巷で不評らしい「Cat's」をあえて観に行ってみた件

豊田市駅前のKiTARAという映画館へ行ってきました。ミュージカルの不朽の名作「Cat’s」の実写映画版だったんですが……。日本のオールドメディアからの情報が、コケたコケたと、うるさいほどに悪評判を広げていたので、ホントのとこどうなの!? と天邪鬼な私のアンテナが立ち(笑) 観てきました。

何と言うか……作った側の本音は「劇場でやるミュージカルの『生』の良さは伝えきれない!」という開き直りっぷりが潔い作品だったかな、というのが第一印象でした。幸運なことに、私はロンドンの「Cat’s」を観られる機会があったので、この映画版「Cat’s」はその良さを何とかしてスクリーンの四角い画面で伝えようとした努力はとても感じました。鑑賞後、うおお、ロンドンでもう一度ミュージカルの「Cat’s」が観たい! 日本の無名の作品でもいいからお芝居が観たい! なんなら音楽ライブでもいいから観たい! という衝動が起こったので、普段の生活に忘れていた、元演劇好きの感性を刺激してくれた作品であることは間違いがありません。

そしてこの映画版「Cat’s」は、ユーロという大衆に媚びずに離脱する今のイギリスであり、過去に世界で君臨していた輝けるヴィクトリア時代へのロマンチシズムもあるのかなぁ? という気がしました。オープニングから30分ぐらいまで、本当に客に媚びない作りをしているので、パッと見の観客が文句を言う演出をあえてしたんでしょうか。不評のCGによる猫っぽさと人間っぽさの間の人物造形も、舞台を見ているとなじみのものなので……好きな人は舞台を知っている人、嫌いな人はふつうの映画に慣れている人、という住み分けがされてしまったのが、今回の不評の原因であるようにも思います。

実際の舞台で行われるミュージカル「Cat’s」は、エリオットという詩人の作品群である孤高さ漂う抒情を、人が舞台で演じるという人間力でもって一般人が入りやすい仕組みになっている不朽の名作なので、映画を見て舞台のほうもこんなもん、と思ってしまうとものすごくもったいないです。

映画にすこし物足りなさがあるとすれば、それは今回の作品では、かなり意図的に作っている気配を感じます。……つまり、ホントのとこどうなの? という好奇心で、舞台に足を運ぶ人だけが、本当の「Cat’s」に出会える審査を今回の映画版「Cat’s」で受けている、そんな印象を受けました。

おすすめか? 駄作か? と聞かれれば、芝居の「Cat’s」を観たことがあるなら、そして、大らかな気持ちでどんな作品も楽しめる人なら、上質の(そしてとても天邪鬼な)時間を過ごせますよ、と言っておきます。

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