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「過剰生産」は中国への妥当な批判か、はたまたイチャモンか

近年、中国の「過剰生産」の問題がよく聞かれるようになりました。

先日はG7の財務省・中央銀行総裁会議の声明で中国を名指しにした批判がありました。

声明の該当部分(財務省の仮訳)はこちら。

我々は、世界的に公平な競争条件を確保するため、広範な政策手段やルールを通じて、過剰生産能力につながるものを含む非市場的政策及び慣行、並びに歪曲的政策に対処するための協力を強化する。我々は、均衡の取れた相互的な協力への関心を再確認する一方で、我々の労働者、産業及び経済的強靱性を損なう中国の非市場的政策及び慣行の包括的な利用について懸念を表明する。

https://www.mof.go.jp/policy/international_policy/convention/g7/20240525.pdfより、太字強調は筆者

個人的には、この「過剰生産」という言葉は若干わかりにくいと思っています。「過剰生産」というと単に「作りすぎ」のような印象を受けますが、たぶん本質はこの文章でいう「非市場的政策及び慣行、並びに歪曲的政策」の部分です。

政府が強力な補助金政策を出していたり、法律・法規違反を黙認するような、競争が適切に機能していない環境でつくられたものが世界に出回ったら、それと競争しなければいけない輸入国の産業が一方的に不利になる。つまり中国はルール違反によって世界の市場をゆがめている、というのがその批判のロジックです。

すでにこの過剰生産を理由に、アメリカがEVや太陽光パネル、鉄鋼などの関税を強化したり、欧州でも中国製EVに対する締め出ししようとする動きなどが出ています。

ただ、経済ジャーナリストの後藤達也さんも指摘しているように、この問題は線引きが難しいものではあります。

どんな国でも産業政策はやっています。政府の介入や特定の産業への肩入れを「非市場的政策」とするのであれば、中国に限らずすべての国が批判されるべき対象となってしまいます。程度の問題です。

そうしたこともあって、この「過剰生産」に関する批判は、中国の世界進出を押さえつけようとする先進国側によるイチャモンであると見なすこともできます。逆に「非市場的」「歪曲的」なことをしているのはどっちだ、という批判さえ成り立つかもしれません。実際、中国はそのような反論をしています。

この問題、中国と先進国側の、いったいどちらに理があるのでしょうか。

以下、経済については素人ですが、中国についてそれなりに理解を持っている人間の視点から、個人的にどう思うかを書いていきます。

「程度の問題」とはいうけれど

中国が「非市場的政策及び慣行」のもとで理不尽なことをやっている国だというのは、ある程度の事実だとはいえると思います。

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