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「食用油×燃料タンクローリー」事件への雑感

先週、中国を震撼させたニュースといえばこれです。

石油など燃料油用のタンクローリーが、洗浄をしないまま食用油の運搬も行っていたという衝撃的なニュースです。さらにこのような話は、業界の悪しき慣行として常態化しているそうです。

国営テレビなども報道し、政府機関による調査も始まっています。油という誰にとっても関係のある食材で起こったということで、国を挙げての大騒ぎの様相を呈しています。執筆時点ではまだ事の顛末は明らかになっておらず、どのように着地するのかはまだわかりません。

いろいろな切り口で語ることができる事件なのですが、今回のマガジンでは2つの視点からこの事件について書いてみたいと思います。

よくあることっちゃ、よくあること

まず、中国では残念ながらこうした食品の管理不足や不衛生にまつわる不祥事がたびたび明らかになります。そしてそれは、中国の人々の食品に対する強い警戒心を生んでいます。

食用油に関しても実は問題になるのは初めてではなく、かの有名な地溝油(排水口や下水溝に溜まった油を濾過し、再利用した油)の問題などが取り上げられたことなどがあります。2010年ごろに大きく取り沙汰され、それ以降取り締まりや管理が厳しくなったという話ですが、一部では使われ続けているのではと噂が絶えません。

そのほか、これも大きく話題になったメラミン入り子ども用粉ミルクの事件は言うに及ばず、カップラーメンの具の製造が洞窟(作業員は靴で食材を直踏み)のようなところで作られていたとか、某有名ブランドのビールの貯蔵池に小便をした作業員がいたという話とか、食品にまつわるスキャンダルの話題には事欠かないのが現状です。

こういう現状なので、中国の人々は市中に流れている食べ物をあまり信用しておらず、警戒をむき出しにしています。うちの嫁でいうと安い屋台の食べ物などは基本的に食べないし(前述の地溝油が使われているかもしれないから、だそうです)、スーパーで食べ物を選ぶ時なんかも慎重に慎重を重ねています。食べ物の産地なんかも一生懸命見ています。

あと、中国でも最近増えてきたとはいえ、冷凍食品などがイマイチ流行しきらないところがあります。調べたわけではないのですが、料理を毎日するようなおばちゃん層などに冷凍食品があまり信用されていない(加工プロセスが不透明)からではないかな、と考えています。うちの嫁も、冷凍食品を買うことはほとんどありません。

また、これに伴って起きているのが国産のものを信用せず、国外生産の食べ物(あるいは国内品でも、日本を始めとした国外メーカーの生産品)を偏重する傾向です。こういう醜聞が繰り返されるので、もう中国のものは信用ならん、と中国人自身が思っている節があります。

今回の騒動でも、日清のサラダ油(オイリオの中国版)がめちゃくちゃ売れているそうで、うちの近所のスーパーでも売り切れでした。外国企業にとっては好ましいかもしれませんが、中国にとってはこの現状は課題といえるでしょう。

個人的には「中国に住む」ということはイコールそういう事象に一定確率でぶち当たるということだと思っているので、「まあ、あり得るだろうな」というくらいの感想です。もちろん気持ちの良い話ではないですが、そこまで不思議だとも感じません。

なので、普段の食品への警戒っぷりや、今回の大騒ぎに関しても少し冷めた目で見ているというか、「ちょっとみんな、中国人のくせに中国に住むのに向いてないんじゃない?」という気持ちさえあります。ちょっと中国に順応しすぎでしょうか。

調査報道はいまだ死せず

そんな謎のイキリマウントはともかく、もう一つの観点について。

個人的に注目すべきだと思っているのは、今回の件が調査報道から明らかになったということです。

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