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人生は50から! 信長公、アフリカへ行く 四十五話「世界の秘宝について聞く」

登場人物紹介

織田信長おだのぶなが: みなさんご存知、尾張おわり生まれの第六天の魔王。この神話×歴史ファンタジー小説のなかでは、本能寺の変で天使に救ってもらう。一般人、一介の冒険商人「小田信春おだのぶはる」と名乗り一番のお気に入りだった黒人侍弥助やすけをアフリカへ送り届ける旅を始める。

弥助やすけ: 本能寺の変でも、最後まで戦い、信長を守ろうとした黒人侍。気は優しくて力持ち。明智勢に捕まったが放たれ、その後は故郷アフリカへ信長とともにつ。

ジョアン/ジョヴァンニ: 没落する故郷ヴェネツィアでの商売に見切りをつけ、アフリカは喜望峰回りの航路を確立し勃興するポルトガルの帆船に乗って、はるばる日本へやってきた十七才の少年。宣教師ルイス・フロイスの依頼によって信長をサポートすることに。愛称「蘭丸」の名で呼ばれる。

助左衛門すけざえもん: 堺の港で頭角を現し始めた商人。ジョアンと同い年。この物語では、大商人、今井宗久いまいそうきゅうの弟子。海外への強い憧れから、信長たちと旅を始める。のちの納屋なやまたは呂宋るそん助左衛門。

ゴブ太郎: ひとに化けて船に乗っているうちに、日本へ迷い込んできた妖精のゴブリン。信長に「ゴブ太郎」の名をもらい、ともに旅をすることに。

天使ナナシ: 本能寺で信長を救い、その後も旅を見守って同行する天使。

四十四話のあらすじ

鬼の本性を現し、無差別攻撃に及ぶファルソディオ。苦戦する弥助に信長公は加勢を申し出ますが、黒人侍は一対一の勝負と告げます。窮地に陥ったところを救ったのは、聖アントニオによるオルガンの不協和な音響でした。皆が耳をふさいだ隙に退却、一行は聖パウロ天主堂の外へと出ることが出来ました。

四十五話

澳門マカオの港。女神媽祖まそが町のまー姉さんとして暮らす家に、信長、弥助、ジョアン、助左衛門の四人は戻ってきた。

『ハオ! 良かった、戻れたアルね』

媽祖はホッとした表情を浮かべて、一行を家に迎え入れた。

「天主堂より、ただいま戻りましてござる。アントニオ殿の加勢がなければ危ないところでしたわい」

信長はそう応じると、緊張を解いた。四人が戻った円卓えんたくには、ここを出たときと変わらずゴブ太郎がちょこんと座っていて、げっぷぅ、とふくらんだおなかを満足げに撫でていた。

『ノッブ、お帰り! 杏仁餅アーモンドクッキーも、エッグタルトも、お皿にあった澳門のお菓子はぜんぶ食べたヨ! おいしかったネ』

「なんと、ゴブ太郎よ、すべて食うてしもうたのか」

かかか、とゴブ太郎のゆるさに笑う信長。

「媽祖さま、ファルソディオは鬼になったら、強すぎた。今のオレたちの力では、無理だ」

弥助が悔しさをにじませて、媽祖に告げた。

『それでも、鬼の本性を出させるところまでは行けたアルね?』

「はい、媽祖さま。鬼になったファルソディオは強すぎて、配下の鬼たちや信者たちも多すぎたので、僕たちはいのちからがらに逃げたんですけど……。あの偽物の司祭は、鬼の自分を倒すなら『大陸の五つの秘宝、大海の七つの秘宝』を見つけてみろ、と言ったんです」とジョアン。

「さいですわ。媽祖さま、心当たりはおまへんか?」

助左衛門も媽祖に問う。

『それは……おそらく『虹の竜』を呼ぶ、世界の12の秘宝のことアルね』

「おお、ご存知でござったか」

『世界の原初の竜、ドラゴンと呼ばれる存在。それが『虹の竜』アル。すべての悪しき者の邪気を浄化する力があると、この大陸の東の、私の守護する地域には伝わっているアル』

「悪しき者の邪気を浄化する! 上様、それなら『虹の竜』の力をお借りしたら、ファルソディオはあの最強の鬼の姿には、なれなくなるということでしょうか」

ジョアンが考えを述べる。

『この古い言い伝えから考えてみると、きっと、そう、アルね』

「ほんまかいな!? ほんなら虎パンツ一丁の人間相手になりますやん。楽勝やおまへんか」

「ノッブ、宝を探そう!」

信長の代わりに答えた媽祖の言葉に、助左衛門と弥助も色めき立った。

「むう……ファルソディオの奴めへ、再戦を願うのは、みなとわしも同じ気持ちじゃ。しかし弥助よ、おぬしをアフリカへ帰すことを、さきに儂は託されておる。その前に世界の12の秘宝を探すとなれば、ちと長く遠い航海となってしまうのじゃが、天使ナナシよ、そして弥助よ、良かろうか?」

『はい、公。世界の12の秘宝を探し、ファルソディオをなんとかして頂けるのでしたら、それはわたくしたち、こちら側の天使や神々も、大変ありがたく、助かることです』

部屋の隅で話を聞いていた天使ナナシが了承した。

「故郷のアフリカへは、ファルソディオをやっつけたあとだ、ノッブ!」

弥助が手を差し出す。信長は、笑ってガッチリと握手をした。

「決まりじゃな。それでは『虹の竜』をお呼びするため、12の秘宝を探す新たな旅を始めようぞ!」

エイエイオー、と一行は声を上げて気合を入れた。

(続く)

※ 偽司祭の悪鬼ファルソディオ、という設定は神話や伝説をミックスしたフィクションです。神話×歴史ファンタジーの創作になります。特定の宗教や信仰などを否定するつもりはまったくございません。娯楽作品としてご寛容頂ければ幸いです。

※ 『虹の竜』のお話は、アボリジニに伝わる虹の蛇、エインガナさまの伝説から着想を得て、神話と神話をミックスしたアレンジをしています。

次回予告

澳門の港から、世界の12の秘宝を探す信長公一行の新たな旅に役立つよう、媽祖さまの助力があります。

どうぞ、お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりもときさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。

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