2015年5月18日

【月曜日と女子大生】

S帆は先週、先々週と授業を欠席した。始業の数分前、私のところへやって来て「どうすればいいか」聞く。「今日からやればいい」と言うと、頬を緩めて席に戻った。

その席からS帆が、「タバコ吸うんですか?」と私に聞いた。私はあせって、「ごめん!臭うよね?」と返したが、S帆は私の緊張にためらうことなく、「いや、そういうイメージがないから」と話し、さらに銘柄を問い、「私も吸ってみたいと思うけど、、」とつづけた。

間もなく、始業のチャイムが鳴った。アルバースの『Homage to the Square』を解体し、再構成するのがしばらくの課題。平たく言うと、大きさの異なる4つの正方形を、自分の好きな色の組み合わせに変える、というもの。

3限と4限の間の10分休み。私は背中で「吸ってきます」とS帆に告げ、食堂脇の喫煙所に行った。ガラスの重い引き戸を開くと、先客が一名。来校者札を首からぶら下げた恰幅のいい女性と、変な目の合い方をした。直後、「ここ(喫煙所)って前からありました?」と聞かれ、妙にあせって、「私は非常勤で、来始めた時からはあった」ということを素早く伝えた。

話していると、彼女はここの卒業生で、私の非常勤先の学科の一期生であることがわかった。休業中につき、母校の恩師のもとに来ているのだそう。学科は今年、メディアなんたらへと名称を変えた。

喫煙所の彼女とは、共通っぽい話題にあふれながらも、やっぱり、まったくの距離感があった。でもこんな気もして、「またお会いしそうですね」と告げ、私は足早にここを去った。

4限の合図とともに教室にすべり込み、板書して、席を回って、終業のチャイムを聞いた。教卓に戻ると、クロッキー帳の上にアメ玉がひとつ。席近くのY莉に「くれた?」と聞くと、Y莉は首を横に振り、S帆の席を指さした。

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