海外で鯉は本当に悪者??

日本の河川で外来種が問題になって久しいですが、アメリカザリガニやブラックバスの故郷であるアメリカでは、日本から輸入された鯉が外来種問題として取り上げられているのはご存知でしょうか。

とはいっても、日本の川で普通に見られる鯉というのは日本在来の鯉ではなく、元々は大陸から人為的に輸入されたものです。

中国から渡来した日本の鯉については、紀元一世紀のころ、景行天皇が鯉を池に放して飼った記録が残されている。

紀元一世紀と言うと、日本では縄文時代後半あたりであると考えることができます。

このように、はるか昔から日本人と鯉はうまくやってきたのです。

このため、Jordan and Fowler (1903)は、

『日本のコイは全て中国から移植されたものである。』

と考えていたようです。

しかし、

古琵琶湖層から
の咽頭歯化石の発見(琵琶湖自然史研究会, 1986) や, 縄文遺跡からの咽頭歯( 宮本・中島, 2006)の出土と併せて,日本には有史以前から在 来のコイが分布し, 現在もそれに由来するコイが 生息することの明白な証拠となっている.
2003年頃からコイヘルペスによるコイの斃死が問題となりましたが、この際の調査により、在来コイと外来コイがいることが明らかになりました。在来型と外来型は研究が進めば別種となるほど遺伝的には違いがあるとされています。

現在では琵琶湖など一部の水系でのみ日本在来の鯉は生存しているようです。

ということで、アメリカで問題になっている鯉も、実は日本原産の鯉ではないと思いつつも、そんなことは蛇足でしょう。

大陸由来との鯉とも我々日本人は、何世紀にも渡って上手くやってきたのだから同胞も同然です。

なので、僕も少しはアメリカで問題になっているコイについて思いを馳せてみようと思った次第ですね。

1・Common carp are one of the most damaging aquatic invasive species due to its wide distribution and severe impacts in shallow lakes and wetlands.

訳)コイは、湖の表層や湿地といった水系に対して広範に重大な影響を及ぼす最も侵略的な種である。


2・Their feeding disrupts shallowly rooted plants muddying the water.

訳)コイは、摂食の際に、沿岸部の泥中の水生植物の根を搔きまわす。


3・They release phosphorus that increases algae abundance.

訳)コイはリンを放出するので、アオコが発生する。(富栄養化)


4・Carp induced declines in water quality causes declines of aquatic plants needed by waterfowl and fish.

訳)コイは、水質悪化を導き、水鳥や魚に必要とされる水生植物の減少を引き起こす。


うーん。

確かにコイは主に底性の有機物を食べるために、泥を攪拌します。

で、その過程で水草を搔きまわすってことは勿論あると思います。

そして、その水草が減ることで、本来その水草に卵を産んで繁殖していた魚も減ることになります。

となると、生物多様性が大幅に減るわけです。

実際、鯉が沢山いる湖だと、鯉しかいないってことが多いです。

バス釣りの皆さん気をつけましょう。

馬鹿でかい鯉がいる池にはバスは大抵いません。

なるほど。

これは深刻な問題です。

ですがそれが本当に環境破壊クラスのものかと言うと如何なものかと思うんですよね...

2014年のミネソタ大学ツインシティー校の、Przemyslaw G. Bajer氏の研究によると、

・○は、コイを除去した後、●は、コイを除去する前を示しています。

・TPは、Total Phosphorus(リンの全量)を示します。

・縦軸はリンの全量、横軸は日数を表しています。

このグラフを見るに、別に変わっていませんよね...

なので根拠の3に関してはうーんって感じなんですよね。

縦軸は植物の植生の密度、横軸はコイを除去する前と除去した後を表しています。

これを見たところ、確かにコイを除去することで、植生は大幅に改善するようです。

植生というのは、植物の生物多様性みたいなもので、これが高いと、より多くの種類の植物が生えていることになります。

すると、その植物を利用する生き物もまた多くなるって話です。

今回の研究に関して氏は、

We found that while carp removal had a positive effect on the density of aquatic vegetation and early season water clarity, it seemingly had little or no effect on phosphorus concentration.

訳)今回の研究で、コイの除去は、水生植物の植生のと、夏前のシーズンの水質において良い結果をもたらすことがわかった。これは一見、リン酸濃度に対しては何も関係がないように思える。

the role of carp in structuring phosphorus budgets may be relatively minor as compared to that of abiotic internal loading. 

訳)リン循環構造中のコイの役割は、非生物適要因と比較してあまり重要なポジションであるわけでもなさそうである。

と述べています。

このことからも余計に3は果たしてどうか...ってことが伺えるんですよね、、、

ただし、コイは水底の有機物を好んで食べる代わりに、非常に糞が多い生き物です。

そして糞の中には勿論リンが含まれています。

水草、特に湿地の植物にとって過度な栄養は禁物です。

不思議なことに、湿地の植物は貧栄養の環境で生育できるように進化してきたので、栄養分が豊富にあると、逆に枯れてしまうらしいです。

僕の学校の湿地を専門にしている先生が言っていました。

なので、コイの増殖が、リンの増加に影響しているのかな?とは思ったのですが、今回の研究の結果を見ると、特に関係ないようですね。


この研究から考えるに僕はコイが甚大な被害をもたらす侵略者であるとは言いにくいものの、植生に対して大きな影響を与えることは事実です。

おそらくこういった問題も元々はモラルのない一部の観賞魚飼育者が引き起こしたことだと思われます。

国によらず、勝手に逃がすってことは絶対に良くないです。












この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?