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日本はDXとかマイナンバーとか頑張らなくていいかもしれない、と中国を見ていて思う話

こんな記事を読みました。

デジタル化が進む中国ですが、そのせいでかえって旅行者などには不便な部分が増えているというお話です。

モバイル決済が当たり前になったおかげで現金を持ち歩く必要がなくなったのはよかったものの、現金での決済は不便になりました。多くの場所は現金にも対応しているものの(たしか現金の扱いをやめてはいけないという法律があったような)、そのチャネル自体にかなりアクセスしにくくなっているのは事実です。

上の記事にある地下鉄駅などはその典型で、いまは普通の人はスマホからQRコードを表示させるだけで乗れてしまうものですから、券売機などがほとんど置かれていません。あったとしても硬貨にしか対応していない場合などもあります。

ここで困るのは外国人です。キャッシュレス決済自体はクレジットカードなどを登録することで利用できるのですが、一部のサービスには中国国内の電話番号や銀行口座を紐付けなければ使えないものがあります。そして、公共交通などのアプリは多くがそれに当てはまります。つまり外国人観光客は事実上、利用が不可能です。

そのため外国人観光客は、ただでさえ言葉のハードルがあるなか、見つけにくい現金決済のチャネルを求めて右往左往することになります。英語のアナウンスや案内板なども乏しいため、初めての人にはかなり難しいでしょう。

このようにキャッシュレス化、ひいてはデジタル化がむしろ外国人にとってのハードルとなる現象が、中国では起きています。

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このデジタル化とともに広がり、外国人へのハードルとなっているのが、実名認証です。上の記事でもこんなことが書かれています。

キャッシュレスとオンライン化に加え、コロナ禍の間に徹底されたのが「実名制」だった。(中略)今回4年ぶりに中国に入国すると、観光地の入場券まで実名制になっていた。有名な観光地の入り口は身分証明書を読み取り、チケット購入時の情報と一致しているか確認する自動ゲートとなっており、地方の小さな観光施設でも、職員が身分証明書と入場券をチェックしていた。

観光地などでも身分証の提示が求められるのです。現地の人にとっては事前に身分証情報を登録でき、むしろチケットレスで入場できるなど便利なシステムになっていることも多いのですが、そもそも中国の身分証をもたない外国人には逆に障害となります。

この実名認証によるハードルについては、僕も以前に書いたことがあります。個人的には「身分証ブロック」と読んでいる現象です。

上に書いたキャッシュレスアプリの問題は、在住者なら電話番号や銀行口座を登録できるためあまり問題にはなりません(普通の中国人よりは面倒な手順を踏むことが多いですが)。しかし、こちらの身分証問題は在住者にも等しく降りかかってきます。実際、この「身分証ブロック」によって不便な思いをすることが、こちらに住んでいるとままあります。

これを扱う人間の方も身分証ありきのシステムに慣れきってしまっているため、近くの係員などに相談しようとすると「アプリを使ってください!」とピシャリと言われてしまい、いやアプリが使えないから相談してるんでしょうが! とイラッとすることもあります。

このように、現地の人々にとって利便性をもたらしているデジタル化・実名認証化が、むしろそこから外れた人にとってハードルになってしまう場合があるのです。

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さて、日本は中国に比べてデジタル化があまり進んでおらず、中国を見習ってもっとDXを促進すべきだという声がしばしば聞かれます。

また目下では、マイナンバーカードについてのニュースが増えています。適用範囲を広げて便利にしていかなければならないのに、運用に問題がありすぎるせいで全然普及しない、という悲しいことになっています。

これらはたしかに解決しなければならない問題のようには思えますが、しかして中国の事例を見ていると、なんか日本でDXが進んでもあまりいいことが起こらなそうだな……という気がするのです。

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