-ワルシャワ7/20-(第18回ショパン国際ピアノコンクール予備予選/角野隼斗)
慄える細い指が、白い鍵盤をなぞる。角野隼斗がクラシックを弾くときの厳かな儀式。静かに、静かに。彼がこんなに緊張しているのを見たのは初めてかもしれない。
全神経を指先に集中させてショパンへの募る想いをぽつりぽつりと語り始めた。ノクターンOp.48-1がホールに微かなこだまを響かせる。静かに燃える音が灯る。青白い炎。この音だ。この音をずっと待っていた。どんなに緊張していても、紛れもなく彼の音色だとわかった。どうか、この音がショパンに届きますようにと、祈るような気持ちで聴き入った