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广场舞(広場舞)でトリップしそうになった話

みなさまは、广场舞(広場舞)をご存知でしょうか。

中国において、公園や小区などの広場で開催される、主に中高年の女性が参加する体操のような踊りのことです。なんとなくユルめの動きと、ポップスをEDM風にアレンジしたような音楽が特徴的です。至る所で行われており、特に夜のご飯を食べた後の時間、集会のような形で 广场舞が開かれ、たくさんの人が参加しているのをよく見かけます。大規模なものだと数百人単位になります。

どういうものかイメージしにくい人は、僕が撮影したこの動画をご覧ください。

この广场舞ですが、当の中国人からもなんとなく間の抜けたものとして捉えられている節があり、特に若者からはダサいもの扱いされることが多いようです。中国語版Yahoo!知恵袋のようなサービス「知乎」には、「广场舞为什么不美?」(広場舞はなぜ美しくないの?)という身も蓋もない質問が上がっていました。

近隣との騒音トラブルになるケースなどもあり、なんとなく煙たがられている活動、というのが共通認識かもしれません。僕自身も似たような気持ちであり、街中で見かける广场舞に対するマイナスイメージは正直あります。

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しかし、それがある日、少し変わりました。

最近は自宅で仕事をしているのですが、それが続くとどうしても運動不足になります。ちょっと疲れてきたら普段は散歩に出ますが、その日は天気も悪くあまり外に出かけたい気分ではありませんでした。そこで、同じく作業に疲れた嫁と休憩がてら、一緒に動画を見ながら广场舞をやってみることにしたのです。

使ったのはこちらの動画です。同じ人が無駄に分身させられているあたり、中華的な脱力感があってとてもよいの感じです。

そして、ほんのシャレのつもりで実際に踊ってみた結果。

動画をよく見ていただけるとわかるのですが、遠くからだとユルユルに見えていた踊りは意外にも複雑で、少なくとも日本のラジオ体操のように初見でパッと合わせられるようなものではありません。きちんと踊ろうとすると、しっかり覚えてから臨む必要があります。運動量も結構多く、たった4分間の程度の運動なのに全身に汗をかきました。広場のおばちゃんたちは、毎日これをやっているのか…とリスペクトが湧いてきました。

そして何より、その中毒性のようなものに気づいたのです。全部がそうなのかはわかりませんが、少なくともこの動画における踊りは、短いスパンで同じようなルーティンが何度も繰り返されるものです。その単調なものの強度の高い運動の繰り返しと、少しマヌケながらも小気味良い音楽のリズムに身を委ねていると、なんというかこう、脳汁のようなものが出てくるのを感じました。

これはいかん、早く止めなければ……という理性が働いているのに、体は延々と踊りを続けているという、体内に相反する何かが同居しているような、不思議な感覚でした。そして、続けるうちにそういった感覚さえなくなり、ほぼ無意識でただ踊り続けていました。動画が終わった時には、急激に現実に引き戻された感覚になりました。そのまま続けていたら、悟りの一つや二つ開けていたような気がします。

なるほど、時に狂信的なまでに一心不乱に踊っているように見えるおばちゃんたちは、こういう感覚なのだな……と知ることができました。

ちなみに嫁は途中で動きについていけず脱落し、なんとかついていこうとする僕を奇異の目で見ていたようです。

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「やってみないとわからない」とはよく言ったものです。敬遠されがちな 广场舞も、実際にやってみることで見えてくるものがありました。ただの健康体操、おばちゃんの嗜みというように雑に括りきれない、何かを感じました。

これから先、中国で「来自日本广场舞大师」のような怪しい日本人の存在が報道されたら、それは僕かもしれません。もしそうなったら生温かく見守ってください。

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