中根すあまの脳みその237

予想外の朝だった。
比較的時間に余裕があることを認めて、玄関のドアに手をかける。

外は別世界。
怒りをぶつけるように降る雨と、思い出したくない過去を振り払うように吹く風が、さながら暴力のようだ。嫌な予感をビシビシ感じながら、傘を開く。瞬間、傘の形が変わる。これでは変な形をした意味のない物体だ。濡れたサドルそのままに自転車に跨る。仕方がないから強行突破、7分間の辛抱だ。丸腰で漕ぐペダル、1秒1秒それはもう御丁寧に致命傷を追わせてくる雨風。前が見れない。真っ直ぐが保てない。コンタクトの中にまで雨粒が侵入してきて、瞬きを繰り返す。ここで透明のレンズを吐き出してしまえば、今日いちにちをどう過ごせというのか。それでも瞬きをせずにはいられない。鼻や口を塞がれているわけではないのに、ごぼごぼと溺れているみたいだ。前髪から滴る雨粒が、書いたはずの眉毛を消し去っていく。まるで砂浜に描いたふざけた絵が波に攫われていくように。
駅に着く。同時に走り去っていく、私を乗せたはずの電車。なんのギャグだろうか。
驚く程に満身創痍だ。
これでは電車の座席にも座れないだろう。
なんといういちにちの始まりだろう。
これで普通通りに過ごせというのだ。
ちゃんちゃらおかしいぜ。

みんながこんな朝を過ごしているのだ。
今日は頑張らなくても良い。
私が許そう。

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