「過去未来報知社」第1話・第24回
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>>第23回
(はじめから読む)<<第1回
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「住民の方から役所に相談がきているんですよ。
大家さんが……入江さんが人生相談をしてくれないって」
「俺の仕事はこの六合荘の大家だし、人生相談なんか受けてないが」
「ほら、あれですよ。過去未来報知社のお仕事ですよ」
すげない大家にネコが助け舟を出す。
「そう、それです。あなたが仕事をしてくれないと、
自分の仕事にならないって、東谷課長が」
「なんだ、あのオッサンの下っ端か」
「……なんでも見通せるんじゃないんですか」
怪訝な顔をする笑美だが"りくもん"の中からでは大家には見えていないだろう。
「お前、本当に過去未来報知社が過去や未来を見られると思ってるのか?」
笑美よりも更に怪訝な顔で大家がねめつける。
「……あ、いや。そりゃ、思っちゃいないけど、
本人がそれを言うのもどうかと……」
「例えばなぁ」
大家は宙を仰ぎ顎をひと撫ですると、やおら膝を打った。
「見えた! お前はいつか死ぬ!」
「な、なんですってぇ! ……って、当たり前じゃないですか!」
「つまりは、そういうことだ」
すっ、とテンションを下げると、大家は黒灰ゴマ猫の頭を撫でる。
「そういうことって?」
「あなたはいつか死ぬ。
まぁ、これはどの人間にも統計学的に正しいことだよな。
外す方が難しい。
じゃあ、難しそうな顔でやってきた来客にこういう。
あなたは今、何か悩みを持っていますね。
まぁ、これも当たるわな。人間大概なんか悩んでるし」
「……そうですね」
「俺が今やってるのは統計学と心理学。
過去や未来が見えてたまるか!」
「じゃあ、看板に偽りあり、じゃないですか!」
「知るか! その名前は伯父貴が名乗りだした名前で、
俺が言い出した名前じゃない!」
笑美の脳裏に、玄関の古びた写真が蘇る。
ネコがにっこり笑う。
「二代目ですわ」
「お前がそうやってふれ回るから、変な客が来るんだよ!」
「でも、ちゃんとお仕事してる」
「しないと帰らないからだろ!」
笑美と男は顔を見合わせる。
「これは……あれだな」
「ネコさんがいないと仕事にならないんじゃなくて」
「ネコがいるから、仕事をやらされている、のか」
ぎゃーぎゃー騒ぐ大家と涼しく流すネコを見ながら、
笑美と男は小さくため息をついた。
>>第25回
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