見出し画像

ふたりにクギづけ

もしかすると、この映画がマイベストワンかも知れない。

(「ドッジボール」という強敵がいるけれど)

マット・デイモンとグレッグ・キニアが結合双生児を演じる。

年が違って見えるではないか、という疑問にはグレッグ側が肝臓を受け持っているので、二人分の解毒のために老けてしまっているという説明つき。

設定を語ろうとすると言葉選びが難しくなる作品だ。

そんな題材をコメディとしてスイスイ切り抜けていくふたりにまさにクギづけになる作品でもある。

彼らだけではない。

共演者がみんな素晴らしい。

シェールもメリル・ストリープも本人役を楽しそうに演じている。

わたしはもう5回以上見ているのだが、去年CSで見たときには、ふたりが経営するハンバーガーショップの年配のウエイトレスの台詞で号泣してしまった。

ウエイターを務めているのは知的障害のある男性で、彼がイカ釣り船を見たがっているから早く帰っていいか、とウエイトレスがマット・デイモンに聞くのだ。

例によって映画の世界に入り込んでいるわたしは、ハンバーガーショップのこしかたや、ふたりと店員たちとの関係や、いろいろなことを想像して「彼にイカ釣り船を見せてやりたい」という理由で泣けてしまったのだ。

なんてなんて、優しい世界なんだろう。

この男性は実際に障害のある人で、映画のエンドタイトルのなかで共演者や監督に感謝のスピーチをしている。

それにもまた号泣必至だ。

障害があるから、結合双生児だから泣ける、というわけではない。

わたしたちが彼らに心を支えられていることを知るからだ。

遠い国の出会うことのない人であろうと、彼らはわたしたちに温かい光を送りつづけてくれている。

結合双生児の物語ということでは、萩尾望都の「半神」を思い出さずにはいられない。

野田秀樹が戯曲化した演劇もあった。

どちらも魂にふれる作品だ。

表現としてはコメディの「ふたりにクギづけ」も深さにおいては「半神」と変わらない。

野田秀樹の「半神」もまた観たいなあ。

ファレリー兄弟と対談してくれたら最高だなあ。

想像が妄想にふくらんでいく。