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スウィフト『召使心得』――見ようとする精神に「風刺」が宿るのだ

 最近、良く一人で籠もって考えることがある。その考えていることの一つに「風刺」という言葉が余りにも気前よく使われすぎやしないか、ということである。その用法を、ウィトゲンシュタインに習って、じっと観察していると、皆が皆、「風刺」というものを、相手の対象を滑稽に見せて笑うものを刺しているように思える。それは、僕が「風刺」と思うものと何か違うようなものがしていて、その違いとは何かを考えざるを得なかった。  そういうわけで、僕は図書館に向かって一冊の本を手にすることにした。スウィフ

『ドン・キホーテ』あるいはメディアの狂気と「アンチ自己啓発小説」

 イタロ・カルヴィーノは、名著である『なぜ古典を読むのか』という本で、古典というのは「今読み返しているのですが……」という恥ずかしさを持つ本であると述べている。  と、同時に「読み返す」ことで、また同時に豊かな解釈が開かれる、と言ったことを述べている。  そういう類の本というのは、自分にとっては『ドン・キホーテ』であり、「今読み返している」と言いながら、つい最近、こっそり読んだ本でもある。  『ドン・キホーテ』は、一般的には近代小説の走りと呼ばれていて、さまざまな作家や研究