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東京競馬場の少し高いところから馬を見ることがありました。下からの歓声罵声が不思議な響きで耳に届く。
眼の前には整備された蒼い芝と、伸びやかに広がる街、遠くに薄ら見える山々。見晴らしという点では良いところだった。

どうにも居心地の悪い私はパドックに逃げこんで レースのために生まれてきた馬を眺める

罪のないのに旬を作り上げられ、好き勝手にされるあなた達と何処かに逃げたいのに それはあなた達の望むことではないだろう
鍛えられた筋肉、美しい四肢、不自然に切り揃えられた たてがみ


馬は習性の動物と教えてもらったことがあるれど、その習性を人々が賭け事に利用していること、悲しく思う。美しさと聡明さの罰のように思えてしまう。

あなたたちの走りを 私はずっと上から眺めるの。
上に立つことってそんなに気持ちがいいかしらん。

下を見おろせるところより 空の広くみえるところにいたい
穏やかに風を浴びていたい
週末が終わり
私は今日も社会から逃れて家のベランダで心ゆくまで読書をするだけの日だった

武者小路実篤「棘まで美し」
私の敬愛する作家の一人です
ジョスリン・ゴドウィン著「キャルヒャーの世界図鑑」
アタナシウス・キルヒャーの著作群に残された図像が
まとめられていていい感じ


いつまでこの生活が続くかわからないけれど まだ先は長そうだなと感じる
人との関係性も懸命に生きているととても苦しく重く絶望してしまいそうになるけれど、ゆっくりと時間をかければその内形が変わってゆくのかもしれない

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