見出し画像

【ひらがな詩】ちいさなりゅうとおつきさまからきたひとびと (ストーリア4周年企画参加作品)

今回の作品は、作者すーがいつも楽しい交流のときを過ごさせていただいております「神話創作文芸部ストーリア」さんの、4周年記念企画への参加作品となります。

「花」「鳥」「風」「月」

「巡礼」「家事」「龍」「年末年始」

このふたつのテーマ群をもとにあみだくじを引いて、掛け合わせたお題として作品を編む、という企画。

今回、私すーは最後のトリのおつとめとなりまして、これまでの作品は

矢口れんとさん 「鳥」×「家事」

悠凛さん 「風」×「年末年始」

吉田翠さん 「花」×「龍」

成瀬川るるせさん 「鳥」×「年末年始」

笹塚心琴さん 「花」×「巡礼」

どの作品も個性あふれる傑作ばかりなので、よろしければ、先にお読みいただければと思います。

……それでは、ここからはテーマ「月」✕「龍」の作品ひらがなうたをどうぞ。


【ちいさなりゅうとおつきさまからきたひとびと】


むかし むかし の こと でした
ひがし の ほう に その りゅう は うまれ ました
なんとも ちいさな りゅう でした

その りゅう に つばさ は ありません でした
にょろ にょろ の ながい からだ に しか の つの

まわり の りゅう は おおきくて つばさ が あったり ひ を ふいたり

ちいさな りゅう は それ を みて
あんなに とべたり ひをふいたり

ぼく には なんにも できやしない

そう おもって いました

だから ぼく は ダメ なんだ

そう ずっと おもって いました

あるばん りゅう が おそら を みると
いつも の おつきさま から はしご が おりて きました

おつきさま から すこし の ひとたちが
はしご を おりてきて りゅう に いいました

いっしょに おつきさま へ のぼりましょう
はしご が あれば おつきさま へ いけるでしょう

ちいさな りゅう は おどろいて
すこし の ひとたち を うたがいました

こんな はしご なんか のぼらせて
できそこないの りゅう だって
きっと わらいたい に ちがいない

けれど こうも おもいました

いつも おおきな りゅうたちが
とんでいる そら は どんなだろう

あの はしご を のぼったら
せめて けしきは みられるかな

よし ちょっとくらい わらわれたって いいや

とべない ぼく が おそら を みられるのは
この とき しか ない かも しれない の だ もの

ちいさな りゅう は はしご を のぼり はじめ ました

よいしょ…

よいしょ……

よいしょ………

ちいさな りゅう は はしご で くもの ところ を こえました

すこしの ひとたちは おうえん しています
もうすこし もうすこし で おつきさま に とどき ますよ

かぜ が でて きました

ゆらゆらり ゆらゆらり と はしご が ゆれます
ちいさな りゅう は おちてしまいそう
すると すこしの ひとたち は しっかり はしご と りゅう が
はなれない ように はしご と りゅう を てで つないで くれました

ちいさな りゅう は おもいました

ああ ぼくは なんて ばかだったろう
こんなに たすけて くれる ひとたちを
あんなに うたがって いた なんて

ありがとう おつきさま から きてくれた すこしの ひとたち

ちいさな りゅう は おおきく おれい を いいました

はしご は とうとう おつきさま に つきました
おつきさま から ながめた けしきは
それはもう すばらしくて

りゅう は ついに おもいました

つばさ が なくて
ひ が ふけない
ちいさな りゅう の ぼくでも いいや

はしご と すこしの ひと が たすけてくれたら
ぼくも おつきさま まで いけたの だもの

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?