~神話・民話の世界からコンニチハ~ 6 創造神たちの争い

おはようございます。今日は、夕方から雨が降りそうです。

第六回は! 前回(第五回)でちろっとお話にだけ出てきた、創造神テスカポリトカさまとケツァルコアトルさま、そしてもうふたりの神さまがたによる、世界の創造と支配、そして争い、滅亡を繰り返す「五つの太陽の神話」をご紹介&テスカポリトカさまとケツァルコアトルさまのインタビューです。

今回のお話

この宇宙では無いところ、13層ある天上界の一番上の世界で、原初の神オメテオトルさま(Ometeotl、「二面性の神」を意味し、 対立する二つ(男と女、光と闇、秩序と混沌、静と動、是と非など)を兼ね備えた完全なる存在。「身近なるものの神」、「環の中にいる者」、「我らの肉の男神にして女神」など数多くの異名をもち、神の中の神「万物の主」として崇められた)は四の息子の神さまを生み落としました。

それぞれ名は一番上が赤いテスカトリポカさま、2番目が黒いテスカトリポカさま、3番目がケツァルコアトルさま、4番目はアステカの守護神ウィツィロポリトリさまと言いました。原初の神オメテオトルさまはほかにも雨の神トラロックさま、水の女神チャルチウィトリクエさまなど、多くの神さまがたを生んだあと、その後のことは生んだ神さまがたに任せました。

宇宙の最初に登場した土の太陽の時代は、これらオメテオトルさまの四の息子の神さまがたの協力で造られました。神さまがたは火、天、地、海、地下界、1組の男女、暦(こよみ)などを造りました。この最初に作られた宇宙の統治者である太陽となった神さまは、黒いテスカポリトカさまでした。地上には巨人たちが住んでいました。しかし、激しく荒々しいこの神さまの統治に我慢できなくなったケツァルコアトルさまが矛で彼を突くと、黒いテスカポリトカさまは水の中に落ちてしまい、地上で復活した黒いテスカポリトカさまはジャガーの姿になっていました。そうして、地上にはジャガーの群れが溢れ、地上の巨人たちを滅ぼしてしまいました。

第2番目の風の太陽の時代には、ケツァルコアトルさまが太陽となり、宇宙の統治者となりました。その時代は、とても平和で穏やかでしたが、先の宇宙で統治の場を追い落とされた黒いテスカトリポカさまがやって来て、ケツァルコアトルさまを蹴飛ばしたために、ケツァルコアトルさまも地上の人間たちもみな風に吹き飛ばされてしまいました。しかも、風に吹き飛ばされた人間たちはみな猿になってしまったそうです。

第3番目の雨の太陽の時代は雨の神トラロックさまが太陽となり、宇宙の統治者となりました。しかし、この世界もケツァルコアトルさまの降らせた火の雨によって滅びてしまいました。

第4番目の水の太陽の時代は雨の神トラロックさまの妻で、川の水を司る女神チャルチウトリクエさまが太陽となり、宇宙の統治者となりました。この世界は、彼女の起こした大洪水で滅ぼされましたが、この洪水のために山々は押し流され、天空は崩れ落ち、人間たちは魚になってしまいました。

こうして、4つの時代が終わった後で、現在の時代である動き(ナウィ・オルリン)の太陽の時代が造られました。この時代はケツァルコアトルさまと黒いテスカトリポカさまも協力し合い、天地を再生したり、新しい人間を造ったりした後、第5の太陽を造りました。この太陽は最初少しも動かなかったのですが、多くの神さまがたが犠牲となり、その心臓を太陽に与えたことで動き始めたそうです。

……最初の四の息子の神さまのうち、残りのおふたりはどうしていたのとか、神さまがたの争いに巻き込まれて滅びた巨人とか猿や魚になっちゃった人々とかがあんまりだ、とか、考えちゃいますが。今あるこの時の宇宙と地球が五番目の宇宙である、という認識は、多次元宇宙という、最新の科学理論の想定でしばしば取り上げられる、あの大ヒットアニメ「君の名は。」でも描かれていた並行宇宙(今ここは、さまざまな選択肢の分岐の一ポイントにあり、私たちはさまざまな現在のひとつを生きている)の思想にもつながる、神話という古い物語でありながら、深い含蓄を含む創世神話です。

それでは、黒いテスカポリトカさまとケツァルコアトルさまのインタビューと参りましょう!

すー: おふたりの神さまがた、どうぞよろしくお願い致します。

テスカポリトカ: ふむ。最初の宇宙の統治者であったワレだけで良かろう! 後でワレを太陽から追い落としたケツァルコアトルなど、放っておけば良いではないか。

すー: あー。今の五番目の宇宙を、ケツァルコアトルさまと協力してお造りになったとはいえ、まだ根に持ってらっしゃるんですね……。

テスカポリトカ: ケツァルコアトルとて宇宙を滅ぼしておるのに、なぜワレが破壊と混沌の悪神として嫌われ、ケツァルコアトルのやつが文化と農耕の神として、人気者なのだ! 納得できん!

すー: そういう、妬むところがじゃないですかねぇ(ボソッ)

ケツァルコアトル: 昔のことは、もう良いではないか、黒きテスカポリトカよ。今この宇宙はようやく我らが、最初の宇宙のように協力をして作り上げた世界なのだぞ? 大切にせねばな。

すー: おお、そう言って頂けると、このメソアメリカ地域で、暦としては2012年に終わる周期の、第五番目のこの宇宙が永らえているのが尊く思えます。

ケツァルコアトル: そもそも、神話や物語としては、第五の宇宙……つまり今ここの世界だが、ここが滅びるというストーリーは、我らが信じられていた地域ではほとんど無かったのだぞ? もちろん、いつか終わるという事実は、地球にも太陽にも寿命があることから確実ではあるが……。まだ、今はその時では無かろう。1999年の時の終わりも、2012年の時の終わりも去った。地球の寿命はまだまだ長いのだ、それに合わせて長らく、仲良く生きていくがよい。ようやく争いを止めた我らのようにな。

すー: はあ。御兄弟の神さまがたでも、仲良くなるまでに、それだけの宇宙の破壊と再生、そして時間がかかったんですね……。

テスカポリトカ: 今の人間たちは、いささか傲慢だな! 生贄を捧げもせんし、生き物たちはみな自分たちのものだと思っておるし、海も山も川も大量の汚れたもので穢し、森を切り裂いて自分たちだけが良い暮らしをすれば良いと思っておる!このまま行けば、終わりの時はそう長くないかもしれんぞ?

すー: ええ……! それは困ります。確かに、悲観的な物の見方をする未来予測には、環境破壊と地球温暖化がこのまま行けばあと30年で取り返しのつかないことになる、と言われていますしね……。逆に、この暖かさは、人間の行いとは関係が無く、いずれ来る氷河期の始まりだ、と言うひともいますが。

テスカポリトカ: 関係の無いわけが無かろう! あまりに傲慢で強欲のままならば、ワレがふたたび現れて滅ぼしてくれようぞ!

すー: ひえー。それは嫌です、テスカポリトカさま! 

テスカポリトカ: ならば生贄をよこせ!

すー: それも無理です!

テスカポリトカ: 仕方ないのう。ならば、すーの大切なものを捧げよ! 神々に捧げるものとは、別に人の命である必要はないのだ。ワレらは祈りの気持ちを食べ物のようなものとする。そのなかで、一番嬉しいのは、ひとが自分のなかで大切に思っているものを、ワレら目に見えぬモノに贈るという気持ちなのだ。それが、ワレらを信仰する地域では、究極の捧げものである人の命であったということだな。そのために、今は、ワレらは悪魔として扱われるようになってしまったが……こっそりと、細々と、鶏や家庭で作られた料理を捧げる者たちはまだおるのだぞ。さて、すーはワレらに何を捧ぐ?

すー: (辺りを見回して)ええ……今、いきなり大切なものというと、おやつに食べようと思っていた、とっておきの美味しい Lindt (リンツ)の丸いチョコ、LINDOR(リンドール)くらいしか無いんですけど!

テスカポリトカ: なぬ、チョコとな! ワレら神の食べ物とされるものを持っているとは、おぬし、とても用意がいいのう!(恐そうな顔を崩して、にんまりと笑う)

すー: ええ、そうだったんですか!? ほんとだ、調べてみたらチョコのルーツはメキシコなんですね。スペイン人の征服者コルテスを、当時のアステカの王様がチョコの飲み物でもてなして、それがヨーロッパに広がっていったと……。すごい偶然、でも気に入ってくださって良かったです。

テスカポリトカ: (もぐもぐとチョコをお召しになられた後で)良かろう、今このときは、ひとびとの行いが良いものになろうと努力してもしておるしな、しばしワレらが滅ぼすその時を待ってやろう!

ケツァルコアトル: 黒きテスカポリトカよ、お前こそどこまで傲慢なのだ! 生贄や捧げものなど無くとも、我らは神々として、長くこの第五の太陽が在る宇宙と地球を長く長く見守る責務があろう!

テスカポリトカ: ケツァルコアトルよ、おぬしがそうしてひとびとを甘やかすから、いかんのだ! 決着を付けてやろうぞ!(暴れ出す)

すー: わー。世界を滅ぼす兄弟げんかはやめてください! 仲良く、ね? おふたりとも、チョコをどうぞ!

テスカポリトカ:(暴れるのをやめる) ふむ。せっかく作った第五の世界だ、また創造するには途方もない苦労がかかるしな……。(もぐもぐ)

ケツァルコアトル:(もぐもぐ)それがようやく分かるようになったか、黒きテスカポリトカよ。

テスカポリトカ: おぬしとて宇宙を滅ぼしているがな! 善人面をしておきながら、結局は滅ぼすおぬしのほうが、怒りも妬みも隠さぬワレのほうより、よほどの悪神よ!

すー: もう……テスカポリトカさまのおっしゃることは分からなくもないですが、ようやく地球でも、人類が仲良くやっていこうとしているんです。おふたりも仲良く、仲良く、ね?

ケツァルコアトル: ……そうだな。我ら神々は、常にひとびとを、そしてこの世界を目に見えぬところから見守っている。ひとつの宇宙が始まり、終わるその先もな。名が忘れられ、悪魔と貶められようとも……。

すー: ……ケツァルコアトルさまも、悪魔にされちゃったのはショックだったんですね……。(根っこはテスカポリトカさまもケツァルコアトルさまも御兄弟だなあ……) おふたりとも、宿敵と書いて友と呼ぶッ! みたいな感じなのかもしれませんね。テスカポリトカさま、ケツァルコアトルさま、どうもありがとうございました。

第六回「~神話・民話の世界からコンニチハ~ 6 創造神たちの争い」は以上です。

すこしでも楽しんで頂けたなら、それに勝る喜びはありません。

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。


次回予告

第七回は、主にユダヤ教、キリスト教、イスラム教などで天使たちと呼ばれる存在についてのお話&大天使さまとのインタビューを予定しています。お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからhiro_fさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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