ズーから出る

『あれは、引き出しに閉じ込めてた星。
いつの間にかなくして、誰かの上で光って、もう二度と手には入らないもの。』

『言葉で言えちゃうことばっかりじゃないから、たまに困る。
君の美しさもちゃんと伝えられずにいる。』

『世界が終わる時間まで、悪いことしていようぜ』

『あなたを邪魔する奴らを黙らせにいくのよ。
夜明け前、君が寝てるうちに、黒魔術を見舞うよ』

これらは、ズーカラデルというバンドの曲の歌詞だ。
文字通り、「ズー(動物園)から出る」というメッセージのもと
常識とか日常とか、普通とか退屈とか
普段僕らを閉じ込めている檻から脱出して、本当の自分達を解き放とうって、優しく歌ってくれる。

でも、一方で檻の中は安全で、ご飯も与えられて、雨も凌げる。
やっぱり檻から抜け出すのは簡単なことじゃなくて、それでも手に入れてみたい自由を求めて、彼らもまたもがいている。

最近は毎日仕事とか、やるべきことに追われているからだろうか
ふとした時にズーカラデルの歌が刺さって、動けなくなりそうになる。


ほんの半年前までは、大学の留年生で仕事もなかった。
でもどこまでも自由だったから、動物園の檻からは解き放たれていたのかもしれない。

好きな時に好きなものを食べて、好きなだけ眠れた。
その代わりに、お金も、夢も、友達も、生きがいも
何もなかった。

時々、頭の中の檻が音を立てて「お前は何をしているんだ」「そのままでいいと思っているのか」「働かない人間はクズだ」「時間を浪費するな」
なんて言ってくるものだから、僕は鬱になって、檻の中に戻ることを選んだ。

動物園の中で過ごす今、たまに外の世界での日常を思い出して、恋しくなる。
外の世界の厳しさも知ってるから、戻ろうとはしないんだけど。


人には人の地獄がある

みんな本当はこんな世界が大嫌いで
でもそれと同じくらい大好きで

どうしたらいいかわからなくて
それでも健気であろうとして

そんな姿をたまらなく素敵だと思うんだ。

この記事が参加している募集

眠れない夜に

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?