創作未来神話「ガーディアン・フィーリング」50話 宇宙だよ! 全員集合!(小説バージョン完結)
49話のあらすじ
火星で初めて誕生した人類の知らせは、メタルクラッド飛行船に乗って次の寄港地へ移動中のジョニーと絵美のもとへ届いた。この喜びを多くのひとびとに知らせたいと望む火星自然創生コロニーメンバーのチーフにしてふたりの双子の娘の父親となったスチュアート。
コミュニ・クリスタルの性能では限界があるが、宇宙人ネットワーク「全天21星連合」が作成したブラックオパール・ネックレスならば可能かもしれないと分かり、次の通信に、母となったサブチーフ、媽大姉も加え、火星と地球のひとびとの祝福の声を届けることになった……。
50話
記録者: 絵美 マイジェンダー: やや女性
出身地: 地球、愛知 趣味: ネコとたわむれること
『それでハ、おみゃーさんがタ、みんな集まっとりゃーすカ?』
まぎれもない、宇宙人リトルグレイの無表情、その口から地元のあたしでもコテコテだなあ、と思っちゃう名古屋弁が聞こえた。
目の前にいるちっちゃな宇宙人グレイさんは、今日、真菜お姉ちゃんの「全天21星連合」という宇宙人ネットワークからお借りしているブラックオパール・ネックレスを使った、4つの場所、全員集合というコンタクトを案内してくれる宇宙配達人。
すっかり真菜お姉ちゃんと仲良くなったグレイさんは、実家のうちに遊びに来ているあいだに愛知の言葉も身に着けていってるみたいだ。
人間みたいな個性のある、それぞれのグレイさんはいなくてみんな同じグレイだヨ、というお話を思い出すと……。
今きっと火星のスチュアートさんたちの新しいご家族のところや、地球のうちの実家や、ロンドンのジョニーの実家に分身して滞在している案内役のそれぞれのグレイ宅急便さんたちも。
みんな今、うちの愛知の言葉をしゃべるようになってるのかなあ? コミュニ・クリスタルで言葉の壁はなくなるし、それはちっちゃいことかもしれないけど、すごーく気になる。
「はい、こちらはアンティグア・バーブーダへ向かうメタルクラッド飛行船のキャットルームから。あたしたち、5次元宇宙の力を使う、真菜お姉ちゃんのブラックオパール・ネックレスのアクセスを待ってます!」とグレイさんに告げる。
「僕も準備OKだよ。ついでにこの子たちもね」
「にゃ~ん」
「ぐるぐる〜」
続くジョニーと、2匹の陽気なネコたちからのフィーリング。
そうそう、コンタクトを飛行船のキャットルームにしたのは、うちのネコのタマと、ジョニーのネコ、キャシーちゃんも参加させてあげたかったからなんだ。
2匹とも機嫌良さそうに、ジョニーに撫でてもらったり、くっついたりしてる。
くつろぐあたしたちを見て、グレイさんが小さくうなずいた。
「じゃア、5次元宇宙のシリウス星人、ラミコッドさんを呼ぶヨ」
「はーい」
「お、お願いシマス」
うんうんジョニー、なんだか緊張しちゃうね!
あたしたちがソワソワしながら待っていると、キャットルームの空間にふわりと中性的な顔の、7色に光る長い髪を垂らした宇宙人、シリウス星人のラミコッドさんが現れた。
「こんにちは、絵美、ジョニー。えー、この全天21星連合のブラックオパール・ネックレスのパワーはですねぇ、物理次元のダークエネルギーと呼ばれる3次元物質を超えエーテルエネルギーとアストラルエネルギーの融合によりそれぞれの物質空間を半アストラル状態に致しまして……」
わー。言葉を司る大天使、ガブリエル……ジブリールさまよりおしゃべりなひと、いや宇宙の守護者の方だ!
しかも技術寄りの専門用語バリバリ!
宇宙技術や知識を学んだあたしやジョニーでも大丈夫かな、付いていけるかなって顔を今見合わせたとこだから……。
うちの実家のお父さんやお母さん、おじいちゃんたちやおばあちゃんたち、同時にこれ聞いてたら難しすぎて寝ちゃうかも!?
『ラミコッドさん! 長くて難しい説明ハあとにしテ、みんなの空間をつなげてあげればええがネ!』
グレイさん、ナイスツッコミ。
『せっかくなので、シリウス星の技術の数奇を凝らしたブラックオパール・ネックレスの力を、隅々までご説明をと思ったのですが……仕方がありませんねぇ』
すこし残念そうな表情をその美しいお顔に浮かべたあとで、ラミコッドさんは複雑な手の文様を宙に描いた。
『ジョニー、絵美。 やっとベイビーたちの声を届けてあげられるよ』
まずつながったのはスチュアートさんと、生まれたばかりの双子の赤ちゃん。娘さんたちだ。
ア〜、とふたりの赤ちゃんの声も聞こえて、とってもにぎやか!
そして。
「ニーハオ〜。 ふたりとも元気にしてたアル?」
奥さんの媽さんだ!
「媽サブチーフ。復活されたみたいで何よりです」と、ジョニーが挨拶。
「火星での子育ては、地球よりも大変かと思ってたアルが、スチュアートがしっかりサポートしてくれるから大丈夫。無問題、心配ないアルね」
媽さんが、快活に笑う。
「おめでとうございます、火星のスチュアートチーフと媽サブチーフのお元気な姿と……。可愛い赤ちゃんたちの様子が分かるのは、すごーく嬉しいです」
「ほんとに……可愛いですね。おめでとうございます」
あたしたちがお祝いの言葉を届けると、媽さんはニッとすこし思案したような笑顔になり。
「ふふふ、絵美もジョニーも、もう結婚したようなものアル。旅行の仕事を終えたら、子どもを持つことも、きちんと考えてみるアルね」
えええ……。媽さんの、はっきりした快活さでおすすめされちゃうと、照れちゃうよね、ジョニー。
あたしはジョニーの顔をそっとうかがった。ジョニーももじもじとした恥ずかしそうな顔になっている。
23世紀の今は、日本も法律が充実していて、物理的な性別とマイジェンダーが違っているひとにも優しく、お互いへの法律的な支援や、養子を育てることも難しくない。
長年の少子高齢化で減った日本人の代わりに、たくさん来訪して旅行をしたり、働いたりする海外からのひとたちへも、その子どもたちへも、日本のきめ細かなフォローが届くようになっている。
だからきっと、ジョニーがうちに来ても、そしてもともと移民が多いイギリスへあたしが行っても、きっと子どもを持って生きていくのはそんなに大変なことじゃないと思う、フォローしてくれるひとたちもいるし、頼っていけば。
「ええと……ジョニーは、……どう?」
「……絵美。もちろんだよ、僕と結婚してください」
決心した表情で、ジョニーが熱っぽさを帯びた言葉を、告げた。
えええ!? いきなりプロポーズだよ!?
「いいのジョニー? ほんとに?」
「……うん。今日はうちの両親とも、絵美の家族とも会えるし、実は言おう、って決めてた」
「そっか……」
真剣に、あたしとのことを考えてくれていたんだね。
ありがとう、ジョニー。
「……あたしもジョニーを愛しています。いっしょに長く長く、楽しいことも辛いこともいっしょに生きていきましょう」
あたしも、精一杯の気持ちを込めて、ジョニーに応えた。
「サルーデ~!」
新しく、誰かがつながった。サルーデは、確かイタリアの「カンパイ!」の意味だから……。
「マッシモさん!」と、ジョニーが笑顔になった。
筋肉質なナイスガイのお兄さんが、グラスにお酒をもって笑っている。
そして、次に年配のご夫婦がつながった。も、もしかして。
「聞いてたぞ、ジョニー! こんなにめでたいことがあるか!? 火星に人間が生まれたってのもすげぇんだが、今! 今のことだ! うちの息子に結婚が決まったんだぞ!」
「おめでとう、ジョニー。モスクワ・プリューシュカを今から送るわ」
ちょ、ちょっとラミコッドさん。 ジョニーのプロポーズが彼のお父さん、お母さんとつながってるなら、言ってほしかった。こころの準備とか、ね!?
『毎度どうモ! グレイ宅急便が、ザックさんとナターリアさんからのお祝い、お菓子のモスクワ・プリューシュカを届けに来たがネ』
メタルクラッド飛行船の、キャットルームの空間にグレイさんがひとり増えた。手には配達品のほかほかの出来立てお菓子パン、モスクワ・プリューシュカを添えている。
増えたグレイさんも愛知の言葉だった! 確認できたのはうれしい。
「ありがとう、お父さん、お母さん」
ジョニーが宅急便で届いたモスクワ・プリューシュカを受け取る。3年前、出会ってボーイフレンドになったころのジョニーからは信じられないくらい、素直な感謝の言葉。
「幸せになれよ、ジョニー」とザックさん。
「ほんとうにね」と、ほろりと涙を流すナターリアさん。
「もう幸せだよ、大切なフィアンセがいるからね」と、ジョニーが照れた。
「おめでたいね、ジョニーと絵美……私のチームふたりのカップルがついに親御さんに公認だ」
「話がまとまって良かったアルね」
スチュアートさんと、媽さんのおふたりからも祝福の声。そして……。
「おめでとう、絵美」
真菜お姉ちゃんだ! いつのまにか、うちの家族ともつながってる!
「ありがとう、お姉ちゃん。……聞いてた?」
「うん、良かったじゃない」
そっけない言葉だけど、お姉ちゃんの最大限の祝福だって、あたしには分かる。
「絵美、おめでとう!」
「いやあ、こんな場面に会えるなんて、お父さん嬉しいやら、ジョニー君に娘をとられる痛みをチクリと言ってやった方がいいのやら、分からないなあ」
お母さんとお父さんだ! つながって聞いててくれたなら、確かに話は早いね。 ……うん、ラミコッドさんありがとう、いきなりつながるのはびっくりしちゃうけど、ま、いっか。
「分かりますよ絵美のパパさん、私の可愛い娘たちが結婚してしまうなんて、今から想像もしたくない……」
可愛い赤ちゃんたちを両腕に抱いたスチュアートさんが、憂いの表情になる。
「それでも、子どもはいつか旅立つものアル。 仕方のないことアルね、スチュアート」
そっと媽さんがスチュアートさんに手を添えた。
「媽は、私といつまでもいてくれるかい?」
「死がふたりを分かつまで。……生まれ変わってもいっしょ、当然アル!」
「……ありがとう」
わあ。おふたりともラブラブ。 こんなご夫婦、憧れちゃうね。
「絵美ちゃん、ジョニー君、しあわせにねぇ」
「ほんと、ほんとうにねぇ」
うちのおじいちゃん、おばあちゃんたちも祝福をしてくれる。
お盆とお正月がいっぺんに来た嬉しさ、っていうのはこういうことを言うのかもしれないね!
『それでは、みなさんお集まりになられたところで、我がシリウス星の素晴らしさを……』
『ラミコッドさん、それはもうええっちゅーねン! やっとれんワ~!』
ふふふ、シリウス星人のラミコッドさんと、リトルグレイの宇宙人漫才まで見れちゃった!
「にゃーん」
「にゃごにゃご」
タマと、キャシーちゃんもまるで笑ってるみたい。
こんなにたくさんの幸せを、大いなるひとつの神さまや、小さな神さま……天使さまがた、そして宇宙の守護者の方々にもありがとう、だよね。
……それでは、おあとがよろしいようで。
(完)
~おまけの予告~
おまけの一話、真菜とリトルグレイの後日談を7月の中旬ごろに投稿を予定しております。
そして近いうちに新連載「~神話・民話の世界からコンニチハ~ GF(ガーディアンフィーリング)version」を、始めます♪
絵美とジョニーのカップルをインタビュアーに、世界の神話の神さまがた、そして新しく誕生していく地域ドメインごとの守護者さま方とのやりとりに軸を持つ対談コラム型のストーリーになります。
どうぞ、お楽しみに~。
ここまでお読みいただき、誠にありがとうございます。
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