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~神話・民話の世界からコンニチハ~ 18 冥界下り ギルガメシュさまとエンキドゥさま

おはようございます。今日も気持ちの良い晴天が続いています。

第十八回は! 第十四回でエンキドゥさまと親友となり、第十五回でともに怪物フンババを倒し、第十六回でエンキドゥさまが死の別れとなり、第十七回でギルガメシュさまがひとり不死を求めて旅をした流れ……とは少々異なり、粘土板としてはおしまいの章として、おまけのように構成されていた、このお話のところだけ神さまがたのお名前がこれまでと違い古いシュメール名となっている粘土板からのお話のご紹介&インタビューです。

今回のお話

天地が創(つく)られてしばらく経ったとき、ユーフラテス川のほとりにヤナギの木が生えていました。ヤナギの木は風によって倒れそうで、川の氾濫によって今にも流れそうでした。これを見つけたシュメールの豊穣と大地の女神イナンナさま(これまでの粘土板ではイシュタルさま)は、ヤナギの木を椅子と寝台にしようと考え、川からすくい上げて聖なる園(その)に植えました。

しかし、その木に蛇や怪物のズー(ライオン頭の鷲、アンズーとも)、リリト(女性の悪霊、リリスとも)が住み着いてしまったため、イナンナさまは兄のウトゥさま(これまでの粘土板では太陽神シャマシュさま)に救いを求めましたが、取り合ってもらえませんでした。

そこでギルガメシュさまを頼ったところ、彼はたちまちのうちに斧で蛇たちを追い払いました。無事に育ったヤナギの木は切り倒され、イナンナさまは礼として、木の根元から作った、権力の象徴であるプック(輪)とミック(棒)をギルガメシュさまに授けました。

あるとき、ギルガメシュさまが持っていたプックとミックが大地の割けたところ(地下=冥界)へと落ちてしまい、エンキドゥさまが名乗り出て拾いに向かうことになりました。

ギルガメシュさまは、エンキドゥさまに冥界での掟を事細かに伝えて、注意するように言っておきましたが、うまく伝わらず、エンキドゥさまは冥界から帰れなくなってしまいました。

ギルガメシュさまは風と嵐、大気の神エンリルさまになんとかしてほしいと頼み込みましたが、断られました。そこでエンキさま(これまでの粘土板ではエアさま)にお願いすると、彼はウトゥさまを呼び、冥界のエンキドゥさまはその助けによって体は冥界に残りましたが、影(魂)だけは地上に戻ることができました。地上に戻ったエンキドゥさまの魂は、冥界の様子を後に語りました。


……このお話、ウトゥさまがふつうにイナンナさまの救援を求めた声に応じて、ウトゥさまが蛇や怪物たちを追い払うバージョンもあるんです。そして今までのお話のイシュタルさまとまったく違う、お世話になった礼をきちんとするイナンナさま。まったく別の神さまが、時代を経て同じ神さまとしてまとめられているための性格の違いなのかもしれません。イシュタルさまの神話については、混ぜるな危険! というやつかも……。

それでは、インタビューと参りましょう!


すー: ギルガメシュさま、エンキドゥさま、よろしくお願いいたします。

ギルガメシュ: 王権の象徴をぽろっと落として無くすとか、どんだけうっかり屋なんだ、俺は?

すー: うーん、そしてこのお話でもそのギルガメシュさまがプックとミックを無くしたことが起因で、エンキドゥさまがとばっちりというか、冥界から帰れなくなる、つまりは肉体としてお亡くなりになる結末を迎えていますよね。エンキドゥさまがちょっとカワイソす……。

エンキドゥ: 友のためと、思って、働いたんだが、冥界の、フクザツな掟は、オレには、とても難しかった。

すー: エンキドゥさまは、ほんとにギルガメシュさま思いですよね。イシュタルさまよりも一途かも(笑)

ギルガメシュ: そして、この話だと前回にウトナピシュティムが語っていた大洪水が起きず、天地創造のあとフツーに俺が登場してウルク統治の代を迎えているよなあ。

すー: もともとは、ウトゥさま(これまでの粘土板では太陽神シャマシュさま)の怪物退治のお話だったみたいですから、もしかすると大人気なギルガメシュさまのお話にしちゃえ! っていう当時の粘土板を作ったひとたちの思いがこもっているのかもしれませんね。日本の神代の出来事を、ひとつひとつ丁寧に拾い上げている日本書紀でも、残されたお話によってかなり差があります。このギルガメシュ叙事詩として残された物語の随所に、大洪水のことだけでなく、その後の聖書の物語として重なるところもありますから、地域によってきっとイナンナさまとイシュタルさまもかなり違っていたのだろうという推測が出来ます。

ギルガメシュ: まさに混ぜるな危険だな!(笑)

すー: はい、神さまがたを混ぜるな危険(笑) 地域によって神さまも伝説もちょっとずつ違ったり、とても似通うところもあったり、時代の地域によってひとびとが面白いと思うことを取り込んだり、正史では伝えられない歴史を神話として組み込んだり、神話と言うのはいつの時代も、とてもクリエイティブなものだったろうと思います。後世に残そうと思って、物語を粘土板に彫り込む作業をいとわないくらいには、当時のひとびともむちゃくちゃ面白いと思っていたのでしょう。相棒(バディ)や怪物退治や、不老不死を求めての旅、そしてこの冥界のお話など、今でも魅力を感じる作品を、物理的に残してくれたメソポタミアの古代のひとびとに感謝です。ギルガメシュさま、エンキドゥさま、どうもありがとうございました。

第十八回「~神話・民話の世界からコンニチハ~ 18 冥界下り ギルガメシュさまとエンキドゥさま」は以上です。

すこしでも楽しんで頂けたなら、それに勝る喜びはありません。

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。

次回予告

第十九回は、ギルガメシュさまの父上さまのお話、ルガルバンダ叙事詩からお話のご紹介&インタビューを予定しています。お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからダラズさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。



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