見出し画像

【#105】いつか訪れる 「ぼけ日和」

今回はまんがになりますが、非常に考えさせられる内容でした。

『大家さんと僕』『ぼくのお父さん』など話題作を生み出してきた著者が、認知症患者とその家族の日常を描いた! 

認知症の症状の進行具合を四季(春・夏・秋・冬)に分けて、それぞれの時期に認知症患者さんにどんな変化が起こり、介護者さんはどう対応したら良いのかがわかる構成。笑って、泣けて、不安がやわらぐ本です。


作者は矢部太郎さんです。カラテカというお笑いコンビを組んでいるお笑い芸人さんですね。
タッチの優しい絵で非常にほっこりする様な表紙とは裏腹に、中身は非常に濃いです。
認知症について扱っている内容で認知症の初期症状から末期までを春夏秋冬に例えて短編エピソードで語られています。

認知症患者さん特有の症状も患者さん自身の不安や辛い思いが溢れ出してきた結果、出てきてしまう症状なだけであって当然恨みや悪意があるわけではない。
でも、それを分かっていても家族の方々はどの様に対応すれば良いのか分からないところに認知症介護の辛さはあるのだと思います。
こういった認知症患者さんのご家族であれば誰もが経験するであろう境遇や悩み、その対処法に至るまでを、まんがならではの伝わりやすい内容で教えてくれます。

僕の両親はお陰様で元気にしてくれていますし、身近に認知症になった方がいるわけでもありません。
でも、認知症は遺伝の要素が強いと言われていて、親戚の中には認知症になった人がいるので将来、この本で知ったことが役に立つことになる可能性は十分にあり得ます。

この本を読んで思ったことは、たとえ認知症になっても「その人はその人のまま」なんだなということです。
良く認知症になってしまった人の事をあたかも認知症になる前と比べて違う人になってしまったかのように話す人がいます。
でも、そうではない。
表現方法が変わるだけでその人の記憶は残っているし、人格も変わっていない。
でも、やはり感情表現が不自由になるストレスで感情のコントロールが出来なくなってしまう事から表現方法が変わってしまう。
でも、これは病気に対する理解とコミュニケーションで解決できる部分は大きいものなんだなと感じました。

英語では認知症のことを”long good bye”と言うそうです。
「長いお別れ」です。
作中、仲良し老夫婦が「ゆっくりさよならしていこうなぁ」とつぶやくシーンは思わず涙腺が緩みます。

大切な人と時間をかけてゆっくりお別れが出来るのであれば、例えばある日突然交通事故などでお別れする事になるよりまだ寂しくないのかな、とか色々想像を巡らせました。

実際に認知症患者さんご家族からするとそんな簡単な事ではないのだと思います。
当事者にしかわかり得ない苦労もたくさんあるでしょう。
でも、相手の考えに寄り添うこと、理解しようとすることの大切さ。
その上でコミュニケーションを取るという本質的な部分に関しては変わらないのかなとこの本を読んで思えました。

誰にとっても他人事ではない内容を非常に優しいタッチの絵と内容で伝えてくれます。

是非、ご一読ください!

ではまた!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?