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創作未来神話「ガーディアン・フィーリング」49話 火星にて素晴らしき出来事、地球へ伝わる

48話のあらすじ

メタルクラッド飛行船に乗って地球を巡るジョニーと絵美。一方、彼らの火星滞在経験メンバーのチーフであるスチュアートは、サブチーフである妻の媽大姉マーダージェーのあいだに産まれる火星で初めての人類となる子どもの誕生を待っていた。助産師エインガナの協力のもと、無事出産は終わり、喜びの通信を地球に送る……。

49話

場所: 地球、メタルクラッド飛行船(アフガニスタン.af ⇒ アンティグア・バーブーダ.agへ移動中)

記録者: ジョニー マイジェンダー: やや男性

出身地: ブリテン 趣味: ネコとたわむれること


「見てくれないかジョニー、絵美! このふたりが私のベイビーたちだよ! ふたりとも、本当に可愛いだろう?」

コミュニ・クリスタルを通して、火星の自然創生コロニーに滞在している上司……スチュアートチーフの姿が浮かび上がった。その両腕には、赤ちゃんたちがすやすやと可愛い寝顔で眠っている。

23世紀に、僕ら人類が発明した万能通信アイテム、コミュニ・クリスタルは火星と地球とを一瞬でつなげられるのだけれど。

一度に対話の可能な人数は3人まで。撮影可能な映像の範囲は3メートル。

だから、スチュアートさんは今回、対話機能は僕と絵美に振って、産まれた娘さんたち……両腕に抱いた赤ちゃんは映像だけを送ることにしたんだろう。

「わあ、可愛い! おめでとうございます!」

絵美がパッと花が咲いたような笑顔を浮かべる。うん、そういう無邪気な絵美も可愛いよ?

「おめでとうございます、スチュアートチーフ、そして媽大姉マーダージェーサブチーフ」

僕も心からの祝福を、ふたりの上司に贈った。

はるか彼方の地において、初の「火星人誕生」だ。

火星に、過去に想像されたタコみたいな生物はいなかった。

そして絵美が火星にまで持ってきていた先祖代々から伝わる紙の「ドラえもん」のマンガを3年前に貸してもらって……。

火星の個人コロニーで日本語の勉強ついでに知った、ドラえもんとのび太のコンビが作ったコケが進化して出来た知的生命体、というのも発見はされなかった。

23世紀になっても、火星の大地はコケすらまだコロニーの外で生息を確認出来ていない不毛の場所。

生きものは火星の自然創生コロニーのなかだけに存続している。

それだけに、スチュアートチーフと媽大姉サブチーフのふたりの子どもが火星で無事に誕生できたというのは。

人類が継続してコロニーのなかで世代交代が出来るのかどうかという段階に入った、素晴らしい出来事なんだ。

まあ、そういう科学的偉業の達成という事柄であることは置いといても。

スチュアートパパ、の顔は、もうとろけそうに幸せな父親の表情だ。

奥さんの媽サブチーフママ、のほうが強気で、しっかり者の方だから、きっとダメになるくらい、娘さんたちを甘やかしすぎな父親になりそうだと思った。

「コミュニ・クリスタルの性能の限界が本当に惜しいね、ジョニー! 私のメイニュー美人さんと、子どもたちの声をすべて一度に君たちへ送ることが出来たらどれほど素晴らしいだろう」

「確かにそうですね、スチュアートチーフ。コミュニ・クリスタルの対話機能には限界がありますから……」

諦め気味に僕も言いかけて、ふと思い出した。

そういえば絵美のお姉さん、真菜まなさんが持っているという、宇宙人ネットワーク「全天21星連合」の作成したペンダントは、かなり高性能ではなかっただろうか?

「ちょっと待ってください、スチュアートさん。何とかなるかもしれません」

「本当かい!?」

「絵美、以前に君の家族が集まって話したとき、君のお姉さんが使ったっていう黒いペンダントなら……」

「あっ、そうだねジョニー! お姉ちゃんがグレイ宅急便のお友だちから貸してもらっているっていう、ブラックオパール・ネックレスなら!」

絵美も相づちを打ってくれる。

「すぐに、お姉ちゃんと連絡を取ります!」

「ありがとう、絵美。頼むよ、初の火星で誕生した私たちの家族だもの、出来ればみんなで揃って通信をしたいからね」

「絵美、ちょっと待ってほしい……それなら、次の通信を待って、媽サブチーフも入ってもらいましょう、スチュアートチーフ。

今だと媽サブチーフは出産後まもなくなので、とても疲れていらっしゃるでしょうから」


「おお、そうだね。早く知らせたいという気持ちが先になって、忘れてしまっていたよ。ジョニー」

うーん、だからときどき媽サブチーフにこっぴどく、チーフなのに叱られたりもするんだろうなあ、スチュアートさんは。

「そっか、そうだね! じゃあ、そのときまでにお姉ちゃんのブラックオパール・ネックレスの機能を使わせてもらえるように、話をしておきます!」

スチュアートさんと絵美が僕のアイデアに了承してくれて、話はまとまった。

(続く)

次回予告

次回は完結話。火星で初の親子家族、スチュアートと媽大姉、その双子と、メタルクラッド飛行船に乗って移動中のジョニーと絵美、そして地球の愛知に住む真菜とその家族、さらにロンドンからジョニーの家族とマッシモも加え、リトルグレイ&シリウス星人も、ブラックオパール・ネックレスの力で集う。

6月中旬の投稿を予定しております。どうぞ、お楽しみに~。

※ちょっとだけ予告※

「ガーディアン・フィーリング」の群像を描く未来日記のスタイルを取った小説としては次回完結となりますが、そのあともおまけの1話と、地球のあちこちの神話・民話をもとに、ジョニー&絵美が登場する何らかの作品を考えております(^^♪

ここまでお読み頂き、誠にありがとうございます。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーよりにゃこぱんさんの作品をお借り致しました。ありがとうございます。

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