「過去未来報知社」第1話・第31回
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☆連載内・クリスマスイベントです(第29回~)
#Xmas2014
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>>第30回
https://note.mu/su_h/n/n8161d067a17a
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<<第1回
https://note.mu/su_h/n/n80b1bc94e9af?magazine_key=mbb6ba54825ac
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軽やかな鈴の音が響いている。
きらきらしい灯りの中、人々の賑やかな声が響く。
「ケーキ! クリスマスケーキはいかがですか!」
「聖なる夜にはチキン! ローストチキンいかがっすか!」
「いや、いっそここは和風で! 和風クリスマスケーキ風茶碗蒸しいかがですか?」
「なんですか、そのクリスマス茶碗蒸しって」
声を張り上げる隣の店員に笑美は呆れた声を上げる。
「だってうち、和風お惣菜店だから」
ひょろり、とした容貌が祖父にそっくりな三代目サンタが答える。
ちなみに名前も「三太」である。ただの偶然だが。
「別にクリスマスなら、洋風お惣菜作ってもいいのに」
「いやぁ、付け焼刃にやっても勘太チキンとかには勝てないモンで。
こうして商店街中がクリスマス気分なところに、ちょっと箸休め的な雰囲気で」
篠原惣菜店は、三隠居のサンタの店である。
「肉じゃが」や「やつがしらの煮物」などスタンダードなところから、
「チョコレート餃子」「ロマネスク味噌煮込み」「あんポテト」「トロシチュー」等
名前を聞いただけではどうにも食指が動きそうもない物までが並んでいる。
ちなみにスタンダードな惣菜はサンタが監修、
けったな惣菜は三代目制作とのこと。
「それより、もっとお客さんを引っ張ってきてよ。
折角、そんな格好してるんだから」
「そもそも、私が、なんでここの客引きをしているんですか!」
「客引きじゃないよ。妖怪をはっているんでしょ?」
篠原惣菜店は商店街の入り口にある。
六合町商店街は、ぐるっと駅を囲んで円を描いている。
円の外周は川に囲まれており、対岸へかかった橋を除いて出る道はない。
そこで、橋の袂には慶太が陣取り、
笑美は入り口の篠原商店で人の出入りをはることにしたのだが……。
「なんでこんなに人がいるんですか!」
道を埋め尽くす大人数に、笑美は叫び声をあげた。
普段はあれだけ換算としているのに、いきなりのこの大混雑である。
「ほら、橋向こうの丘にでっかい木が立ってるでしょ」
「小さい神社のご神木、ですよね。
なんか、工事中のブルーシートがかかってましたけど……」
「あれがね、ちょっと見物なんだよ」
「見物?」
「あ、いらっしゃい!」
訪れた客の対応を始める三太。笑美は丘の先を見つめる。
暮れ始めた冬の空に、青いビニールシートが揺らめいている。
「見物、ねぇ」
「お、ちゃんと仕事、してるね」
声に振り返ると、若詐欺が立っていた。
「それにしても、なんだい、その格好は」
「あなたに言われる筋合いはないと思いますが」
真っ赤なスーツに白いファーを肩にかけ、
隣には、ミニスカートのサンタコスチュームを来た女性を連れている。
若詐欺は自分の身を見下ろす。
「季節感を取り入れた、ナイスな格好だと思うけどなぁ」
「年齢、考えてください」
「そういう君は、悲しいほどにマッチしているね」
「余計なお世話です!」
ちなみに笑美は、りくもんクリスマスVer.を着用中である。
これは勿論、東谷から「ちゃんと市の宣伝もしてくるんだよ~」ということで
押し付けられたものである。
(こんな予算あるなら、給料上げるとか、せめてクリスマスケーキぐらい
役場で食べさせてくれるとか……!)
周囲のバイトの女の子のクリスマス・サンタ衣装を見ながら悲しくなってきたのは
絶対にこいつらには言わない! と心に決めた笑美だった。
>>第32回
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