ハンコを貰うことなく相続できる!?遺言書とは?

こんにちは😃
一応、司法書士の蒼井です^_^

前回私は、相続はハンコ(つまり、同意)だ!と豪語しました。

しかし、実は他の相続人のハンコ(同意)を貰わなくても相続をすることができる方法があるんです。

タイトルにもある通り遺言書です。

法律のプロはだいたい「いごんしょ」と発音します。
しかし、最近はお客さんに合わせて「ゆいごんしょ」と一般的な読み方で言うプロも少なくありません。

私はどちらかと言うと「いごんしょ」と言いたいのですが、お客さんの前では気を遣って「ゆいごんしょ」というようにしてます。

しかし、実際は忘れて「いごんしょ」と言ったりもよくします。

こんなふうにお客さんを混乱させるダメな司法書士なんです💦

さて、遺言書では相続させたい財産、相続させたい人、相続のさせ方などをいずれも明確に、かつ特定して書く必要があります。

そのようにきちんと書いて作れば、他の相続人のハンコ(同意)を貰うことなく、その人が財産を相続できます。

よくある文例としてはこんな感じですね。

「下記の不動産は妻の◯◯に相続させる」

「◯◯銀行 ◯◯支店 普通預金 口座番号
 ◯◯.,.については、長男である◯◯に相続さ 
 せる」

あるいはこんな文言でもオッケーですよ。

「私の死亡時に有する一切の財産については、 
 妻の◯◯に相続させる」

大事なのは財産や人、相続のさせ方などが明確かつ特定されていることなんです。

2つ目に挙げた文例は、具体的な財産の種類は書いてないですが、「一切の」と書いています。
文字通り一切=全部なので、これで明確だし特定されていると言えます。
誰が見ても判断を迷うことはありません。

よく自筆遺言の書き方文例などを見ると、個々の財産を難しそうに挙げていますが、必ずしもそうする必要はありません。

それと「あげる」「やる」「譲る」でもいいんですが、1番いいのは「相続させる」ですね。

「任せる」「管理させる」とかはアウトでしょうね。
結局、その人に財産を所有させるとまでは読み取れないですからね。

そういう遺言書は、手続きには使えず、結局ハンコ(同意)を貰って来いということになります。

で、この遺言書ですが、大きく分けると2種類あります。
私も仕事上はこの2種類しか取り扱ったことはありません。

もし、今から遺言書を書いてみようかなぁ?っていう人がいたら、この2つで考えてみたらいいと思います。

1 自筆証書遺言

2 公正証書遺言(遺言公正証書)

世の中にある遺言書のほとんどはこの↑2つでしょうね。

結構対照的なものでして、それぞれにメリットデメリットがあります。

まず、1の自筆証書遺言ですが、メリットは作ろうと思えば自分1人で、しかも無料で作れることです。

しかしこの反面、せっかく作ったのに結局役に立たなかったということにもなりやすいです。

まぁ、そうなった時、書いた本人ははもうこの世にはいないので、クソー!とか本人が思うことはないですけどね。

むしろ、貰えるはずだった相続人がそう思うかもしれません。

どういうリスクかと言うと、例えば書いた後に失くすかもしれませんし、せっかく書いて残してたのに、相続人に発見されないまま終わるかもしれません。

また、書き方には一定のルールがありまして、このルールを一つでも満たしてないと、その時点で法律上はただの紙切れです。

ルールとは、

全文自筆で書くこと。
パソコンで書いて、署名、捺印だけ直筆はNG
カーボン複写はOKとのことです。

書いた日付が明記されていること。
西暦でも和暦でもいいですが、年月日吉日はNG

書いた人の署名があること。

なんでもいいので本人の印鑑が押してあること。

印鑑は拇印(おや指で押す)でもいいです。

あっ、封は要件ではありません。
とうしてもしたかったら、してもいいですが、改ざんの恐れなんて普通はないですから、個人的にはしなくていいと思います。

封されていると、残された人からしたら開けてもいいのか?取扱いに悩みますからね。

法律上も、封された自筆遺言書は検認の時に初めて開けることになってますからね。

私もよく開けていいかどうか?聞かれますが、立場上開けて良いとは言えないので。

かと言って開けちゃっても無効にはなりません。
お客さん(相続人等)が勝手に開けるのは別に知ったこっちゃありません。

しかし、相談されたなら検認手続きで開けましょうというしかない。

また、上のルールを満たしてもいても、相続させたい財産や人、方法などが明確かつ特定されていなければ使えない遺言書になります。

近年法改正により、上のルールの一部少し緩和されました。

財産の記載についてはそれがわかる資料(例えば、通帳の口座番号が書いてあるページや、不動産なら登記簿謄本のコピー)で示した上、そのページに本人が署名、捺印してもオッケーというようになりました。

口座番号を一字書き間違えて、その部分が無効とか、そういうしょーもないことにならないようにという趣旨でしょうね。

このようにきちんとルールを満たして書かないと、亡くなった後、意図した通りにならなないんです。

そして、亡くなった後、遺言書の保管者において、家庭裁判所で検認手続きをしないと各種相続手続きに使えません。

多くの場合、遺言書で相続させることになっている相続人が保管者ですから、少しその人に負担をかけることにもなりますね。

そして、この検認の時に、相続人全員へ家庭裁判所からお知らせが行きます。

「何月何日、どこそこの家庭裁判所で、亡くなった◯◯の遺言書の検認をするから、来たかったら来れば?」
↑実際はこんなフランクな言い方ではありません

そこで仲の悪い相続人に出くわして、気まずい思いをするかもしれません。

あと遺言書の内容を良く思わない相続人からすると、イチャモンを付けやすいんですよ。

例えばこんな感じです。

遺言書の日付を見ると、亡父が施設に入所したちょっと前の日付だ。

その時点で父はすでに認知症を患っていて、1人で生活するのもままならない状態だった。

そんな状態の父が自らの意思で遺言書を書くなどできるはずがない。

普段から父の家によく行き来していた二男がうまいこと言って書かせたものだろう。
その証拠にほとんどの財産を二男が相続するという内容になっている。

従ってこの遺言書は父の意志が反映されたものとは言えない。無効だ!

みたいな感じです。

他には

この字は亡父の筆跡ではない。
他の誰かが偽造したものだろう。

とか1人で勝手に書けちゃう遺言書ですから、何とでも文句をつけれるんです。

他には誰かから偽造、変造、破棄、隠匿される危険性もあります。
ちなみに相続人の誰かがこれをやっちゃうと「欠格」と言って、相続人の資格を失います。
まぁ、見たことはないですけど。

こんな感じでいろんなリスクにさらされる遺言書ですが、シンプルな内容だったら、少し書き方を勉強して書いておくのはとてもいいことです。

実際、実務上でもよく見かけます。

私が見る限り、公正証書と半々くらいかなぁ?

多いのは「一切を誰々に〜」というのが多いですね。

あっ、さっき失くしちゃうリスクもあると言いましたが、これも最近法改正で、自筆証書遺言を法務局で保管してくれる制度も始まりましたのでこれを使えば安心ですね。

なおかつこの法務局の保管制度を使えば、検認も不要とのことです。

手数料も数千円だったと思います。
画期的な制度だと思います。
制度ができる前と比べて、だいぶリスクが減りました。

次は2の公正証書のメリット、デメリットです。

まず作るのにお金がかかるというのが、最大のデメリットですね。

普通の人が普通に、それほど複雑じゃない内容で作ると、だいたい15万円から25万円くらいはかかるんじゃないですかね?

その金額の内訳ですが、公証役場の公証人に払う手数料が5〜10万円程度。

そして、相談する司法書士とかの専門家に支払う報酬が10〜15万円程度。
別に自分で公証役場と連絡取り合って作ってもいいんですけど、公証人もそんな暇じゃないので、一般の法律をそんなに知らない人を一から相手にしている暇はないんです。

だから、専門家が間に入って調整するんですね。
だいたい司法書士、行政書士、弁護士、税理士あたりが多いんじゃないでしょうか?

あとは必要書類とか交通費とか郵送料等の実費が1万円くらいです。

もちろんケースにより変わりますよ。

遺言書を書く人の財産額が多いと公証人手数料も増えます。

このようにとにかく安くはないお金がかかるというのが、最大のデメリットですね。
でも他はこれといったデメリットはないです。

強いて言うなら、最後は証人2人を立ち合わせて、公証人と面談しないといけないのが、手間といえば手間かもですね。

片やメリットですが、お金を払う分、それなりのメリットがあります。

まず家庭裁判所の検認が不要です。

よって、遺言者が亡くなったらすぐに公正証書遺言を使って手続きを始めることができます。

仲の悪い、葬式にも呼んでない相続人が、遺言者が亡くなったことを知る前に手続きを終わらせてしまうこともあながち不可能ではないでしょう。

検認の場でバッタリ顔を合わせることもありません。

次に、無効になる可能性がかなり低い。

公証人と証人2人が関与してできた遺言書です。

自筆の遺言書みたいに、作った時は認知症だったとか、誰かが書かせたものだとか、筆跡が違う(そもそも公正証書遺言は、遺言者が内容を筆記しません)とかはほぼ言えないでしょう。

また、内容が不明確とか不特定ということもありません。
それは案の作成の段階で修正されます。

一言で言うと、遺言書の信用度が高いんですね。
本質的には遺言書が自筆か公正証書かで優劣はないんですが。

というわけで、お金と少しの手間以外にデメリットが全くないと言っていいですので、専門家に相談するとだいたい公正証書で書いておくことを勧められます。

結局、どちらがいいか?ということですが、しっかりしてない人でしたら、やはり依然として公正証書がいいですね。

こういう方面に自信があって、少し専門家に相談したら自分で書けるって人ならば自筆で書いて法務局で保管したら十分でしょうね。

ちなみに私が自分の遺言書を作るとしたら後者ですね。

皆さんも、自分に置き換えて考えてみてヤバそう(=ハンコ集めが難しくなりそう)なら作るなり、作って貰うなり考えた方がいいですね。

私の立場で言うと、遺言書の最大のメリットはハンコ(同意)を貰わなくても相続手続きができるということです。

だからやっぱり?相続とはハンコ(同意)なんです。

ハンコが貰えるかどうか?遺言書によってハンコ(同意)を回避できるかどうか?に相続はかかってますから。

最後まで読んで頂いてありがとうごさいました😄

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