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そこから革新的イノベーションが生まれるのか~「フレームワーク」や「○○思考」にはもうウンザリだ〈中締め〉

先だっても申し上げましたが、インタビュー調査のシリーズとしてはこれをもって「中締め」とします。その中締めで一見無関係のような毒を吐いておきます(いつも吐いてますけどw)。

ハッキリ言いますが、本屋に行っても、noteを見ていましても「〇〇思考」だの「××フレームワーク」だのの言葉が毎日躍り、相当にうんざりしております。浅薄です。月並みです。流行り言葉に乗っているだけです。砂糖に群がるアリのごとくです。

いつから日本人はフレームやモデルに頼らないとモノが考えられなくなったのか?

フレームが決まっている中でモノを考えると楽かもしれませんが独創的なものは生まれないでしょう。同じフレームを使い同じインプットをすれば同じアウトプットが出てくる道理です。違うものが出るとするのならばそれはフレーム側の要因ではなく使う個人側の要因です。フレームを使うにせよ、使わないにせよ、独創的なものを生むにはその「個人」の側に目を向ける必要があるのではないでしょうか。しかしその個人がみんなが使っているフレームワークを使うということ自体がそもそも独創的ではありません。

日本の「失われた30年」を分析すると、その根底には「独創性の喪失」があったのではないかと考えられます。独創性を喪失した結果、日本企業はかつてのウォークマンやスーパーカブ、チキンラーメンやカップヌードル、低公害エンジン車やコンパクトカーなどなどのような世界を席巻する商品を生み出せないようになっています。すなわち、ブルーオーシャンを拓くような革新的イノベーションを起こせていないのです。それは新たな価値を創造していないということであり、成長率や利益率を下げてしまいます。それで世界経済におけるプレゼンスは下がり、一人当たりの生産性も下がっています。昨年GDPはドイツに抜かれ世界4位に転落しましたが、現在5位のインドに逆転されるのも目前でしょう。一人当たりGDPは韓国に抜かれ30位程度です。月並みなフレームワークは知的作業のコストダウンにはつながりますが、独創的価値を創造することからは遠ざかります。

そこに皆さん、危機感は感じていないのか?
フレームワークで仕事の効率を上げることにしか目が向いていないのではないか?

昔に愛読した本の一つに「パラダイムの魔力」(ジョエル・パーカー)がありました。「パラダイム」とはすなわち「フレーム」です。その冒頭に「独創的な発想は会社に入ったその日と辞めるその日にしか生まれない」という少々エキセントリックな話が書いてあります。それはその会社のパラダイムに毒されていないタイミングか、パラダイムを守ることが不必要になるタイミングであるということです。パラダイムを用いるのはその世界観の中で答えを速く出せることがメリットですが「独創的」であることに対してはデメリットでしかありません。それが「マンネリ」や「沈滞」を生むわけです。

意識マトリクス理論が明らかにしたように、非構成的な定性調査が明らかにできるC/S領域の情報というのはS/S領域において生まれる独創的イノベーションの母です。故に定性調査にはそんなダメになった日本の未来を拓く力があります。

その定性調査の威力の源が正に「非構成的なリスニング」であることです。

その定性調査に「フレームワーク」や「〇〇思考」のモデルを持ち込むということはそもそもの矛盾があります。使う「個人」の側が未熟であるほど、そのフレームやモデルによって調査が「構成的なアスキング」になりかねないからです。例えば、「ペルソナ」のフォーマットが決まっていたとしたらその枠を埋めようというモチベーションが生じます。「カスタマージャーニーマップ」しかりです。AIDMA理論に準拠してインタビューを行うと、真実は違っていてもあたかも理論通りに購買行動が行われたように見えるようになります。

それではイノベーションからは遠ざかる、というのも意識マトリクス理論が明らかにしました。イノベーションを起こす力のある定性調査においてそれは致命的な問題です。定量調査ならともかく、定性調査にそのようなフレームワークを用いることこそが最大の都市伝説、ウソ、まやかしだといって私は憚りません。仕事は楽になるかもしれませんが価値を下げるだけです。

フレームワークというのは誰かが作ったものですが、むしろ定性調査とは新たな「フレームワーク」を創造・構築するためにこそ使われるべきものです。それを忘れてはならないと思います。定性調査にはその力があります。フレームワークの使い手になるのではなく作り手に回るのです。それが何であれ「追随を許さない」地位の確立につながるでしょう。

さて、ここまでインタビュー調査についていろいろと書いてきました。おそらくインタビューに関しては他の追随を許さないボリュームでありかつ独創的なものだと思っていますが、実は私にとってそれは「イノベーション」の具体的手段を論じるための枕にしかすぎませんでした。書けばキリがないので今後、インタビューについても引き続きコラム的に書いていきたいと思いますが、公開記事が100を超えたことをきっかけとしてここから本当の本編に入っていきたいと思っています。

色々な論点が思い浮かびますが、例としては「意識マトリクス理論がイノベーション発生メカニズムを明らかにした」ことや、「イノベーションとマーケティングの混同がリサーチの価値を下げている」こと。「生活者ニーズからスタートするイノベーション」、「イノベーション理論と手法の統合」などがラインナップしています。上記した日本経済の衰退、没落の問題はイノベーション無くして解決できません。

ご期待いただけると幸いです。


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