アラフォー上海留学日記【127日目】

7/2 火

おお、今日も天気がいいじゃないか。やる気も出るというものである。いつもの教室についたら、もうみんなテストの準備を始めていて焦る。トイレに行きたくなり、開始時間に少し遅れてしまい、また焦る。
ただ、問題自体はそんなに難しいということもなく、作文もほぼ完璧に仕上げることができた。しかし、いざ解答を見返そうと思ったら、解答提出用のアプリに不具合が生じてしまった。ネットワークエラーみたいな表示が出続ける。消しても消しても出てくる。解答し終わっていてよかったが、万一解答が消えたりしたらたまったもんじゃない。
先生に助けを求めると、とりあえず解答のスクリーンショットを撮って保存して、できれば解答は紙に書いて提出してと言われた。急いでスクショ&転記。作文がけっこうあるので、転記するのに時間がかかる。日本人の学生じゃなかったら泣いてるぞ、これ。
ハプニングはありつつも、時間に余裕をもって試験終了。早々に教室を出てひと息つく。これにて終了。上海留学、ひと区切り。あっという間だったなあ。タバコ1本ではこの解放感に追いつけず、続けてもう1本吸い、青空にけむりを吹き付けた。

大卫から、試験おつかれと連絡がきていたので、90点は超えたと思うと大口を叩く。実際、かなり満足のいく解答ができたと自負している。昼ごはんを食べて、上海印刷字展示馆へ向かう。

晴れるのはいいけど暑すぎる。バス停で寝ているおじさんがいた。バスの車窓からは、亀?をつるして歩いているおじさんが見えた。連続で2人も。

凯旋北路の途中で、仏具屋通りを見かけた。「神算风水起名」という看板が気になる。当たる風水で名前(戒名?)をつけます、みたいな意味だろうか。写真は撮れなかったが、マーモットバーなるものがあったのも気にななった。バスを降りたらまたおじさんが寝ていた。バス停お昼寝おじさんは夏の風物詩みたいなものなのかもしれない。

上海印刷字展示馆(上海印刷技術研究所)着。現代漢字の印刷字体発祥の地と書いてある。なぜか1階がドラッグの展示室となっていた。なぜ?と思いながらもとりあえず見てみた。中国は世界でもっとも早くドラッグを禁止した国のひとつなんだそうだ。

いろんなドラッグを解説するスペースがあり、そのなかに「江南style」という薬物があって笑った。
展示されていたグッズに一目ぼれ。子供が描いた啓蒙ポスターみたいなものがペンケースとポーチになっている。アヘンと摇头丸のイラストがすばらしい。ほしかったが、展示室にいた人は誰ひとり値段を知らず、結局買うことができなかった。

写真を撮るスペースには、永遠に党といっしょに中国の夢を築いていく、とドン・キホーテふうのフォントで書かれた謎の撮影アイテムが。誰がこれを持って記念撮影するというのか。
薬物依存からどのように立ち直るか、更生施設での取り組みも紹介されていた。中国だなあと思ったのは、針の治療が用いられていること。合谷、曲池、足三里の三阳に針で刺激を与えると、脳内の血流量が増えて脳細胞の代謝がよくなり、脳の機能が改善するとか。

字体の展示を見に来たはずが、薬物について知ることになるとは思わなんだ。肝心の字体展示は2階から。
1859年にWilliam Gambleが中国語の鉛活字の模写に成功したのが、中国の活版印刷の始まりのようだ。ちなみにこのWilliam Gambleというアメリカ人は、その後1869年に日本にわたって元木昌造に印刷技術を教えたそうである。

中国の字体といえば、宋、黑、楷、仿の4つが代表的。宋がいわゆるミンチョウ(宋なのに明朝とはこれいかに)、黑がゴシックという感じ。楷は楷書体で、仿はたとえが思いつかない。
上海印刷活字字体研究所は、1959年の印刷字体改革の際に、文化部の指示でこの4種類の新字体を8万字も作ったそうである。一個一個手書きで。細かな修正に職人の意地を感じる。

毛沢東選集は見出しが黑二体、本文が宋二体。正楷体は教科書に、仿宋体は党の文書などに使われていたそうな。たしかに、この公的な文書に使われる字体は見たことがある。仿宋体っていうのか、勉強になった。

日本でいうところのモリサワや写研みたいなフォントをつくる会社についても言及があった。华光字库は欧文や少数民族の文字を開発する専門の会社で、1000あまりの書体を持っているという。ほかには、方正字库、华文字库、汉仪字库、华康字库、印研字库なども。

無数に字体があるなかで気になったのが、萩原恭二郎の「死刑宣告」を彷彿とさせるフォント。「NO MORE 映画泥棒」っぽくもある。あとはコカ・コーラ体。まろっとしていて感じのソリッドさがないのが逆に良い。なんでコカ・コーラなのかはよくわからず。

活版印刷に使われた鉛活字なども展示されており、大満足だ。変わったところだと、陶器でできた活字なんかもあった。活字版を模した大判スタンプの内容が、中国共産党への入党誓詞だったのがおかしい。

上海印刷活字字体研究所を出て、陕西北路を散歩。電線ありのトロールバスが走っているこのエリアには、落ち着いたしゃれた店が点在しており、住むのにちょうどよさそう。

うろうろしていたら雨が降ってきた。撤退した伊勢丹の近くにいたので、伊勢丹跡地に逃げ込む。閉店の貼り紙などはなく、ただただそこに伊勢丹が「ない」というほかない佇まい。

伊勢丹の入っていた商業施設には無印良品もあるのだが、こちらも撤退するみたい。このあいだ教えてもらった四文字熟語の香水シリーズを見つけた。めちゃくちゃかわいいじゃないか。

夕方、早くもテストの結果が届いた。84点。えええ。90点はカタいと思ってたんだけど…ぐぬぬ…大口を叩いたのが恥ずかしい。でもまあ、あれだけ満足がいく解答が書けるようになったというだけでとりあえずはよい。

久光百貨店に寄り、MAOGPINGというコスメブランドのブースで、すごく凝ったアイシャドウとチークを見かける。パリ五輪のためにつくったオリジナル商品だそうである。食品フロアを流し、生食できる卵を購入した。有料だけど袋がかわいくてうれしい。

テストが終わった祝杯をあげるため、またあの蕎麦屋へ。途中で日用品を売っている店があったので入ってみる。蒸し器にもなるこの鍋、ほしいんだよな。めちゃくちゃでかいけど。

蕎麦屋は大繁盛。ギリギリ予約無しで滑り込めた。今日は店長がおり、ひさしぶりですねと言ってくれた。あちこちから日本語が聞こえる。隣のおじさんは日本語ペラペラな小姐に、なんで私のことそんなに贔屓にするの? (私は)ほかのお客さんとも喋らなきゃいけないじゃん? みたいなこと言われてて、おお…という感じだ。帰り際、どんな人だろとちらっと見たらふたりとも私より年上っぽい。片や、ほかの日本人の席からはエロサイトが〜という話が聞こえてくる。

ほどよいアテとチューハイ、締めにそばをたぐって大満足して自転車で帰ると、自転車のカゴに入れていた卵が半分割れていた。上海の道がどれだけガタガタしているかがわかるというものだ。卵が染み出た袋はそのまま捨てた。ほろ酔い気分が覚めてしまい、まあこんな感じで一筋縄にいかないのが中国だしなと再確認した。

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