飾らない自分でいる 滋賀草津〜近江八幡の旅
「ごめん、やっぱりここを出よう。メニュー決める前なら大丈夫だから」
「わかった」
夫のほっとした顔を見た。
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私たちは、滋賀県に旅行に来ていた。
琵琶湖の1番下のほうにある烏丸半島。ここで朝から家族写真を撮ってから、近江八幡を観光しようという計画だった。
昨年の12月、ラブグラフという出張フォトサービスのプランが当たった。Twitterでの出会いはいつでも偶然で、素晴らしい。
家族の自然な姿を撮っていただいた。目の前に広がる琵琶湖の青、風に揺れる芝生や木々の緑に癒され、あっという間に時間が過ぎた。
旅の1番の目的であった撮影が終わり。さてどうしよう。私たちは「道の駅 草津」の駐車場に停めた車の中で、ぼーっとしていた。その後のプランは何も決めていなかったから。
時間が経てば経つほど、お腹だけは空いてくる。
車内で過ごすのが退屈で、ぐずりだす1歳。そして、勝手に運転席まで移動し、危うくクラクションを鳴らそうになったわんぱく2歳。
そんな2人を見る夫の隣で、インスタの投稿をスクロールする。でも、見ても見てもどれもよさそうでなかなか決まらない。
ようやく見つけたのは、おしゃれなワンプレートランチのお店。近江八幡の八幡堀にほど近い場所だった。子連れでもよさそうなソファがあった。
でも、冒頭のセリフのように私たちは結局、そのおしゃれな店に行くことはなく若干の後ろめたさを引きずって、ドアを閉めた。
せっかく旅行に来たんだし、暗くなってちゃいけないな。周りの景色を見つつ話しながら行こうと歩きはじめた。
それから、数分歩いたところに年季の入った、でも懐かしい趣の食堂が。
「初雪食堂」
と大きな文字が目に入る。引き戸をがらがら開けると
「いらっしゃいませ〜」
とお店の人みんなの元気な声が響き渡った。
「こんにちは。決まったら教えてくださいね」
と優しく迎えられて、疲れが吹き飛ぶようだった。
店内を見渡すと、家族連れで満席。みんなそれぞれに話しながらおいしそうに頬張っていた。
私は、みそかつ定食
夫は、カツ丼とうどんセット
子どもたちは、うどん
大盛りのごはんに塩味のきいた大根の漬物、身体に染み渡るみそ汁、外はさくさくで中はじゅわっとやわらかいみそかつ…
すべてが今、求めている味だった。
「おおきに〜」
お店の方の心のこもった料理とおもてなしの言葉に、ほくほくとした気持ちになった。
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ランチやディナー、カフェなどのお店探しをするときに、インスタを使うことが多かった。
おしゃれでかわいいスイーツ
高級そうでおいしそうなごはん
どれも目を惹くもので、たくさんのいいねやコメントがついているものもあって
「私も行ってみたい、味わってみたい」
と、衝動に駆られることも多い。
でも
それは今までも、もしかしたら本心ではなかったかもしれないと今回の旅で思ったのだ。
誰かがいい!と言っているモノやコトが、なんとなく自分にも必要な気がして、ほしいと反射的に思ってしまうけど、実際にその望みが叶ったとき、
「そうでもなかったかも…」
と、勝手に期待して失望してしまうことがあった。
その失望の原因は「自分の本当に求めているモノやコトに気づいていなかった」からだと思う。
ネットやSNSを長い時間、眺めていると、自分の軸を見失いそうになる。
本当にほしいものや、やりたいことが出てくるときというのは、スマホを見つめている時じゃなくて、肩の力が抜けていて、リラックスしている時だ。
ふっと降りてくる感覚。
「がんばって見つけなくても、ぶらぶらしていい雰囲気なところがあったら入ればいいな」
「ごはんも大盛り、お腹いっぱいおいしいものを笑顔で食べたいな」
誰かを気にせず、飾らない気持ちでいるって大切だなと思う旅だった。
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