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Livongoロスの君へ       DarioHealthの企業分析

Twitterでのnoteネタのアンケートにご協力いただいた皆様、ありがとうございます。バイオ、ヘルスケア関連銘柄を分析しているしゅー(@SU_pharma)です。
アンケート前はCRISPR銘柄 ($CRSP, $NTLA, $BEAM, $EDIT)を書く気満々だったのですが、想定と異なりDarioHealth (ティッカーシンボル DRIO)が1位になってしまったため、今回はDarioHealthについてnoteを書いてみることになりました。

Disclaimer:
株式投資は自己責任でお願い致します。
なお、ぼくは製薬業界についてはある程度の知識を有していますが、医療機器分野は専門からやや外れてしまいますので、その点を考慮いただけますと幸いです

mini Livongoとも呼ばれるDarioHealthですが、LivongoはTeladocに買収され、すでにその株はTeladocに変わってしまったかと思います。
ヘルスケア領域において、デジタルセラピューティクス(DTx)関連は今後もビジネスの伸長が期待できる分野ですので、興味のある方も多いかと思います。Livongoロスの方にとっても投資対象になるかもしれません。それでは、会社の概要から見ていきましょう!

1. 会社概要

DarioHealthは2011年にイスラエルで設立された会社で、メインのビジネスは糖尿病患者ケアでDTxに強みを持つ会社になります。そのほか、肥満、高血圧や骨格筋の痛み(首、腰痛など)のサービスも展開しています。
ここだけの情報だと、まったくLivongoと同様のサービスをしているように思われますが、競合他社との比較としては、データが連続的なものとしてAIで予測されるところが面白い特色です。
個人的には血糖測定器についてはLivongoよりも良いものを作っていると感じています。

ただし、合併前のLivongoと比べるととても小さい会社で現在のMarket Capは約$400M, 2019年の売上はたったの$7.5mと小さな会社です。小さな会社なら、ものすごい成長なのではないかと思いましたが、ここ数年は成長が低いんです。この理由はビジネスをWalmartなどに卸すBtoCビジネスをしていたことに起因しているようです。
このあとのビジネスモデルの項目でお話しますが、ビジネスモデルを変革することで今後の成長が大きくなる可能性を秘めています。

CEOのErez RaphaelさんはNokiaから2014年にDarioに転職し、2018年からCEOをしているようです。他のCEOと比べると経歴はそこまで華々しい感じではなさそうです。

2. ビジネスモデル

皆様ご存じのように、LivongoはBtoBのビジネスモデルを採用しており、主に雇用主と契約をし、その会社の社員がLivongoのサービスを使用できる形を採用しています。
Teladocに買収される前のinvestor向け資料を見てみますと、2020.Q2においては、Livongoの売上成長率(YoY)は125%でした。
多くの方がLinvogoに投資をしていた理由は、DTxの市場の成長とLivongoの今後の成長期待が大きかったからだと思います。

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一方で、DarioHealthは当初BtoCのビジネスモデルを中心にしていました。WalmartなどにDarioHealthの機器を置いてもらい、そこで購入、必要であればSaaSのサービスなどがついたプレミアムプランへというビジネスでした。
売上高を見てみると、2018から2019ではフラット、2020.Q3までのTTMを見てもほぼフラットで、Livongoの驚異的な成長率からすると、小さい会社なのに伸びが悪い結果でした。

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しかし、ここ2年ぐらいでBtoBtoCモデルへの展開を図っており、2つ目のBのHealth Plan(健康保険プラン:雇用主が従業員等に提供するヘルスケア給付プラン,メディケア・メディケイドなど)、雇用者、Provider(病院などの医療サービス提供者)を介してSaas, Paasモデルを提供する形になりつつあります。
直近の進捗としては、Vitality Groupという自己保険の雇用主市場を対象としている会社と契約を結びました。世界24の市場で2000万人が使用している大きなマーケットを有する会社です。さらに2020年Q3には100万人以上の会員を管理している人口医療管理プログラムの全米トッププロバイダーであるHMC HealthWorksとの提携も発表しました。
Conference Callでは2021年前半に複数の契約を発表する予定と言っており、B2B2Cモデルへの移行がスムーズに行えることができるかが、今後のDario Healthの成長の鍵と言えるでしょう。
現状、このビジネスモデルの変更により、追加の費用(Saasチーム強化など)がかかっていますが、営業利益マージンの大幅な上昇が期待できるようです。
B2B2Cモデルでは、最初からプレミアムプランを提示てきることも大きいようで、将来的には営業利益マージン70%を目指すようです。
ぼくがこの会社の売上の成長を見て、(Livongoをイメージしていたので、すごいデータに慣れすぎていたかもしれませんが)かなり失望しましたが、このビジネスモデルの変革がDarioHealthの今後を占うと言っても過言ではないでしょう。

TeladocのJP Morgan Health Conferenceのデータによると、Livongoの糖尿病、高血圧プログラムの利用者が約50万人で、ざっくり言うと、糖尿病/高血圧の領域ではLivongoの1/10の規模と考えられます。(ただLinvongoは今後TeladocのPlatformを使ってすごい勢いで利用者数を増やしていくでしょう…)
Livongoでさえ、マーケットのほんの一部しかリーチできていないことは明白であり、市場はとても広い、かつDTxはヘルスケア分野で最も流行りの分野ですので、会社の成長性を期待できるマーケットにいるということは言えるかと思います。

また、2020年にUprightという骨格筋痛のヘルスケアアプリを提供している会社を$31Mで買収しました。これまで69,400人であったDarioHealthの利用者が一気に159,400人に増えるようです。


骨格筋痛というとイメージが湧きにくいと思いますが、主なものは腰痛や肩・首の痛みなどとなります。成人の50%はこれらの痛みを持っていると(少なくともUSでは)言われているようで、この分野も生活習慣病と同様、$213Bととても大きなマーケットです。
DarioHealthにとってはかなり大きな買収となりましたが、このUprightを買収した理由としては2つ考えられ、一つはプラットフォームとしてより他の領域へ拡充すること、そしてもう一つはDarioHealthが提供している糖尿病、高血圧分野と骨格筋痛は併存することも多いという理由もあるようです。今後もM&Aを含めて成長軌道に乗せる施策を取るでしょう。

3. 血糖測定器

では、ビジネスの要となる血糖測定器について見てみましょう。
ぼくはここの血糖測定器がとても大好きで、最も大きな差別化ポイントになっているかと思います。

血糖測定機器はMyDarioという名前で、ポケットサイズのデバイスにすべてのものが入っています。これまでの血糖測定機器は、もちろん血糖を測定するデバイスがあったわけですが、MyDarioではスマホに血糖を測定する小さなデバイスを挿入し、そこにストリップを入れて血糖を測定するという非常にユニークなものとなっています。つまり、スマホが血糖測定機器になっているんですね。
そのような仕様から、すぐにスマホにデータが飛びクラウドでデータが管理されることになります。
血糖測定機器を持ち歩く必要がなく、そのため、測定器の充電器等も必要ないので大きな差別ポイントになるかと思います。
Livongoの機器ものも含めて、もし自分が使うとすると必ずMyDarioを使うでしょうね。

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また測定値が低血糖の場合には家族にGPSでどこにいるかまで即座に連絡がいったり、医師とデータを共有することも可能なようです。血糖値のみならず、食べ物や運動、治療薬の情報も入れることができ、ポータルサイトで糖尿病患者さんの生活全般をモニターもできます。

これらの統合されたプラットフォームは患者さんに評価も非常に良いようで、NPS77, AppScoreの評価4.9/5 starsという結果も得られています。

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ぼくは今回のような血糖測定器などは会社の宣伝よりも、1型糖尿病患者さんが様々な使用感をレポートしているものを見るのが好きです。
おすすめは、1型糖尿病患者さんのDanicaさんのYouTubeを見ていただけると様々な血糖測定器を使用した経験から、この機器の素の評価がわかるかと思います。
全般的に高評価であるものの、ストリップの部分の蓋が改善点だ、ということも言っていて面白いです。

このように血糖測定機器はLivongoと比べても優位なものが完成している印象を受けます。Livongoほど積極的ではないにしろ、コールセンターに相談をすることも可能なようです。
この良い測定器をB2B2Cのサービスへ展開できれば、大きな成長が期待できるのではないかと個人的には考えています。

なお、最近米株村の皆さまにおいては、Senseonics (ティッカーシンボル:SENS)に投資をされている方も多いかと思います。
SenseonicsのようなCGM(continuous glucose monitoring, 持続皮下グルコース測定)機器の方が圧倒的に簡便で指から血を出す必要がない機器もあります。しかし、CGMの機器は高価なためすべての糖尿病患者さんに使用できず、インスリンを使用している低血糖リスクの高いような極一部の患者さんに使われていることを理解する必要があります。
CGMに比べると、SMBG(自己血糖測定)機器はやや古臭いように見えるかもしれませんが、大多数の患者さんがこちらを使用しており、このマーケットは小さくなるどころか糖尿病患者さんの増加や高齢化に伴い、ますます大きくなるマーケットと言えることができます。

4. 業績とバリュエーション

簡単にYahoo FinanceからP/Sの一般的に使用されている値をとりだしたものが以下になります。

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びっくりするぐらい売上高が増えていない…
ここがLivongoと全く異なるところかと思います。
Uprightの買収分だけでもかなり売上が伸びるかと思いますが、今後は契約を結んだ会社の数やその進捗がなければ、株価を正当化できないことになりかねないかもしれません。

一方、バリュエーションも確認しておきましょう。

株価:$28
株価の推移:年初の$15.41から約80%プラス
PSR : 56.04

この数字だけを見ると割高感があるかもしれません。ただし、希望としては、アナリスト予想を見ると、2021年度の売上高が$24.76MとTTMの3倍程度まで上昇する予想となっており、この値でPSRを計算すると、16.5まで低下します。
ここまで株価が織り込まれていると考えてもよさそうです。

株価の推移としては、今週の下落はあったものの、今年に入ってからはかなり順調に推移していると考えてよいと思います。

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5. まとめ

それでは、DarioHealthのまとめに入りたいと思います。

1. ヘルスケア業界のDTxという成長性のある業界にいたもののB2Cビジネスで成長が鈍化していた
2. B2B2Cビジネスの転換へ現在資源を注力しており、少しずつ契約も取れてきている
3. メインの血糖測定器およびそのプラットフォームはかなり良いものに仕上がっており、competitorとの差別化ができそう
4. PSRは高めだが、今後のビジネスモデルの転換を見越した株価となっており、2021年のビジネスがアナリスト予想通りに展開できれば、そこまで割高ではない印象

以上となります。
ぼくはこのDarioHealthをどのように考えているかというと、Livongoの二の舞ではありませんが、将来的にはどこかに買収される可能性が高いのではないかと感じました。
Eli LillyとLivongoが提携したり、Novo Nordiskとglookoが提携したりと、インスリンを作っている会社やその他糖尿病に関わる製薬会社も各社DTxに力を入れています。
そのため、Teladocのような遠隔医療の会社もあり得ますが、製薬会社に買収される可能性もあるかもしれないと妄想しました。

ちなみに、この記事を書くために少額でありますが、$DRIO を2月15日に購入してみましたが、大きな下げに見舞われて、絶賛損失がでている状況です🤣

本記事はすべて無料ですが、価値を感じていただけた際にはサポートいただけますと、次の記事を書くモチベーションになります。

それでは、今回の記事はここまでにしたいと思います。
Twitter @SU_pharmaもフォローいただけますと幸いです。

では、次の記事でまたお会いしましょう!

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