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結婚前に確認すべきは、相手の年収でも価値観でもなくて

——「衛生観念」ではないか、と思うのです。

「衛生観念も価値観の一部では?」というツッコミが聞こえてきそうですがそれはさておき、結婚してからすり合わせがもっとも大変なのはこの衛生観念に関することなのでは、という話を書きます。お付き合いください。

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というのも、中国人との国際結婚をした僕が、まさにこの衛生観念の違いで苦労した(してる)んですね。

日本人と中国人では、何をキレイだと感じ、何を汚いと感じるかが大きく違います。一般的なイメージで言えば単純に日本人の方がキレイ好きだと思うかもしれませんが、そう単純な話でもありません。

たとえば僕のマガジンではしょっちゅう言及する、パンツの手洗い問題です。中国では特に女性側に「パンツを洗濯機で洗ってはいけない」(パンツはデリケートな部分に触れるものであるため、外の汚い空気にさらされた他の衣類と一緒に洗うべきではない)とする規範が強く存在しており、パンツについては手洗いで処理しなければいけません。

一緒に住み始め、このことを指摘された時は、まったく意味がわかりませんでした。むしろ嫁にとっては至極当然のことなので、「なんでパンツを洗濯機に入れるの?」とそちらが当たり前であるかのように言われたので、混乱も倍増です。そもそも結婚前には、こんなことからして習慣が違うなんて思いもしませんでした。

これが嫁にとって大事なことであり、守らなければならないものであるということを知ってからは僕も中国的規範に従ってパンツを手洗いしていますが、結婚して7年ほど、ずーーーっと納得はしていません。「なんでこんなことやらなきゃいけないんだろう」と毎日思っています。その通りにやり続けたからといって、その価値を受け入れ、理解できるようにはなるとは限らないのです。

逆に、嫁が僕としては守ってほしい日本的な規範に従わず、食器を乾燥させずに重ねておこうとしたり(中国の人は食器が濡れているのがイヤじゃないようです)、手を洗ったあとの水を床にピシャッと振ったりすると(これもなんでイヤじゃないんだろう)、「僕はちゃんとパンツを手洗いしてるのに!」という負債感情さえ募ります。

食べ物に関する衛生も大きく異なります。たとえば中国の人は生肉を水洗いするのですが、僕はこれにずっと違和感があります。

生肉を水にさらしたらその飛沫がいろんなところに飛び散ってキッチンが余計に不衛生になるだろ、と思うのですが、嫁にとってはそれよりも肉の表面についた汚いものを落としたい、という気持ちが強いのです(実際、中国の市場で売っている肉なんかはオッサンが素手で触っていたりするので、処理は必要なのですが)。

そのほか、僕は外食でもなんでもいろんなものを試したいと思うほうなのですが、嫁のほうが「あの店は汚そうだからイヤ」とか、「寄生虫とかがちゃんと処理されているかわからないから、外食で魚は食べたくない」などというので、行くことができない店がたくさんあります。

んなもん気にしてたら中国で生きていけないだろ、とむしろ僕は思うのですが、これも嫁がどうしてもというなら無理をさせるわけにもいきません。窮屈だなあ、と思わないと言えば嘘になります。

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衛生に関する意識や習慣というのは、小さな頃からの環境による積み重ねであり、またその人の根本に近いところにあるものなので、なかなか変えられるものではありません。「明日からパンツを手洗いしてください」と言われて納得できる日本人はそうそういないでしょう。なにせ僕なんて7年間納得していないわけだし。

しかし夫婦として一つ屋根の下に暮らすとなると、必然的にこの部分に関してもどちらかに合わせる必要が出てきます。合わせるということは、どちらか一方が我慢をしなければならないということです。

双方が納得できるような譲り合いができればいいですが、それができる時ばかりでもありません。パンツの手洗いに納得のいかない僕が負債感情を募らせているように、どちらかが合わせるばかりになったり、心底ではイヤだと思っていることをずっと我慢し続けないといけなかったりするわけです。

結婚してからその負債感情に苛まれることのないよう、衛生面で致命的な習慣の違いがないかどうかは、結婚前にできる限り確認しておいたほうがいいのではないでしょうか。それは個人的には、年収がどうとかセロリが好きかどうかとかよりも大切なことではないかと思うのです。

というわけで結婚前には相手の財布や社会的ステータスよりも、パンツを手洗いする人ではないかどうかを見ておくことをおすすめします。

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とまあ、偉そうに幸せな結婚の条件みたいなことを書いてみたわけですが、ではなぜ僕はパンツを手洗いしてまで、苦労の多い国際結婚生活を続けているのでしょうか。

うーん。どうしてなんでしょうね。

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