海外学振ポスドクのドイツ保険加入

 ドイツでは日本と同じように国民皆保険の考え方が根付いているようです。つまり、ドイツに長期で滞在するなら必然的に保険に加入する必要があります。ドイツの保険は大きく2種類に分かれていて、一つは法定健康保険、もう一つは民間健康保険です。ポスドクは、基本的に法定健康保険に加入することになると思われるので、ここから先は、法定健康保険の話をしていきます。大学や研究所と雇用契約のあるポスドクの場合、契約先との手続きの中で法定健康保険に加入することになると思います。僕自身は、日本から海外学振というフェローシップを持ってきて滞在させてもらっているので、この記事では、そのような雇用契約のないポスドクの保険加入について書きます。
 僕たちは、言わば自営業のようなものなので、保険にも自分で加入する必要があります。ドイツ法定健康保険の面白いところですが、法定健康保険という名前なのにも関わらず、複数ある保険会社から選ぶ必要があります。僕はマックスプランクという研究所に現在滞在しています。斡旋を防ぐためだと思いますが、マックスプランクでは職員の方が特定の保険会社を薦めることが禁じられています。したがって、自分で保険会社を選ばなければいけないのですが、そもそもどんな保険会社があるのかもわからない中で選択するのは非常に難しいです。僕は、所属先の秘書の方に研究室の皆さんがどの保険に加入しているのかを聞きました。ある研究室がどの保険会社を選んでいるかはだいたい決まっている気がしますので、素直に聞いてみると良いと思います。それで、研究室の方々が TK (Techniker Krankenkasse) という会社を利用しているというので、そこに決めました。後々分かったのですが、TKは研究者界隈の中ではかなりメジャーな会社のようです。
 TKへの加入手続きはインターネットで始めることもできるのですが、結局、その後のやりとりは書類ベースになります。僕は早めにやらないといけないと思って日本にいるときからTKとのやりとりを始めたのですが、あまりこれは良くないと思います。日本〜ドイツ間での書類のやり取りは時間がかかりますし、加入手続きの最終段階でドイツでの住所や保険料の引き落とし口座の設定など、ドイツに行かないと書けない項目が出てきます。これらの項目が書けなかったので、結局現地に行ってからの加入になりました。さらに、書類上では4月1日から加入したいと書いていたのにその時点で引き落とし口座が設定されていなかったからか、延滞料金を10€ほど徴収されてしまいました。
 ですので、「現地に行ってからTKのオフィスに直接出向き、事情を説明して加入手続きをする」のが良いと思います。これがいちばん早くて、かつ確実でしょう。このやり方の性質上、ドイツに着いた時点では法定保険に加入できていないので、日本国内の海外旅行保険に長めに加入しておくのがよいと思います。僕はとりあえずドイツ到着から1ヶ月の期間カバーできるようにしておきました。滞在先の街にTKのオフィスがあれば話が早いのですが、そこそこの規模の街には1つはあるのではないでしょうか。もし無いようであれば、近郊の大都市に行けばまず間違いなくあるはずです。幸い、テュービンゲンには1つありました。スタッフの方は英語が堪能で、ドイツ語がわからなくても問題ありませんでした。手続きの中で色々と必要書類が出てきますが、ビザ申請や受入研究機関とのやり取りの中で使った書類のコピーを取っておけば対応できると思います。あと、住民登録をした際にもらったであろう証明書も必要になります。一連の手続きが終わると、2週間後くらいに郵便でカード型の保険証が届きます。
 法定健康保険の保険料は、所得に応じて決まります。割合は保険会社によって異なるようです。TKの場合について、僕の実例を公開します。ドイツでは海外学振の給与は年間 627万8千円です。2024年2月のレートでユーロ換算すると、年間 39,200 €(約 3,266 €/月)になります。これが海外学振の採用証明書に記載されており、保険料はこの金額を元に計算されます。給与は円建てで振り込まれるので、円安が進むと相対的に保険料は高くなります。健康保険料 (Krankenversicherung) は月給与の 14%, 追加拠出 (TK-Zusatzbeitrag) が 1.2%, そして23歳以上の子供のいない会員向け介護保険料 (Pflegeversicherung für kinderlose Mitglieder ab 23 Jahren) が 4.0% かかるので、合わせて月給与に対し 19.2 % を支払うことになり、現在ひと月 627.26 € 支払っています。結構高いですね。まだ医者にかかってないので、通院した際の保険証の使い方などはわかりませんが、機会があれば書いてみたいと思います。


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