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「過去未来報知社」第1話・第46回

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>>第45回
(はじめから読む)<<第1回
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 殆ど欠けた月が空の真ん中で輝いている。
 公園のブランコに座り、慶太はコートの襟を立てた。
 慶太の膝の上で、黒ゴマ灰猫がニャアと鳴く。
「この目で見るまでは信じられなかったが、
 本当に……なんだなぁ」
 呟いた口から、白い息が空に昇っていく。
 喉を撫でられた黒ゴマ灰猫が、ゴロゴロと喉を鳴らした。
「……俺は、本当に……やるのか?」
 黒ゴマ灰猫が、ふい、と慶太を見上げる。
 金色の目に見つめられ、慶太はふう、と息を吐く。
「分かってるよ。約束は、守る」
 安心したように黒ゴマ灰猫は再び目を閉じ、慶太の膝に頬をこすりつけた。
「毒を食らわば皿まで……か。
 まともな人生じゃなかったとは思うが、ここまでになるとはなぁ」
 遠くで猫の鳴き声が聞こえる。
 黒ゴマ灰猫はピン、と耳だけを動かす。
「……ところで、お前はどっちの猫なんだよ。
 こっちか、あっちか」
 猫は応えない。慶太は宙を仰いだ。
「ま、いっか」
 消えそうに細い月を見上げる。 
 月が慶太の目に映る。
「次の、満月か」
 いつの間にか、数匹の猫が慶太の周りに集まっている。
 毛の色も目の色も様々な猫たちは、みな月を見上げていた。

>>第47回
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