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「過去未来報知社」第1話・第78回

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>>第77回

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<<第1回
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 今なら分かる。
 母は私の防波堤となって、ソレからの攻撃を受けていたのだ。
 守るものが無くなり、素でソレを受けたときの衝撃は、
 言葉で語りつくせるものではなかった。
 実害として何をされているわけでもない。
 それどころか「金銭」という形で送られているため、 
 ソレはソレで一般的に見て価値がある。
 行為に明確な「異常性」を発見できない。
 金額も、お小遣い程度のものだ。
 しかし、それが毎月、来る。
 いらない、と言ってもっ来る。
 受け取り拒否をしても、来る。
 転居をしても、なぜか届く。
 友達の家に同居させてもらっても、届く。
 ついにはネットカフェにも届くようになった。
 
 私は壊れた。

 私が高嶋小宵である限り、この化け物はついてくる。
 もう、高嶋小宵を辞めるしかない。
 高嶋小宵の過去を抹消するしかない。
 社会的な「過去」を塗り替えるのは、思っていたよりも簡単だった。

 そして私は「右輪瓜笑美」が応募書類を送っていた六合町の採用試験を受け、
 こうしてここに逃げてきたのだった。
「右輪瓜笑美」に過去を売る何があったのかは、私は知らない。
 応募書類を送った後、過去をなぜ売ったのか。
 しかし、あの「化け物」以上の脅威がこの世に存在するとは
 私は思えなかったのだ。

 しかし、アレはやってきた。
 家族を捨て、家を捨て、過去を捨て、自分まで捨てて逃げてきた私の前に。
 アレから逃れる術は、もうないのか。
 私は絶望的な目で、目の前で静かに話を聞く男を見つめた。

>>第79回

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