ始めるという情報があったので終バスで向かうことにした。22時過ぎなのに36度という熱帯夜で息苦しい。こんな暑いのに3号宿舎前にはおしゃべりしている留学生がたくさんいる。みんな元気。

バスを待っているだけで汗が吹き出してくる。鬼市が開催される場所の最寄のバス停で降りて水分を確保。鬼市付近は深夜営業のコンビニがないから、ここを逃したらたいへんなことになる。コンビニ内のインコに癒やされる。

花鸟市场前に来てみたが、まさかのがらんどうだ。しかし、車は並んでいるし、座り込んでいる人たちもちらほらいる。カートを引いたおじさんも見かけた。警察が何人もうろうろしているから開始時間を見計らっているのか? とりあえず24時まで待ってみることにする。

早くも水分がたりなくなりそうなので、待ち時間中に散歩がてらコンビニへ。涼しさに救われる。お茶を買ってふたたび市場へ戻る。途中で深夜食堂(上海にはやたらと深夜食堂という名前の日本料理屋がある)と、アダルトグッズ屋、葬式用品屋を見かけた。

市場前に戻ってみると路上に荷物を出している人がちらほらいるが、警察の数も増えており、なんかもめてる。今日は取り締まりがきつくて開催されないパターンだと踏んだ。タクシーを呼んで帰ろう。

パトカーを撮影していたら、警察二人組が「何撮ってんだ!」と険しい顔でやってきてビビる。なんでこんなに警察が多いの?と聞こうとして「为什么(wei shen me=なぜ)」まで言いかけたらニカッと笑って「ハハハ、心配ない、安全安全!」と言って去っていった。「危险吗?(wei xian ma=危険なの?)」と聞き間違えたようだ。中国語の発音が下手でよかったと初めて思った。

タクシーで学校に戻ってビールを買い、3時過ぎに就寝。疲れた。明日は授業じゃなくてイベントらしいし、休むことにした。はじめてのずる休み。


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